Guianoが考える“大人になること”とは? そして“生きる理由”とは――

Guiano | 2021.03.24

 2014年に若干13歳にしてボカロPとしてデビューし、「シャナ」や「死んでしまったのだろうか」などで殿堂入りを果たしてきたGuiano(ぐいあの)。2019年11月には、ボカロPとしての6年間の活動をまとめたベスト盤的な1stアルバム『Love & Music』をリリース。ボカロPとしての活動に区切りをつけ、シンガーソングライターとしてのキャリアを本格的に始動させた彼が、ついに初のセルフボーカルアルバム『A』を完成させた。今年1月には二十歳の誕生日を迎えたばかりの彼が自分の声で歌いたかった言葉、感情とは――。

――Fanplus Music初登場になりますので、改めて、キャリアのスタートからお伺いできますか。
Guiano:中学1年の冬から不登校になっちゃって。勉強がどうしてもしたくなかったんですよね。でも、生きていかないといけないから、何か特技を身につけようと思って。言い訳というか、逃げ先が最初は音楽という感じで、親のパソコンでDTMを始めて。
――当時はどんな音楽を聴いてました?
Guiano:全部、ボーカロイドでしたね。もっと小さい頃は何も意識せずに音楽を聴いていたんですけど、この曲、カッコいいな、好きだなって初めて思ったのが、黒うさPさんの「千本桜 feat.初音ミク」だったんですね。自分の中で音楽といえば、ボーカロイドだったから、自然とボカロで作り始めて。やっていくうちに楽しくなって、今日まで続いている感じですね。
――その楽しさって何でしたか。
Guiano:やっぱり、音が鳴るっていうことですね。ピアノロールがあって、ピアノがあって、マウスで押すと音が鳴るのが楽しかった。新しい音源を買って、鍵盤を押して、音が鳴るっていう楽しさは今も変わってないですね。
――ボカロで曲を作って、最初にニコ動に投稿したのが「ペルヴェルセ」(2014年)でした。13歳でボカロPとしてデビューした時はどんな心境でしたか。
Guiano:1作目から、ボカロPのkemuさん(堀江晶太/PENGUIN RESEARCH)みたいにめちゃくちゃ伸びたいって思ってたんですけど、実際は200再生くらいだったんですよ(笑)。そこに、残念っていう気持ちもあったんですけど、「これからに期待できる」とか、コメントをもらったときに、こういうことでいいのかなと思って。聴いてもらえた人数が数字でわかって、コメントを通して感想をいただけたっていうことが大きな糧になりましたね。
――だんだん反響が広がっていきましたよね。
Guiano:僕的には全然広がってるイメージはなくて。初めて投稿したあの日の延長線上で何も変わってないままやっている感じですね。
――殿堂入りを果たしても?
Guiano:なんの感動もなかったですね(笑)。10万再生いっても、本当に何にもなかったです。ありがたいことに、YouTubeで「スーパーヒーロー」がいっぱい再生してもらっているんですけど、何にも思わないというか……。それよりは、例えば、上手い人に歌ってもらった歌を聴いて、すごくいいなっていうところでの感動はあります。あとは、「自分の人生に深く影響した」とか、「こういう気持ちの時に助けてもらった」とか、コメントをもらったときは、すごく嬉しくなりますね。
――2019年いっぱいでボカロPをひと区切りしたのはどうしてですか。
Guiano:僕、突発的に何かを始めちゃったり、飽き性だったりするんですよね。ボカロで音楽をいっぱい作っていく中で、自分で歌った作品も作っていきたいなと思って。あとは、音楽活動を続ける中で、有名なアーティストの方のライブ映像をいっぱい見たんですね。やっぱりステージでパフォーマンスするのはいいなと思って。ボーカロイドで音楽をやっているだけではライブができないから、自分で歌ってみようかなって。それが、1番の大きな理由ですね。
――音楽活動は、DTMを始めた時からをずっと続けていく気持ちだったんですね。
Guiano:そうですね。仕事にしようって思ってました。勉強したくないけど、生きていかないといけないから、音楽でお金を稼がないといけないって。それくらい、とにかく学校の勉強がしたくなかったですね(笑)。ただ、仕事にしなくちゃいけないんですけど、自分でやりたいことをやってる時の音楽はすごく楽しいっていう葛藤はずっとあって。仕事にしなくちゃいけないけど、楽しいままでいたい。自分が楽しくないと、いい曲が作れないっていう悩みは、通信制の高校を出て、東京に来るまで悩んでましたね。
――高校卒業後に上京してるんですね。
Guiano:半ば、やけくそでしたね。ずっと親に迷惑をかけて、親の脛かじりだったから、やらなきゃいけないというか。僕、躍起になりやすいというか、焦っちゃうんですよね。どんな状況でも、常にこのままじゃいけないって思っちゃうんですけど、特に親には、引きこもりだった時からいっぱい泣かせてたから、早く大人にならなくちゃいけないと思ってて。専門学校に行くっていう名目で出てきたんですけど、専門学校の2年間の間に、ちゃんと食えるようになるっていう目的がありましたね。
――音楽が純粋に楽しめるものであると同時に、生きていくために必要な手段にもなってる。
Guiano:そうですね。だから、すげー辛かったです(笑)。
――今年の1月には二十歳になりましたね。
Guiano:年齢に関しては何もないですね。気持ち的には何も変わってないから。10代を振り返ると、クソガキだったな~って思うだけで。
――でも、親のことや自身の将来のことをちゃんと考えてるじゃないですか。
Guiano:でも、自分のことを全然考えてやれてなかったかなって思いますね。自分のことを考えないのがいいってことにしてたっていうところがあるかなと思います。
――なるほど。初のセルフボーカルアルバムには今、お話ししてきたことがたくさん入ってますね。
Guiano:そうですね。思い出を形にするというか。曲の中に自分の感情や今までの思い出を入れるのが好きなので、それが核になってますね。
――どんなアルバムにしたいと思ってましたか。
Guiano:コンセプトをなしで作ろうっていうのがコンセプトでした。だから、タイトルも意味ないというか、何もないという意味で『A』にして。とにかく、自分の中で楽しくいい曲をいっぱい作ろうと思って作ってましたね。
――ただ、“大人になることとは?”“生きる意味や理由とは?”“生きるための音楽とは?”と自問自答している歌詞が多いですよね。
Guiano:アルバムを通して意識していたわけではなかったんですけど、今回は言ってることが近い曲が多いというか、結果的に一貫したテーマを持っちゃったって感じですね。
――“大人になること”は、現在はどう感じてますか。
Guiano:大人になりたいとか、大人になれないとか。大人についてずっと悩んでる人ほど、大人になれないし、いつまでもずっとそこで悩んでるのかなって思いますね。いろいろ考えて、やっとそれがわかりました。
――じゃあ、変わっていくこと/変わらないことについては?
Guiano:ちょっと前までは、変わっていくことにネガティブだったんですけど、最近は自分の変化をポジティヴに認められるようになって。前までは早死にしてもいいや!って思ってたんですけど、このアルバムを作ってから、どんなところまでも生きていたいなって思うようになって。自分がじじいになったら何を考えているんだろうっていう興味があるので、長生きしたいですね。
――あははは。二十歳にして、<健康が一番大切なんだから>(「夜考」より)って唄ってますしね。<生まれてきた意味><生きていく理由><生まれたのは何故><生きる意味>の答えは出ましたか。
Guiano:ずっとそればっかり考えてましたね。理由というか、意味を求めることにすごい時間を使ってました。今は。結構、いい気持ちで生きていて。生きる理由や意味はなくて。今、生きてること、ただそれだけでいいじゃんって思うんですね。アルバムを通してコンセプトがないって言ったのも、理由を求めないことが大切だっていうのが自分の中にあったから。それをアルバムとして、1つ形にできたのかなって思いますけど、8曲目はちょっと皮肉っぽく歌ってて。
――「ポップソング」では、<そもそも生きていく理由もよくわからんし>とぶっちゃけつつ、<この歌に意味なんてひとつもない>と言い切ってますね。
Guiano:日本人の音楽を聴く人は、どんなポップソングでも、歌詞に意味を求める人が多いじゃないですか。僕の曲もいろんな解釈をしてくれてる人がいて。それはそれで面白いんですけど、そればかりじゃ見えないものもある。この曲は、意味のなさをどれだけ楽しめるのかなっていうのを考えてる時に作ってる曲ですね。
――この流れで聴くと、急にテンションも曲調も変わっててびっくりします。ピアノもボーカルもクラップも弾むファンクになってるから。
Guiano:アメリカのポップスやヒップホップ、K-POPもよく聴いているので、それをやりたかったんですよね。今までは、自分として活動する意味みたいなものもずっと考えていたから、自分なりの曲みたいなのが頭の中にあって。それを全部取っ払って、やりたいことをガッとやった曲ですね。
――では、逆に“自分なり”=自分らしさを象徴する曲は?
Guiano:12曲目の「透過夏」ですね。当たれ!っていう気持ちがあったから(笑)。この曲で考えた自分らしさは、サウンド面です。ハウスっぽくて、アコギとポコポコしたビートが入ってる。日本のポップミュージックと海外のEDMを融合した1曲目「晴れるなら」もそうだけど、「透過夏」の方が集大成感がありますね。ずっと売れたいって思ってたけど、売れる曲を作るっていうのにジレンマがあって。ここで明確に、売れるっていう曲をターゲットにして作ったら、案外よかったし、悪くないなっていう感じですね。

――「透過夏」にはフィーチャリングボーカルとして理芽さんを迎えてます。
Guiano:曲を作る前から理芽ちゃんに歌ってもらう、デュエットの曲にしようって考えてて。僕が作った曲をシンガーの人に歌ってもらうっていう経験もなかったし、自分の曲をリスペクトしてる人に歌ってもらうっていうのはすごく面白かった。自分にとっても思い出の1曲になりましたね。
――Guianoさんにとって夏というのはどんな季節ですか。フューチャーベースを導入した「あの夏の記憶だけ」という曲もあります。

Guiano:まず、単純にすごく好きです。僕、雪国出身なんですけど、夏になると、家族で那須高原に行ったりして。緑がたくさんでいいなって思っていたし、夏が思い出になって、自分の中で概念になってて。心の中のエモーショナルな部分というか、過去の思い出みたいな概念として、夏が出てくることが多いですね。だから、聴く季節が夏じゃなくても問題ないというか。逆に夏じゃない季節に聴いた方が耽る感があるし、黄昏るイメージですね。
――また、「アイスクリーム」には花譜さんを迎えてます。
Guiano:これは、花譜ちゃんとCeVIO AIの音楽的同位体である可不(KAFU)ちゃんに書き下ろした曲だったんですけど、僕が無理を言って、花譜ちゃんに歌ってほしいってお願いして歌ってもらって。コロナ禍もあって、ディレクションに参加できなかったことが残念だったんですけど、花譜ちゃんには家で録ってもらったんですね。それを聴いた時に、いい意味で、思い通りにいかない子というか(笑)。思ったよりもエモーショナルだったし、すごく意外性があって、改めて才能を感じました。
――もともとは、仕事として作った曲ですよね。
Guiano:書き下ろしで作ったはずなんですけど、楽しくなっちゃって。楽しく作ったはずなんだけど、案外うまくいって。いい曲になったかなって思いますし、仕事という感じで作り始めた曲だとしても、最近は全然問題ないというか。なんて言うんだろうな……それも音楽の1つっていうんですかね。いろんな縛りがある中でブラッシュアップして作っていくっていうのは、自分が好きなものを作るっていうフェーズにシフトした時でも重要なことだなって思って。毎回、新しいことに気づけるので、仕事で音楽をやるときは成長の場というか、学校っていう感じですね。
――好きなように作った曲と言いますか、最初におっしゃってた“自分の感情”をそのまま出した曲も聞いていいですか。
Guiano:感情が昂ったときに、先にガッと作って、後からまとめるっていう作業をしたのは、2曲目の「どうもしようもない」、6曲目の「最低だ」、13曲目「優しい大人になりたい」ですね。「どうもしようもない」は2020年8月の1stワンマンライブの新曲用に書いた曲なんですけど、締め切りを守れてねーなっていう気持ちになった時に作って。エミネムにめちゃめちゃハマってたので、アコースティックで生楽器寄りのビートを目指して作りました。
――どうして今、エミネムに?
Guiano:映画『8 Mile』を見て、エミネムかっこいい!と思って(笑)。ハマったら、ガッといくタイプなので、全部聴いて。あまりにもずっと聴き続けていたので、これは曲に昇華しないとエミネム終わんねーなって思って、曲にしましたね。とにかくヒップホップを作りたかったんです。
――ラップに乗せているのは、締め切りが守れない自分に対しての怒りですよね。
Guiano:そうですね。僕は人に対して怒るっていうのがなくて。基本、怒ってるとしたら、自分に怒ってるか、もっと広く、社会に怒ってるとか。ただ、怒りの前段にある感情を大事にしたいなと思ってて。悲しくて怒ってる、悔しくて怒ってるとか。怒ってるの一個前の部分を曲にしたいなって思ってますね。
――この曲で言うと、言い訳がましい自分に対する自己嫌悪の部分ですよね。「最低だ」はどんな感情ですか。
Guiano:知り合いと話している中で、傷つけちゃって、喧嘩になったことがあって。喧嘩をしたあとも、ずっとそのことを考えていたんですけど、だんだん、何で俺がこんな嫌なことするんだろうなとか、生まれてきた意味なんだろうなとか、犯罪者はなんで犯罪するのかな、というところまで考えていってしまって……。その考えの連鎖がそのまま曲になってますね。
――やっぱり、矛先は友達じゃなく、自分の方に向くんですね。
Guiano:そうですね。やっぱ、人を怒らせたとか、失敗した時とかは、絶対に自分に理由があるというか、自分として生きてる以上は自分に理由を求めないとしょうがない。自分で自分に問いかけて、解決させるというか、1つの答えを見つけるのが僕の生き方ですね。
――アルバムのラストナンバーである「優しい大人になりたい」は、生きる意味、大人になること、仕事としての音楽というテーマがこの曲にも入ってます。

Guiano:東京に出るって決めた、高校生の時に作った曲なんですけど、やっぱり焦ってるというか、躍起になってるなっていう印象ですね。今はちょっと印象が変わって、もうちょっと優しく歌えるので、当時よりは大人になったのかなって思いますね。
――<I love you この言葉も 大人になれば金に変わってゆく>というフレーズからは、当時の葛藤が垣間見えます。
Guiano:当時は、I LOVE YOUとか、愛してるっていう曲で売れてしまったら、やがて自分は、生きるためにそういう曲を書くんじゃないかっていう嫌悪感があったんですよね。それは、今でもあるんですけど、思ったより、自分は嫌なやつじゃなかった(笑)。大人になっても、成長していっても、案外、そういうことをしなかったなっていう感じですね。
――安易なラブソングを書く商業的な音楽家にはならなかった。
Guiano:そうですね。なんないなっていう確信を持てたから。そういうふうに自分のことを知れたことで、ちょっと大人になれたかなって思いますね。何も知らなかったから、自分のことを。
――本作を通して、“自分のこと”を考えられるようになったということですよね。これまで後回しにしてきた自分とはどんな人間でしたか。
Guiano:ずっと正しいことをしようって考えてたんですね。この状況だったら、こういう言葉を言おうとか。例えば、誰かが悪いことや間違ったことをしたときに、こういった方が正しいという理由で、人を傷つけていいんだっていう開き直れるところがあった。でも、それは表裏一体なんですよね。正しさに取り憑かれていて、そのことに気づけてなかった。クソガキですね。
――あはははは。クソガキじゃないですけどね。今はもう、その正しさの呪縛は取り払えた?
Guiano:まだ、だいぶ悩んでる部分ですね。最近、特に意識し始めたことなんです。例えば、ネットで人を叩く人も、悪いことをしたから叩けるっていう、正しさの盾があってやってる。自分の中にもそういう部分がないわけではないから、1つずつ見て、自己嫌悪に陥っては、取り払っていってる感じですね。ただ、正しさよりも、大事なことはわかっていて。大切な人の感情に寄り添って、自分の音楽を聴いてくれる人の心に寄り添って生きたいなって思いますね。
――2回目のライブも決まってます。
Guiano:前回のライブが自分的に納得できない部分が多くて。特に歌がめちゃくちゃ下手だったので、ボーカリストとして成長した姿を見せられたらいいですね。
――「透過夏」はできたらライブでは合唱したいですよね。
Guiano:ライブのことを考えて曲を作るのも好きなんですよ。最後のコーラスのところは、ライブでみんなが歌ってくれているところを妄想して、すげえニヤニヤしながら作ってて(笑)。だから、コロナが終息するまでにもっと人を呼べるようになって、終息したらでっかい会場で、みんなで歌いたいなと思いますね。

【取材・文:永堀アツオ】





Guiano - 法螺話 (self cover) [MV]

tag一覧 J-POP アルバム インタビュー 男性ボーカル Guiano

リリース情報

A

A

2021年03月24日

KAMITSUBAKI RECORD

01.晴れるなら
02.どうもしようもない
03.I love you (self cover)
04.法螺話 (self cover)
05.アイスクリーム feat. 花譜
06.最低だ
07.あの夏の記憶だけ
08.ポップソング
09.夜考
10.風の吹くまま
11.帰ってくるよ
12.透過夏 feat. 理芽
13.優しい大人になりたい

お知らせ

■ライブ情報

Guiano 2nd ONE-MAN LIVE「A」
04/29(木祝)東京 WWW X

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

トップに戻る