レビュー

ストレイテナー | 2014.06.25

連載 第26週
ストレイテナー
『Super Magical Illusion』


新時代の到来を告げる冒険作

 昨年、メジャー・デビュー10周年を迎えたストレイテナーのニューシングルには、重要なメッセージが含まれている。

 曲は大きく二つのパートに分かれる。非常に生々しいバンド・サウンドのAメロと、すっきり整理された4つ打ちリズムのBメロだ。こう書くと「なんだ、普通じゃん。ロックなAメロに、踊りやすいサビがくっついてるんでしょ」と思うかもしれないが、これが全然普通じゃないのだ。

 まずAメロのグルーヴは、飛び抜けてワイルド。優れたテクニックに10年のキャリアが加わってこそ醸し出すことのできる、このバンドならではの力強さがある。リリックの日本語部分は、♪探せ!♪、♪始めようぜ♪など、リスナーに対してフランクに呼びかける。そして、そんなパワフルなグルーヴに呼ばれるように、英語が混じっている。

 一方、Bメロは全編日本語。4つ打ちリズムに細かいリフが絡んで、明るいメロディと優しい言葉がスムーズに耳に入ってくる。♪明日も花は咲くだろう ♪と歌うリリックは、口語調のAメロとは打って変って、文語調。先ほど、このパートをサビと言わなかったのは、あまりにもAとBのタッチが違うからだ。Aメロを受け止める形で、Bメロが存在しているわけではない。

 ストレイテナーはなぜこの極端な2重構造の曲を作ったのだろう。僕には「Super Magical Illusion」が、このバンドがたどってきた“問題意識”の象徴のように思える。

 洋楽にインスパイアされて音楽を始め、日本のリスナーを前に演奏することになった。当然、そこには多くの困難があった。たとえばリリックの選択肢は、日本語のみ、英語のみ、日英ミックスの3種類がある。そして今、J-ROCKはどの選択肢においても、ようやく完成の域に達しようとしている。だからこそストレイテナーは、1曲の中に日本語のみのパートと、日英ミックスのパートを両立させる冒険に挑んだ。リリックだけでなく、グルーヴも“日本語ノリ”と“英語ノリ”がミックスされている。

 そんなJ-ROCKは、正直に言えば、音楽として少し歪んでいる。そして、ヒビも入っている。が、それも含めてカッコいいのも事実。実際、海外のJ-ROCKファンは、日英混じりのリリックを喜んでシンガロングしている。そしてストレイテナーは、そんな“素晴らしいヒビ”を試行錯誤しながら作り出 したオリジネーターの一つなのだ。

 それにしても、この10年のJ-ROCKの進化は凄まじい。「Super Magical Illusion」は、そのシンボルとなるキラーチューンだ。そんな時代が到来したことを、ストレイテナーは「Super Magical Illusion」で誇らしげに告げている。

【文・平山雄一】

リリース情報

Super Magical Illusion(初回限定盤)[CD+DVD]

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Super Magical Illusion(初回限定盤)[CD+DVD]

発売日: 2014年06月25日

価格: ¥ 1,900(本体)+税

レーベル: ユニバーサル ミュージック

収録曲

[CD]
1.Super Magical Illusion
2.Wonderfornia
3.LIVE TRACKS from’21st CENTURY ROCK BAND TOUR 2013’
( From Noon Till Dawn~プレアデス?ネクサス~Farewell Dear Deadman )

[DVD]
1. Toneless Twilight (2013.12.17 UNIQLO AX_Korea)
2. Melodic Storm (2013.12.20 SCAPE Warehouse_Singapore)
3. REMINDER (2013.12.22 Legacy Taipei_Taiwan)

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