激動の2020年、Karin.はどんな想いで歌い続けてきたのか――赤裸々に語る。

Karin. | 2021.03.11

 シンガーソングライター・Karin.の3rdアルバム『solitude ability』が、3月10日にリリースされた。多感な学生時代を経て、昨年に高校を卒業し、音楽を続ける決意を胸にひとり上京したKarin.。日に日に生まれゆく、自身の心の揺らぎや葛藤を丁寧に曲にしてきた彼女が、今回「孤独が生んだ力」というタイトルを掲げたアルバムを生み出した。激動の2020年を、彼女はどう生きていたのか? 作品から見えてくる、彼女の今の想いに迫る。

――2020年は、アルバム1作品とEPを3作品リリースするという、かなりハイペースな活動をされていましたが、Karin.さんにとってはどんな期間でしたか?
Karin.:1ヵ月先の予定も全部白紙になって、誰も予測できない未来への不安がすごく大きかったですね。でも去年の夏、『知らない言葉を愛せない - ep』のインタビューで、「この作品は本格的に音楽活動をしていくための一歩だった」という話をさせていただいたと思うんですけど、この期間を経て、そこからまた深いところに進んだ感覚があります。そういう意味でも、個人的にはいちばん苦しい時期だったなと思います。


――なるほど。「成長の兆し」とも言える葛藤や苦しみを経た上で、今作『solitude ability』の制作に挑んだのですね。
Karin.:はい。『この感情にはまだ名前がない - ep』の制作と並行して生まれた楽曲もありますし、高校時代に作った楽曲もあります。でも、制作に関わる期間中は、ずっと孤独だと思い続けていましたね。自分がKarin.というチームを引っ張らなきゃいけないのに、自分がいちばん置いていかれているんだって感じていましたし、新しい自分を表現するためにいちばん邪魔な存在が“今までの自分”なんだと思いました。そういった孤独感が、このアルバムには込められていると思います。
――Karin.さんは、学生時代からの楽曲のストックを多く持っていると話していましたよね?
Karin.:そうなんです、たくさんありました。でも、それを今作で出し切りました。
――過去との決別という気持ちで、まっさらにしたんですね。学生時代の頃に作っていた曲は、どの曲になるんでしょう?
Karin.:「ドライフラワー」と「シネマ」、「君の嘘なら」ですね。特に「ドライフラワー」は、これまで何度も更新し続けてきて、やっとまとまった曲です。それまでは歌いこなせる自信がなかったんですけど、チームの人の後押しもあって、今回作品に入れることができました。自分が誰かの後押しを受け入れられるようになったからこそ、こうして日の目を見ることができたんだと思います。
――Karin.さんは、高校生のときにも「孤独」と呼べるような感情を抱いていたと思いますし、それを歌にしてきたと思います。先ほどお話してくれた今の孤独は、その頃のものとは違ったものですか?
Karin.:高校生の頃に感じていた孤独感は、誰かがいる孤独というか、群れの中で感じる孤独だったんです。でも、上京して、本格的に音楽活動を始めて、周りには友達もいないという状況で感じる孤独というのは、完全に独りだからこそ感じられたものだったと思います。いろんな種類の孤独が存在するんだなぁと思いましたね。でも、孤独を感じている最中はつらいし苦しいですけど、それがなければ強くなれなかった気がします。その孤独感とちゃんと向き合えたからこそ、このアルバムもできたんだと思っています。
――孤独と向き合ったことによって自分自身の変化はありましたか?
Karin.:緊急事態宣言をきっかけに地元に帰って、宣言解除後に東京へ戻ってきたんですけど、実家にひとりでいるときには全然曲が書けなかったのに、東京に来て音楽活動を再開したらどんどん書けたんです。その時に、「私は人に会っていないと曲が書けないんだ!」と気づきましたし、それがきっかけで新しいことにも取り組めるようになったんだと思います。
――なるほど。「君の嘘なら」と「瞳に映る」も、MVに初めてアニメーションを取り入れていますし、そういったところも変化として見受けられます。


Karin.:ずっと自分の曲にアニメーションがついたらどうなるんだろうという気持ちはあったんですけど、なかなかマッチする曲がなかったんですよ。でも、ポップなこの2曲なら挑戦できるなと思いましたし、やってみたらすごく合っていたのでうれしかったです。
――歌詞の変化で言えば、「青春脱衣所」では<僕は嘘をついたんだ>と歌っていたKarin.さんが、「涙の賞味期限」で<自分を大きく見せる嘘は/結局何も生まれないんだよ>と歌っていることからも、前向きな変化を感じました。


Karin.:いろんな理由で吐く嘘を認めるというか、誰かを想って吐いた嘘なら、いつか愛情で返ってくるかもしれないし、自分の見栄のために吐いた嘘なら、孤独や寂しさで返ってくると思ってるんです。私自身が、本当の愛や、嘘の理由をいつか知ることができたら、大切な人に愛情としてあげたいという思いで作った曲です。
――今作は、Karin.さんにとっては10代最後のアルバムということもありますが、「過去と未来の間」は、特にそういった“大人と子供”の間に生まれる揺らぎを感じる楽曲だなと思いました。


Karin.:大人になることに対してコンプレックスを持っているわけではないんですけど、大人になることがきっかけで忘れてしまうこともあると思っていて、それを忘れないための日記のような感覚で作った曲です。この曲は、アルバムの中では最後に出来た曲なんですけど、その頃は1ヵ月で6、7曲を作っていたんですよ。本当に干からびる寸前でしたし、そこで自分の限界を知りましたね。それに、孤独から立ち直る直前に作ったということもあって、「過去と未来の間」の中で、今の私をすべて言い切れたと思っています。
――10代から20代の変化を目前とした今、Karin.さんはどういう気持ちでいますか?
Karin.:「瞳に映る」の中で<大人になりたくないという気持ちも/まだ残ったままで>と歌っていて、たしかにやり残したこともあるのかもしれないです。でも、10代の頃に書いた曲が大人になって作品になることもあると思うので、そこに区切りをつける必要はないんじゃないかなと思えています。そうやって昔の曲と現在の曲をごちゃ混ぜにするほうが、自分としては安定するなと思っていますし。あとは、今作でバンドメンバーとの絆も深まりつつ、「涙の賞味期限」と「過去と未来の間」で初めてストリングスの方にも入ってもらったんです。これは昔の自分じゃ想像もしていなかったことですし、そういう意味でも続けてきてよかったと思っています。


――苦しみを乗り越えたからこそ感じ取れることも大きかったのではないですか?
Karin.:そうですね。音楽を始めていなかったら、ここまでの苦しみを抱えることもなかったと思いますし、逆にここまでの達成感を感じることもなかったと思うんです。だから、自分自身を少しだけ認めてあげられたような気持ちです。まだ全部認めてあげることはできていないんですけどね。
――じゃあ、Karin.さんにとっての今作の位置づけはどういうところにあるんでしょう?
Karin.:うーん、自分の武器ですかね。ずっと作り続けてきた今までのストックを全部出し切ったことも含めて、今までの自分を否定しながら、孤独を感じて――そんな自分を今作ですべて出し切りました。今までは、自分のために音楽を作っていたし、もともとそこから始まったんですけど、今の自分の音楽は自分のものだけじゃないと思うようになりました。もっと音楽を愛せるようになりたいし、もっと音楽を知りたいと思いながらデビューをして、そこでいろんな方と出会えたことで、「自分の居場所」が「自分と誰かの居場所」になったんです。だから、孤独を感じられたのは、結局は人の存在があったからこそだと思っていますし、そういう気づきをした上で、自分を証明できる武器を作り上げることができてよかったと思っています。

【取材・文:峯岸利恵】


ショートフィルム「solitude ability - 過去と未来の間 - 」/ 枝優花 × 伊藤万理華 × Karin.


ショートフィルム「solitude ability - 涙の賞味期限 - 」/ 枝優花 × 伊藤万理華 × Karin.

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リリース情報

solitude ability

solitude ability

2021年03月10日

ユニバーサルシグマ

01.君が生きる街
02.瞳に映る
03.泣き空
04.痛みがわかれば
05.知らない言葉を愛せない
06.シネマ
07.君の嘘なら
08.愛は透明
09.この感情にはまだ名前がない
10.過去と未来の間
11.ドライフラワー
12.涙の賞味期限
13.世界線

お知らせ

■配信リンク

『solitude ability』
https://Karin.lnk.to/solitudeability



■マイ検索ワード
「レコードプレーヤー」
私、音楽を始めるまでCDを買うってことをずっとやってこなくて。もうiPhoneがあって、ケータイに入っている音楽を聴いていたので、自分でプレーヤーにCDを入れて、カチッと再生ボタンを押して音楽を聴くことがほとんどなかったんです。もうほんとにラジオ体操くらいで(笑)。で、この前バンドメンバーの方に「これ聴いたほうがいいよ!」って言われて、レコードプレーヤーを貸していただいて、最近それをずっと聴いているんですけど、針の落とし方とか、速度とか、まったく知らなくて調べてみたり。レコードが回っている姿をずっと見ていることがなかったんですけど、物理的に終わりのお知らせを針が教えてくれるのを見て、「ああ、レコードプレーヤーってこんな感じなんだ」って。最近はそういうレコードプレーヤーの使い方とか歴史とかを調べていました。



■ライブ情報

「RUSH BALL☆R」
05/15(土)大阪 大阪城音楽堂
Open 11:00 / Start 11:45
問合せ:GREENS TEL:06-6882-1224

Karin. 1st Live “solitude time”
06/12(土)東京 恵比寿LIQUIDROOM
Open 16:15 / Start 17:00
問合せ:ディスクガレージ TEL:050-5533-0888

バンドメンバー:藤原寛(Ba) / 岡山健二(Dr) / 永高義従(Gt)

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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