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“これまで”と“これから”を真っ直ぐに表現してみせた藍坊主初の武道館公演!

藍坊主 | 2011.05.20

 ザ・ブルーハーツに憧れていた少年たちによって結成されたバンドが、自らの音楽性に目覚め、少しずつ独創性を追及しながら、やがて自分たちだけの“歌”へと辿り着く。「藍空大音楽祭~the very best of aobozu~」というタイトル」というタイトルが冠された初の武道館公演で藍坊主は、これまでの軌跡とそこで培ってきた音楽--ロック・ミュージックの衝動、豊かな深みを持ったアレンジ、高い精神性を感じさせる歌詞の世界--をはっきりと示してみせた。

 青い光に照らされたステージにメンバーが登場した瞬間、大きな歓声と拍手が起こり、”初めての武道館ライブ”をここにいる全員が祝福していることがダイレクトに伝わってくる。オープニング・ナンバーは、彼らの代表曲のひとつ「ハローグッバイ」。田中ユウイチ(G)の鋭いギターリフ、藤森真一(B)と渡辺拓郎(Dr)による骨太のリズムセクション、そして、「あなたが生きているこの世界に僕は何度でも感謝するんだ。」に象徴される深いメッセージを感じさせるhozzy(Vo)の歌によって、大きな会場が藍坊主の世界観に染められていく。
田中がステージの前方に出てオーディエンスを煽りまくるなど、バンド全体のテンションはふだんのライブ以上に高い。若干の緊張も感じられるが、それが熱さと勢いに繋がっていて、思わずグッと来てしまう。

 ライブ前半で印象に残ったのは、「高2のとき、ベースの藤森が作ってきた曲。こいつと(バンドを)やったら、プロになれると思った」(hozzy)、「MDに入れて、チャリで届けたんだよね」(藤森)、「この曲を最後にやったのは、たぶん10年くらい前の八王子のライブハウス。そのときのお客さんは2人だったんだけど(笑)、こんなにたくさんの人の前でやれるなんて、曲の立場になったらビックリするだろうな」(田中)という「僕と同じ」だった。
当時のロックシーンを賑わしていた青春パンクの雰囲気がある曲だが、多彩なリズム・アレンジ、日本的情緒をたたえたメロディなど、音楽的な魅力がきちんと備わっている。そう、このバンドは結成当初から、ひとつのジャンルに固定されないポテンシャルを持っていたのだ。

 “ミズカネ・フィルハーモニー”(昨年行われた日比谷野外大音楽堂にも登場したストリングス・カルテット)とともに演奏された「すべては僕の中に、すべては心の中に」「雨の強い日に」からも、藍坊主の奥深さが伝わってきた。もともと彼らのアレンジメントはかなり緻密に構築されているのだが、ストリングスが加わることによって、その表現が大きく増幅されていたのだ。
ゆったりとしたバイブレーションと美しい音像を兼ね備えたサウンドのなかで、hozzyのボーカルもさらに強く響く。温かさと強さ、そして、かすかに混じった狂気。こんなボーカリスト、ほかには絶対いない。

 「知ってる人はいっしょに歌ってください!」というhozzyの言葉に導かれた「ウズラ」によって、ライブはついにクライマックスへと向かう。ステージ全体が星空のように彩られたライティングのなかで披露された最新シングル「星のすみか」、“Happy Happy Days”という大合唱が鳴り響いた「セブンスター」。
そして「どうしても本編の最後でやりたい曲があります。それをミズカネ・フィルハーモニーといっしょにやらせてください」(hozzy)という「伝言」では、この夜、もっとも大きな感動が広がっていった。人は苦しむために生まれたんじゃない。幸せになるために生まれたんだ--そんな切実な思いが、ずっしりと伝わってくる。さまざまな音楽的トライアルに挑み、アルバムのたびに変化を繰り返してきた彼らだが、その本質はやはり、すべての人の心を揺さぶる力を持った歌にある。そのことを強く実感した瞬間だった。

 アンコールでも強く心に残るシーンが続く。「どうしても新曲をやる、って藤森が書いてきた」(hozzy)という新曲(生きることの本質に立ち向かった、すごい曲でした)、「俺のことは忘れていいから、藍坊主のことは忘れなるな」というhozzyの叫びとともに繰り出された「忘れないで」。
そして2度目のアンコールでは、命を紡いでいくことの愛しさを歌い上げた「マザー」、会場全体がひとつになり、心地よく高揚していった「スプーン」も。今回の武道館公演についてhozzyは「ちゃんとやり遂げることができたら、きっと得るものがあると思う」と語っていたのだが、まさにその言葉どおり、藍坊主の“これまで”と“これから”を真っ直ぐに表現してみせた、意義深いライブだったと思う。

【取材・文:森 朋之】
【撮影:木村篤史/藤井拓】

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リリース情報

the very best of aobozu(初回限定盤)

the very best of aobozu(初回限定盤)

2011年04月27日

TOY’S FACTORY

[DISC1]
1.ハローグッバイ
2.鞄の中、心の中
3.ウズラ
4.雫
5.未知の道の道
6.すべては僕の中に、すべては心の中に
7.スプーン
8.テールランプ
9.コイントス
10.ラストソング
11.羽化の月 (FORESTONE Ver.)
12.水に似た感情
13.星のすみか
14.伝言
15.セブンスター

[DISC2]
1.ガーゼ
2.桜の足あと
3.雨の強い日に
4.言葉の森
5.名前の無い色
6.空
7.春風
8.マザー
9.柔らかいローウィン
10.空を作りたくなかった
11.シータムン
12.瞼の裏には
13.あさやけのうた
14.ジムノペディック
15.忘れないで(新曲)

[DISC3](初回限定盤)
レア音源

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リリース情報

星のすみか

星のすみか

2011年04月27日

TOY’S FACTORY

1.星のすみか
2.花のなはなの花

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セットリスト

  1. ハローグッバイ
  2. ラストソング
  3. ガーゼ
  4. 鞄の中、心の中
  5. 春風
  6. 僕と同じ
  7. 桜の足あと
  8. シータムン
  9. あさやけのうた
  10. すべては僕の中に、すべては心の中に
  11. 雨の強い日に
  12. ジムノペディック
  13. 瞼の裏には
  14. ウズラ
  15. 星のすみか
  16. セブンスター
  17. 伝言
  18. Encore
  19. 新曲
  20. 忘れないで
  21. Double Encore
  22. マザー
  23. スプーン

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