ストレイテナーにとって、今年初のワンマンライブ「VIVA LA VANDALISM」。品川ステラボールのチケットは即日ソールドアウト。開演時間の18時を回り、客電が落ち、メンバーがステージに登場すると怒濤の大歓声。オープニングナンバーはセルフカバーアルバム『STOUT』にも収録されていた「CLARITY」だ。センシティブかつダイナミックな音像、躍動するビートが心地よく身体を揺らせ、攻撃的なギターリフに血が騒ぐダンスロックナンバー「VANISH」へと突入し、ひなっちこと日向が強力なスラップベースで挑発する「KIllER TUNE(Natural Born Killer Tune Mix)」へとなだれこむ。ホリエ、シンペイ、日向、大山。各自のプレイに惜しみない歓声が送られ、前半戦にしてフロアーには既にライヴ後半のような熱気が立ちこめる。実際、そのバンドアンサンブルは鉄板だ。呼吸までが伝わってくるようだ。

「ケガとか落としものとか気をつけて」。ホリエが暴れまくるみんなを気遣いつつ、「俺たち、ストレイテナーと言います。よろしくお願いします」と挨拶。 　曲のイントロが始まるたびに“やってくれた”と言わんばかりの声援が上がり、泣きのメロディと音が溢れ出すように疾走するサウンドに高揚せずにはいられない。小気味いいビートから目の前にまぶしい光が広がるようなサビのメロディへと展開していく「FREEZING」ではみんなが歌い、フロアはさらに一体感を増していく。ストレイテナーの鳴らす音楽があれば、多くの言葉は必要ない。満たされた空気感。男性ファンから「ありがとう！」という太い叫び声が上がる。

　エレピで始まり、静と動をみごとに浮き彫りにさせた「Lightning」や「Man-like Creatures」といった中盤ミドルテンポのナンバーも鮮烈な印象を残した。しみ込んでいくホリエのボーカル、木々の色が変わっていくような情景を丁寧に描き出していく演奏。この日は雨がしとしと降っていたのだが、ストレイテナーの楽曲には雨に濡れた街もよく似合う。

「USTREAMとかニコニコ生放送で流れてると思うだけで、なんで緊張するのかな？　万が一にも失言とか避けたいじゃない？」。シンペイが会場を笑わせ、ホリエが「VIVA VANDALISMへようこそ」と煽り、４月にリリースされた最新両A面シングル「VANDALIZM」を演奏すると、その強力ダンスビートにフロアーが波打つように揺れ、シンペイの冴えたドラミングも快感。ステラボールの気温は真夏並みに上昇していった。スパイ映画のテーマ曲に通じるイントロがカッコいいエッジーなナンバー「SPEEDGUN」もセルフカバーアルバムでさらにヴァージョンアップされ、「東日本のバーサーカーに捧ぐ」というひとことで始まった骨太な「BERSERKER TUNE」はまるで夏フェスのような盛り上がり。３月１１日以降、東日本は未曾有の事態に見舞われたが、ここに集まっている誰もがストレイテナーから放たれるエネルギーと最高のグルーヴに酔いしれ、互いにすべての感情を吐き出し、昇華させているように思えた。

「今後のストレイテナーは、まず、夏にフェスがあって、その前にシングルを出しますね。曲はまだ、どれにするか決めてませんが、カッコいい曲がありすぎて、どれにしようかと…。本当は９割方決まってます（笑）」。ホリエが今後の計画を報告し、最新シングル「SILLY PARADE」ではアッパーかつセンスのいいアレンジが光る演奏を届け、本編ラストはアルバム『CREATURES』の最後を飾った「瞬きをしない猫」で締めくくった。

　アンコールはホリエがキーボードを弾いた「MARCH」で、しっとりと、しかし力強いメッセージの歌を響かせた。過去の曲も新しい曲もひっくるめて、今この瞬間のストレイテナーがパッケージされたライヴ。感謝の言葉を述べ、４人がステージを去り、客電がついたあともアンコールの声はしばらく鳴りやまなかった。

【Photo by 橋本塁(SOUND SHOOTER)】
【取材・文：山本弘子】