ankの確固たる意志を注ぎ込んだ新作『いききっちゃおうぜ』。3人に突撃取材!
ゆびィンタビュー | 2021.04.16
3ピースバンド・ankがアルバム『いききっちゃおうぜ』をリリースした。これまで「私とあなた」という1対1という関係性を一番に考えて、楽曲とライブを通じて、その重要性や感謝の想いをストレートかつ遊び心たっぷりに伝えてきたank。そんな彼らが、今作で改めて「You&I」を掲げたのは何故なのか? そこから紐解いていった話の中で強く感じたのは、流動する時代の波の中で再確認したという「だからこそ、ankはこう在りたい!」という彼らの確固たる意志だった。
PROFILE
ank
青春のバンド
Vo/Ba まやみきの伸びやかで中性的な歌声と耳なじみのよいメロディー。
Dr おおごによって綴られる日々に寄り添うソングライティング。
メロディックから歌モノまでジャンルの殻を破り生み出される楽曲たちは様々な表情を持つ。
毎日を楽しむこと、失敗も後悔もすべて、あなたの今を 真っ直ぐ に生きるためのヒントに。
- 前作『たまんない人生だった』は、バンドと作詞のおおごさん自身の内面的な部分を浮き彫りにするような作品だったと思うのですが、今作『いききっちゃおうぜ』は、目の前にいる/いてほしい相手がはっきりと見える作品だなと思いました。
おおご(Dr/Cho)
コロナの影響で友達やお客さんと会えなくなったからこそ、自分が聴く音楽や観る映画に対して「何のためにこれがあるんだろう?」と考えるようになったんですよ。でも、例えばそれが何万回も再生されているような流行りの音楽だったとしても、自分が触れているその時間は間違いなく“1対1”なんだよなと気づいたし、だからこそ今作では、その部分をあえて言葉にしたいと思いました。まやみき(Vo/Ba)
ライブができなくなったことで、生きることへのモチベーションが失われてしまったし、正直、何が楽しくて生きているのかわからなくなった時期もあったんです。だけど、配信ライブをやったことで、バンドと人はちゃんと繋がれてるんだって再認識できたし、そのあとに有観客ライブで久々にお客さんと目を合わせたときには、「この人に歌うためにバンドをやっているんだ」ということを心の底から実感できたんですよね。そういう経験を通して感じた気づきが、このアルバムには全部詰まっていると思います。ジーコ(Gt/Cho)
今作に収録されている曲については、2年前から着々とたまってはいたんですけど、アルバムのコンセプトが決まりきっていなかったんです。その中でコロナ禍に入って、僕ら自身が「誰からも見られていないんじゃないか?」という寂しさをリアルに感じたからこそ、リスナーに対して「俺たちには、あなたたちが見えているよ」と提示することで、バンドと人は繋がっていられるんだ、という「You&I」というメッセージに直結したんだと思います。その軸を確信付けたのは、やっぱりライブでしたね。- 「1対1」という関係性は、ankがこれまでも絶えず提示してきたバンドの芯となる部分だとは思いますが、その考え方に対する変化は生まれました?
おおご
そうですね。間違いなくバンドの軸にある部分だし、曲でもMCでも伝えてはいたことなんですけど、今までは「こういう音楽/バンドをやりたい」とか「こういうライブをやりたい」とか、そういう表現面での意識が強くあったんです。でも、ライブができないという大きなきっかけがあったことで、ライブができたときの歓びや、人と会えたときの感情の昂ぶりっていうのを強く感じたし、結局それがいちばん大事だということに気づけました。まやみき
今までは、「あなたがいてくれるから、私がいられる」というスタンスだったんですけど、自分の心が少し強くなったことで、「私についてこい!」と思えるようになったんです。下手に出るのでも上から目線でもなく、相手のことを尊重しつつ、同じ目線で導きたいというか。ankでのバンド活動を通じて、私自身が人間的にも成長できているので、聴いてくれる人に対しても、自分がそう在りたいと思えるようになりました。ジーコ
ライブ中に出る言葉の重みや強さは、明らかに変わっているよね。まやみきの成長とともに、ankのライブの強度も増しているように思いますし。- 今作は、まやみきさんの歌い方も変わった気がしました。今までよりももっと言葉に自分の気持ちを込めているというか、まやみきさん自身の強さが出ているというか。
まやみき
最初は、おおご君の書いている言葉がそのまま伝わるようにしよう、という意識を持っていたんですけど、活動を続けていく中で、おおご君の考えと自分の考えをミックスした太い軸を作りたいと思うようになりましたし、そういう意味では『たまんない人生だった』と今作とでは、かなり違いが出ていると思います。今作は、自分の言葉で歌えているという感覚がいちばん出ているんじゃないかな?- その変化はとても強く感じます。アルバムのトップかつリード楽曲でもある「ニューパンク」のMVは、YouTube生配信を利用しつつ、全編一発撮りという前衛的な撮影をしていましたね。
おおご
監督の頭の中にしか完成形がなかったから、映る側としてはめちゃくちゃ緊張しました(笑)。まやみき
家にあるパソコンを全部立ち上げながら、何日も練習してたよね。ジーコ
太陽の位置やライティングの位置で全部変わってしまうので、想定外のトラブルばかりでした……。- やっぱり苦労は絶えなかったんですね(笑)。でもあのMVって、ライブ風景から始まって、いきなり日常生活に飛び込んでくるというストーリーじゃないですか? 発想自体のユニークさもそうなんですけど、あの映像から伝わってくる「音楽と日常は延長線上にある」というメッセージが、実にankらしいなと思いました。曲自体の話をすると、「ニューパンク」という曲でやりたかったことは、ankとしてのパンクの再定義ですか?
おおご
自分はパンクが大好きだし、憧れているということを前提として、この曲で伝えたいことが2つあったんです。1つは、パンクの再定義とは異なるものなんですけど、ankが3人で音楽をやっている理由を提示したいということです。スラッシュメタルやハードコアといった、複雑で多音な音楽性を持つバンドがメインストリームにあった中で、そこへの反骨という意味で、簡素なスタイルで鳴らす「パンク」というジャンルが誕生したんですよね。- オーバーグラウンドに対するカウンター的な。
おおご
そういうカウンター精神は、自分もずっと持っていたいなと改めて思ったんです。その上での2つ目の理由は、まさにankとしてのパンク再定義なんですけど。パンク好きではあるけど、例えば「大人になんてなるもんか」とか「政治家がクソだ」とか、そうやって自分の価値を上げるために相対的に人を下げることが、はたしてかっこいいことなのか?と思っていて。だからこそ、さっき話したような反骨精神や、音楽的にシンプルなかっこよさを突き詰めたいという考えは持ちつつも、“誰かのせいにはせず、自分を肯定する強さ”を持ちたいし、それを自分たちの「パンク」としたいんです。- たしかに、ankは否定をしないですよね。
おおご
日常的には「ダサい」とか「嫌い」とか、いろいろ思うんですけどね。でも、そうやって誰かを否定したところでしょうがないよなと思ったし、その考えが出ているのがAメロです。あの歌詞を読んでどう思うかはその人の価値観次第だし、だからこそ、あの部分は事象だけを羅列しています。- なるほど。反骨精神に対する反骨精神を表面化させつつ、「ニューパンク」で伝えようとしたのは「自分/あなたの考え方の尊重と肯定」なんですね。
ジーコ
パンクを否定するのではなく、パンクへのリスペクトを持った上での、ankなりの再定義なんですよね。おおご
この曲はめちゃくちゃ気に入っていますし、この曲をきっかけに何かを変えていきたいとも思っています。- そういう堂々たることをしつつ、「あげぽよでいきたい」や「あげぽよでいこう」という曲を作るというバランスがいいですよね(笑)。
ジーコ
「あげぽよでいきたい」は何度聴いても面白いもんなぁ。おおご
満足するよね(笑)。放課後の部活感というか。俺らは大人だけど、単純にバンドが楽しいからやっているんだよ、っていう雰囲気が伝わればいいなと思ってます。まやみき
この曲がないと、逆にアルバムが綺麗に収まりすぎちゃっていたと思うんです。ちょっと肩の力が抜ける瞬間が欲しかったし、それがあるからこそのankらしさというのもあると思いますしね。- 「あげぽよ」や<今はもう/牛はもー>(「スーパーほめられたい!!」)といった、砕けた表現は使っていたい?
おおご
なんか、そういうところがなきゃ恥ずかしくなっちゃうのかもしれないです。自分自身が真面目なことを真面目なまま伝えることができない性格だし、まやみきが強さをもったボーカルだからこそ、ストレートに伝えてしまうと説教くさくなる気がするんですよね。まやみき
そうだね。逆に私は真面目な性格だから、レコーディングで<牛はもー>の部分は牛っぽく歌えばいいの?とか聞いてました(笑)。でも、そういう遊び心のある歌詞を、真面目な自分が歌うからこその絶妙なバランスはあると思いますし、楽しんでやってます。- 「スーパーほめられたい!!」で言うと、普段「誰かに褒められたい!」と思っていても、声を大にして言えないと思うんですよ。でも、この曲があることで、リスナーとしては「よく言ってくれた!」と感じるし、ありがたいと思うんです。そうした代弁者としての意識はあるんですか?
おおご
俺はあんまり考えてないですね。自分が思ったことを、そのまま言ってるだけです。ジーコ
おおごは、そういうことをパッと言えるんですよね。僕はおおごと中学時代から一緒にいるんですけど、彼は極端な考え方をする人間だと思うんです。どちらかに振り切った考え方ができなくて悩んでいる人に対して、はっきりとした最適解を出してくれるというか。その部分が凝縮されて、こうした曲に出ているんだと思いますし、悩みがちな人の肩の力を抜いてくれるんだと思います。おおご
ライブ後に、お客さんから「良かったです! でも、緊張して話しかけられませんでした」と言われることが多いんですよ。その度に「いやいや褒めてよ! 褒められるためにライブやってるからね!」と伝えていたというのもあって、この曲を作りました。これからは迷いなく伝えてほしいです(笑)。- 壁は自らぶっ壊す作戦だ(笑)。「ださいうた」は、ankの初期の頃を彷彿させるように思ったし、そうしたバンドの初期衝動を含めた「忘れないためのうた」なのかと思ったのですが。
おおご
初期の雰囲気については、特に考えてはいなかったですね。人って、その時々に生まれた様々な感情に対して、忘れないようにしても、やっぱり忘れていってしまうじゃないですか。ややこしくなっちゃいますけど、そうした感情を忘れないようにすることを忘れないようにするための歌です。「ださいうた」というタイトルにしたのは、恋人との別れをきっかけに作った曲だからです(笑)。過ぎてしまった出来事を歌うのはダサいなと思ったんですけど、でもそのときに悲しんだことは本当だし、それを感じたのは自分以外の何者でもないので、ちゃんと残そうと思って作りました。- ストレートな失恋ソングになっていないのは、先ほど話してくれたようなおおごさんの性格が故かもしれないですね。ショートチューン「それだけ」と、次曲の「好きな人と笑ってたいよ」は、<僕のためのうただよ>と<今度は僕のためのうたじゃなくて/君のうただぜ>という歌詞での繋がりがありますよね。
おおご
まさにそうです! ここの繋がりは、アルバムのコンセプトを言い当てている部分だと思います。「それだけ」が出来たのが、「ださいうた」で歌われている失恋の渦中で心がやられているときだったんですけど、だからこそあの曲には<僕のためのうただよ>というフレーズがあるんです。一方で、「好きな人と笑ってたいよ」は、自分の周りにいる人に向けて書いた曲だったし、CDを聴いてくれている人に対しても「あなたに向けた歌だよ」ということをわかりやすく提示したかったんですよね。- そうした明確なアプローチをした上で、最後にはアルバムタイトルにもなっている「いききっちゃおうぜ」が鎮座しているわけですが。「生き抜こう」でも「生ききろう」でもない、「いききっちゃおうぜ」という言葉に、ankらしいポジティブさを感じました。
おおご
この言葉は、『宮本から君へ』という映画の「いききっちゃうんだ」というキャッチコピーから影響を受けています。本当はそのまま使おうかとも思ったんですけど、ankは「いききっちゃうんだ」と断定して独走するバンドではないですし、皆と手を取り合って進んでいきたいんですよね。- この曲は、おおごさんがコロナ禍で感じたことが歌詞になっていますけど、<どこにでもある幸せを/噛み締めることは大事だけど/ねぇ 心震える瞬間を追いかけたい>と歌っていますよね。ankは、些細な幸せや、日常の中にある喜びをフックアップして歌うこともできるバンドだと思うんですが、それをしないのは何故ですか?
おおご
それは、自分の人生のテーマでもあるかもしれないです。些細な幸せを慈しむことももちろん大事なんですけど、そうやって現状を大事にし続けるだけだと、今以上の前進はできなくなるかもしれないし、成長の機会を逃してしまうかもしれないなと思うんです。だからこそ自分は、今を幸せに感じた上で、先へ進む意志を持ち続けていたいんですよね。特に最近は、コロナ禍に入ってライブが無くなって、生きているだけで幸せだとか、友達と会えるだけで幸せだということを感じたのは確かですけど、実際にライブをやったらシンプルに「些細な幸せじゃなくて、これがいちばんいいじゃん」と思ったんです。普通に笑うより、めちゃくちゃ笑ったほうが絶対に楽しいですし。ジーコ
実はこの「いききっちゃおうぜ」は、もともとはアルバムに入れる予定ではなかったというか、バタバタなスケジュールの中で作って、最後の最後に入れた曲なんですよ。この曲がなければ、1枚を通して感じるものが全然違うと思いますし、頑張って良かったなと思います。おおご
うんうん。この曲があったからこそ、作品が締まった感じがあるよね。- 集大成と呼ぶに相応しいアルバムになったと思いますし、いちリスナーとしてもそう思います。5月からはリリースツアーも予定されているということで、楽しみです。
おおご
僕としては、本気を出して作った曲たちだからこそ好きになってもらいたいし、ライブで拳を上げながらみんなで遊びたいですね。まやみき
「ank旋風巻き起こすぞ!」という気合でいっぱいです。今回のツアーでは、今まで行ったことがなかった土地にも行かせてもらえるので、「こんなことを歌うバンドがいるのか!」と驚いてほしいですし、ankを好きになってもらうためのツアーだと思っています。ジーコ
世間的にはまだ完全に元に戻ってるわけではないですし、ライブに行きたくても行けない人はたくさんいると思うんです。でも、ライブの楽しさや、「ankはあなたがいることをわかっているんだよ」というメッセージは今作に全部込められたと思っているので、ツアーやリリースを通して、ankが寄り添ってあげられるような人との出会いがあればいいなと思います。
【取材・文:峯岸利恵】
リリース情報
いききっちゃおうぜ
2021年04月14日
?
01.ニューパンク
02.スーパーほめられたい!!
03.あげぽよでいきたい
04.あげぽよでいこう
05.ださいうた
06.それだけ
07.銭湯に行こう
08.好きな人と笑ってたいよ
09.いききっちゃおうぜ
02.スーパーほめられたい!!
03.あげぽよでいきたい
04.あげぽよでいこう
05.ださいうた
06.それだけ
07.銭湯に行こう
08.好きな人と笑ってたいよ
09.いききっちゃおうぜ
お知らせ
■配信リンク
『いききっちゃおうぜ』
https://linkco.re/8r0Fr7CF
■コメント動画
■ライブ情報
NEW 最高 ALBUM 「いききっちゃおうぜ」 Release Party めちゃめちゃ special 2man show!!
04/23(金)東京 新宿ACB
w/ BACK LIFT
いききっちゃおうぜ リリースツアー 〜初めてちゃんと周ります!!〜
05/21(金)広島 ALMIGHTY
w/ Atomic Skipper / SideChest
05/22(土)福岡 Queblick
w/ Atomic Skipper / SideChest
05/23(日)大分 SPOT
w/ Atomic Skipper / SideChest / My Peace
06/02(水)仙台 enn 3rd
w/ Atomic Skipper / SideChest
06/03(木)新潟 GOLDEN PIGS BLACK STAGE
w/ Atomic Skipper / SideChest
06/24(木)金沢 van van V4
w/ SideChest
06/25(金)松本 ALECX
w/ SideChest
07/28(水)神戸 太陽と虎
w/ Atomic Skipper / SideChest
07/29(木)京都 MUSE
w/ Atomic Skipper / SideChest
※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。
『いききっちゃおうぜ』
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04/23(金)東京 新宿ACB
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