LD&K菅原隆文氏が立ち上げた新レーベル「STAY FREEEE!!!!!!!!」始動!

STAY FREEEE!!!!!!!! | 2021.02.10

logo
今やすっかり定着した東京のサーキットフェス「TOKYO CALLING」の発起人のひとりであり、インディーズレーベルの雄LD&Kで数々のアーティストを手掛けてきた菅原隆文氏が新たなレーベルを立ち上げる。レーベル名は「STAY FREEEE!!!!!!!!」、3月から順次、日本各地のバンドをリリースしていくという。コロナ禍でライブを取り巻く状況も激変するなか、なぜ今レーベルを立ち上げるのか、そもそも「レーベル」が今果たすべき役割とは何なのか。ロックバンドと仕事をし続けてきた菅原氏だから見えている景色と、このレーベルにかける思いを語ってもらった。

――「STAY FREEEE!!!!!!!!」というレーベルをスタートするということですが、どういうレーベルなんですか?
菅原:それをずっと考えてて、どんなレーベルなんだろうと思って結局今日を迎えてるんですけど……(笑)。今ってこういう時代なんで、音楽業界にとっては転換期じゃないですか。やり方が確実に変わってきている。今フィットしている音楽も、SNSだったりTikTokだったりから出てきてる人がすごく多いですよね。でもそのなかで、僕としてはどちらかというと、そこをキャッチアップするっていうより、戻ってというか、やっぱりロックバンドに特化したレーベルにしていきたいなっていう思いはあります。
――なるほど。
菅原:ここまで20年ちょっと業界にいる中で、思えば自分のレーベルやったことなかったなと思って。出したいなと思うアーティストがいくつかあって、去年ぐらいから考えてたんですけど、だったらレーベルを作ったらおもしろそうだなっていう。どういうレーベルにしたいっていうのは、結局やっていきながらなのかなと思っているので、まずはとりあえずレーベル作ろうっていう感じです(笑)。
――コロナウィルスで音楽業界も激変しましたけど、そういうことも影響を与えていますか?
菅原:正直、直接的にはまったく関係ないとは思うんですけど、間接的にはすごく関係あると思いますね。やっぱり去年1年間、やることが極端に限られたじゃないですか。個人的な話をすると、5年間「TOKYO CALLING」ってイベントをやってきたんですけど、去年はコロナで「TOKYO CALLING」ができなくて。それで配信で「NIPPON CALLING」というのをやって、それはそれで何か面白いことができたとは思っているんですけど、その次に何を目指したらいいのかなっていったときに、バック・トゥ・ベーシックじゃないですけど、やっぱりロックバンドと一緒に何かやっていきたいなっていう思いが生まれてきたんです。それが去年の11月ぐらいで。それで各地に足を運んでバンドと会って話して、12月ぐらいに「じゃあ、レーベル作ろうかな」みたいな(笑)。
――すごいスピード感(笑)。
菅原:だから、まだあんまり経ってないんで、固まってないんですよ、ぶっちゃけ(笑)。たださっきも言ったんですけど、自分のレーベルっていうのをやったことなかったんで、それを1個持ってるっていうのもいいと思うし、今リリースを予定しているバンドでいうとbokula.っていう広島のバンドと、金沢のプッシュプルポットっていうバンド、あとは札幌のみなみっていうバンド、全部地方のバンドなんですよ。たまたま札幌、金沢、広島って、全国に散らばってて。これも「TOKYO CALLING」だったり「NIPPON CALLING」をやったおかげもあったりするのかなと思うんですけど、そうしたアーティストたちに地元にいたまま活動してもらって、そこをバックアップというか、一緒に大きくなっていけるような仕組みを作っていきたいなっていうのをすごく考えてますね。
――東京発信で何かやっていくというよりも、それぞれのローカルからどんどん発信してもらおうという。
菅原:そうですね、基本的には。もともとそういう考え方が強いんです。別に東京に来たって……ぶっちゃけ家賃高いだけじゃないですか?っていう(笑)。今は地元にいながらでも、いろんな発信もできるし、それこそ海外に直接発信とかっていうのもできるわけじゃないですか。今回「The Orchard Japan」ともLD&Kとして一緒にやってくっていうことを決めたので、このレーベルとしてもそういう仕組みを使って、東京を介さずに世界にも出ていけるようなことを考えられればなと思ってます。ただ本当に、何をやろうかなってのはこれからだと思います。やってるうちにおのずといろいろ出てくるかなと。
――「STAY FREEEE!!!!!!!!」というレーベル名にはどういう思いを込めたんですか?
菅原:ザ・クラッシュの曲名ですけど、昔から「STAY FREE」という言葉がすごく好きで、何かするんだったら使いたいなとは思ってたんです。僕、Facebookで年に1回、誕生日にコメントを書くんですけど、絶対そこに「STAY FREE」ってつけたりもしてるんです。
――「FREE」っていろいろな意味があると思うんですけど、菅原さんにとっての「FREE」とは?
菅原:「音楽をずっと続けていく自由」というか。バンドが音楽を続けていけるために、経済的にもそうだし、環境だったり、政治的なことももしかしてあるのかもしれないですけど、そういういろいろなことですね。やっぱり僕らはロックバンドを聴いて育ったし、ロックバンドと一緒に仕事をしてきているので、とにかく彼らがずっと自由に音楽を続けていく環境を作りたいし、自分もそこで自由に動き回りたい。誰にも気兼ねすることなく好きなことをやり続けられたらなという思いですね。 STAY FREE
――今回さまざまな地方出身のバンドをどんどん出していくわけですけど、「NIPPON CALLING」をやるなかで各地のライブハウスともいろいろ話をされてきたと思います。菅原さんから見て今東京以外のライブハウスシーンってどういうふうに映っていますか?
菅原:東京にいるとなかなかわからないんですけれども、やっぱり地方のライブハウスの運営はすごく厳しいと思うんですよね。単純にバンドが行かなくなっちゃってるし。そういう状況なんですけど、一番怖いというか、問題だなと思ってるのは、フェスとかもそうですけど、いいバンドを観ることによってファンって育つじゃないですか。それこそ10代で初めてライブ観に行って、それまでの人生が変わるみたいな経験って誰しもあると思うんです。それってもちろん音源聴いてもそうだけれども、やっぱりライブで「これすごい好き」って思って入っていく。その瞬間を経験するはずの人たちが経験できないわけじゃないすか、今。この1年間でそういう出会いをするはずだった人たちが、そこに出会えていないっていう。となると、お客さんがどんどんどんどん減っていってしまうんじゃないかっていうのは、すごく恐怖感を覚えてますね。
――確かにそうですね。
菅原:「TOKYO CALLING」をやってきて改めて思ったのは、「やっぱりライブハウスはいいな」っていうことなんですよ。去年は「NIPPON CALLING」をやっていろんな地方のライブハウスに行けたんですけど、とくに地方に行けば行くほど、ライブハウスがあるかないかでシーンがあるかどうかが決まるんですよね。そういうライブハウスシーンみたいなところに対して繋がりをどんどん強くしていって、もっと一緒に何かやっていきたいなっていうのはすごく思うようになりましたね。
――今回一緒にやるバンドも、そういう繋がりのなかで出会っていったというのもあるわけですよね。
菅原:そうですね。「TOKYO CALLING」「NIPPON CALLING」に出たいっていうアーティストを募集させてもらっていて、毎回1000を超えるアーティストから応募が来るんですよね。実際プッシュプルポットは去年「NIPPON CALLING」に出てるんですけど、そういう中ですごく面白いなっていう人間との出会いがあって、そこからスタートしてますね。
【プッシュプルポット】
PPP
――バンドに対してはどういうふうにコミュニケーションしているんですか?
菅原:レーベルのスタンスとして言うと、基本的に管理はしないです。「勝手にやってくれ」っていう感じのレーベルですね(笑)。どのバンドも個性が強いので。みなみなんて「面倒くさいからホームページ作らない」って言ってましたし(笑)。どうするんだって思いますけど。でもね、みなみに関して言うと、結構昔から知ってて。ボーカルのみちるくんは高校生のときからずっとアーティストやってて、何て言うんだろう、本当ちゃらんぽらんというか、表現に困っちゃうけど、やっぱり音楽じゃないとこいつダメだろうなっていうのはすごく思うし、音楽の才能はやっぱりすごくあるし、もっともっといろんな人に聴いてもらいたいなっていう思いがありますね。いいと思いますよ。曲はすごく。
【みなみ】
みなみ
――わかりました。でも、一口にレーベルといっても、その役割もどんどん変わってきているじゃないですか。その変化のなかで、今レーベルをやるということについてはどういうふうに考えていますか?
菅原:やっぱり「CDを出すのがレーベル」っていうのがまずあるじゃないですか。それが根本的なことだと思うんですけれども、そもそもCDというもののあり方が今後どんどん薄まっていくっていうのはもう避けがたいと思うんですよね。バンドがやることって、CD音源を作るのと、ライブをするっていう、とにかくこのふたつじゃないですか。そのなかでレーベルとしても比重がライブのほうに寄ってきた。僕らがサポートできる部分はそっちが大きくなっているとは思います。でも今はそれが一気にまたなくなってしまって、これが元通りになるにはすごく時間かかると思うんです。
――そうですね。
菅原:僕もロックバンドを手掛ける以上本来であればライブで売っていきたいんだけど、それができないいま、それ以外の手段を使っていかないとダメだなっていうのはもちろんあるので、そこに対しては、たとえばSNSをいかに自由に使えるかとかも考えていかないとなと思ってます。アーティストによってその辺すごく考えてるバンドもいるし、何も考えてない人たちもいるけど、それぞれいろんなやり方で、時間かかってもいいからやっぱりいいものをどんどん伝えていきたいなという思いです。
――メジャーレーベルでもインディーズレーベルでも、いわゆる360°ビジネスというのが定着したじゃないですか。そういうのともまた違うんですよね。
菅原:360°ビジネスって言ったときにどこかやっぱり業界主体のビジネスモデルだったりすると思うんですよね。だからそこの360°の軸を移していくっていうことなんだと思います。とにかくアーティストを中心とした360°のビジネスの中で、サポートできる部分だけサポートするっていう、そういう役割かなと。たとえばbokula.と話してると「クリエイティブの部分は全部僕がやるんで、それ以外をやってください」って言われたりしてるんですよね。じゃあいいんじゃない?っていう。そういう、必要なところのサポート、それがマネジメントの役割なのか、レーベルの役割なのかっていうことを抜きにして、何か足りない部分をガワからはめていってあげるイメージですかね。僕が中心ではなくて、とにかくアーティストが中心にいて、その真ん中の部分はもう知らない、みたいな(笑)。
【bokula.】
bokula
――なるほど。
菅原:決して否定するつもりはないんですよ、音楽業界の実態を。ただやっぱり音楽業界って、レコード会社だったりマネジメントだったり、表に出ていくのが会社じゃないですか。そうじゃなくてアーティストが主体となった新しい形はできないのかな、それが本当なんだろうなっていうのは「TOKYO CALLING」を始める前からずっと思っているんです。それはレコード業界で仕事をしてきた自分への自己否定だと思うんですけど。そうやってレーベルだったりマネジメントだったりの役割を根本から問いただしていかないと、多分この先どんどん、いわゆる「業界」は衰退していってしまうなっていう思いはずっと持ってるんで。そこにどれだけうまくフィットしていけるのかなっていうのは、このレーベルの課題でもあるのかなと思ってます。
――今、レーベルビジネスを始めるにあたって、菅原さん的な「勝ち筋」というのは見えていたりするんですか?
菅原:そもそも「TOKYO CALLING」を始めたのもそうですけど、勝ち筋という意味で言うと、結局、自分にしかやれないことをやってればいいのかなっていうのは思っているので。どう変わっても、絶対になくならないじゃないですか。ライブも元には戻らないかもしれないですけど、そのうち復帰するわけですし。CDは売れなくなるのかもしれないですけれども、サブスクで音楽聴く人はまだまだいなくならないと思うし。そういった意味で言うと、形は変われど、やっぱり中身は変わらないと思うんで、そこをうまく続けていけばニーズはあるんだろうなっていうことを思ってやっているので、大丈夫だと思いますけどね。
――今の時点で、何かこういうことしたいというようなイメージはありますか?
菅原:まあ、イベントやりたいですね、レーベルのイベント。みんなやってるじゃないですか(笑)。LD&Kでイベントをやるとちょっとそのバラエティに富みすぎちゃうんですよ、くくりが大きくて。そういう意味では「STAY FREEEE!!!!!!!!」はすごくレーベルイベントがやりやすいなというイメージはあります。お客さんの相乗効果がすごく期待できるというか。とりあえず5月ぐらいにちょっとツアー組んでやろうかなと思ってるんですけど、それはすごく楽しみです。
――だから、やっぱりこの時代にレーベルをやるっていうこと自体がひとつのメッセージだなと思いますよね。
菅原:それはそうだと思う。やっぱり「やらなきゃね」みたいな。なんかわかりやすい記号だと思うんですよ、レーベルっていうのは。もうブランドみたいなもんで、思想や気持ちを共有してる人間でひとつの事を目指してますよっていう。戦うわけじゃないけど、スタンスを示してるもんなのかなと思いますね、「STAY FREEEE!!!!!!!!」というのは。なので自由で、やっぱりずっと音楽、バンドを続けて欲しいなって思いがものすごく根本的なところではあるので、それを表していきたいなと思いますね。

【取材・文:小川智宏】

リリース情報

bokula.『いつ失ってもいいように.』

bokula.『いつ失ってもいいように.』

2021年04月21日

STAY FREEEE!!!!!!!!

01. HOPE
02. 愛わない
03. フィルムの片隅に.
04. 夢を見てた.
05. 足りない二人
06. 今までの嘘、これからの日々へ
07. 一瞬

リリース情報

プッシュプルポット『僕らのままで』

プッシュプルポット『僕らのままで』

2021年02月10日

STAY FREEEE!!!!!!!!

01.こんな日々を終わらせて
02.snooze
03.13歳の夜
04.笑って
05.曙光
06.街
07.愛していけるように

リリース情報

みなみ「さよなら10代」

みなみ「さよなら10代」

2021年03月17日

STAY FREEEE!!!!!!!!

01.さよなら10代

お知らせ

■ライブ情報

Ruby Tuesday & STAY FREEEE!!!!!!!! Presents
"Ruby FREEEE !!!!!!!!"

2021/3/27(土) 渋谷Star Lounge
開場 16:00 / 開演 16:30
出演:anewhite / toronto / プッシュプルポット / Broken my toybox / bokula.
チケット料金(前売り):¥2,000 (D代別)
先着先行受付期間:2/10(水)18:00〜2/21(日)23:59
一般発売日:2/27(土)10:00〜
チケット販売URL:https://eplus.jp/rubyfreeee/

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

トップに戻る