藍坊主、かつてない生命力が満ち溢れた新シングル『魔法以上が宿ってゆく』
藍坊主 | 2015.12.09
- EMTG:素晴しいシングルが完成しました!今回は藤森さんのデモをもとに、hozzyさんが歌詞をつけたわけですね。
- 藤森:そうです。hozzyから歌詞を文面でもらったときに、めちゃくちゃ良いなと思いました。もともと自分が作ったメロディではあったんですけど、それがすごく中心にあって。「あ、これは本当に言葉を大切にしなきゃいけないな」っていう、それぐらい衝撃の内容だったんです。その時点で何回も何回も書き直したっていうのも聞いてたし。そこから今回はさらに突っ込んで、ふたりでスタジオに入って歌詞も含めて作り直していきました。
- EMTG:それは具体的に言うと?
- hozzy:藤森と話してて「なるほど」と思ったのが、たとえば歌詞に出てくる《魔法》だったら、魔法(イントネーションを“ほ”に置く)っていうメロディじゃダメじゃないですか。魔法(イントネーションを“ま”に置く)じゃないと。だから、けっこう細かくメロディのあがりさがりを直したんです。藤森とスタジオに入って。で、最終的に言葉を変えたり、メロディを変えたり、譜割を調整して。そうすることで、たぶんライブで歌ったときも歌詞をより伝えられるんじゃないかと思いますね。
- EMTG:藤森さんは、最初にあがってきたhozzyさんの歌詞で良いなっていう、その衝撃はどういうところに感じたんですか?
- 藤森:こんなに前向きな言葉を使ったりとかは、いままでは……。
- hozzy:そう、意外とないんですよね。たとえば、サビで《立ち上がろう》とか、《遠くまで走ろう》とか言ってるんですけど、いままでは、そういのが絶対に嫌だったんです。それも最近、抵抗がなくなって。実際にその言葉を当てはめて聴いたときに、やっぱりポジティヴな言葉って聴いてて良いものなんだと思ったんです。
- 藤森:その発言を聞いたとき、俺も驚きましたけど(笑)。
- hozzy:そう。自分でもやっと人間の心がわかってきたなと……それは嘘ですけど(笑)。いわゆる良い言葉っていうのは、もう本当に良い言葉なんですよ。
- 藤森:言霊みたいなものはありますよね。最近、本当にライブの内容が充実してるんです。音源を作るときはひとりで作業をしてるから周りに左右されないんですけど、ライブをやってると、そのときのモチベーションがリアルに自分のなかに入ってくる感覚があって。それがhozzyもあるんじゃないかと思うんです。対バン相手と一緒に良い1日を作った達成感とか、そういうのが積み重なって、それが自然とポイティヴな言葉を言っても違和感もない状態になってきたんじゃないかなって思うんです。
- hozzy:自分たちのレーベルを立ち上げて、環境が新しくなって、自分のなかで勝手に複雑化してたものが1回なくなったんですよ。バンド活動がシンプルなんですよね、きっと。いままですごく嫌だなと思ってたことが全然嫌じゃなくなったりとか。それが関係してるのか、実は一時期ライブをやるのもしんどかったんですけど、いまは「やべぇ!ライブが楽しい」っていう(笑)。また、こんなふうに思える日が来るなんて思ってなかったんです。それは周りの音楽をやってる人たちとか、音楽自体からもらってるエネルギーみたいなのが、前よりすごく大きくなったっていうのはあると思います。
- EMTG:なるほど。気持ちの面ですごく大きな変化があったんですね。いままでhozzyさんの歌は“この腐った世界なんて……”みたいなところがあったけど。
- hozzy:ははは!はいはい。
- EMTG:今回の「魔法以上が宿ってゆく」では、あなたがいるから世界は素晴らしくなるって歌ってる。それがもうこの世の大前提みたいになってるんですよ。
- hozzy:うん、そうですね。やっぱり嫌なこととかもいっぱいあったけど……それ以上に、素晴しい人がいっぱいいたなあって気づいちゃったんですよ。《あなたがいなかったら》っていうのも、心が病んじゃった時期に支えてもらった人たちがいて。それを思い出したときに、すごく感謝の念が湧いてきたんです。だから、当たり前のことが“腐った世の中”を越えたんですよね。まあ、また次は「くそったれ」とか言ってるかもしれないけど。
- EMTG:ちなみにサウンド的にはチェンバーポップっぽい手触りというか、アコースティックな雰囲気がいいですよね。
- 藤森:これも最近ライブをずっとやっていくなかで、今回はライブで盛り上がれる曲がいいね、みたいなことは言ってたんです。「ワンダーランドのワンダーソング」(シングル『生命のシンバル』カップリング)みたいな曲が最近ないなっていうのも話してて。
- hozzy:ずっとドラムがダカダカダカッていうような勢いのある曲ですよね。そこから始まって、結果的には前よりもポップに振り切った感じが出たなあと思ってます。まず音がキラキラしてますよね(笑)。はじめに藤森が作ってきたサウンドを一聴したときには、もっとポップでダンサブルな感じでしたけど。
- EMTG:それが変化していったのは、どういう考え方からですか?
- 藤森:それもライブですね。アレンジをしてくれた田中ユウイチ(G)とも話をしてて、この曲はハンドマイクで歌ったほうが響くだろうっていうhozzyからのアイディアを受けて変えていったんです。最初はバンジョーとかも入れてみたりしたんですけど。
- EMTG:合いそう。
- 藤森:雰囲気はワクワクするんですけどね。力強さが減っちゃうんですよ。たとえば、僕らが昔から憧れてるブルーハーツとかは、シンプルだけど歌詞はものすごい響くんですよね。
- EMTG:あと今回は「魔法以上が宿ってゆく」もそうだし、2曲目の「アメーバ」もそうですけど、コーラスがすごく素敵なんですよ。
- 藤森:ここ2年ぐらいコーラスのかっこよさは気に入ってて、最近の曲ではいろいろ試してるんです。藍坊主の面白さは、音程感が全員違ってるところなんです。俺がいちばん低くて、ギターがいて、ボーカルがいて、女性キーみたいなところでドラムが歌えるっていう。その長所を今後は生かしていきたいなと思ってるので、これは挑戦ですね。
- EMTG:このコーラスがちょっとディズニーランドっぽい雰囲気もありません?
- 藤森:そうそう。それは作りながらも言ってました。またそれをシンセとかキラキラしたものじゃなくて、コーラスで、人力でやれたのが良いんです。
- EMTG:で、2曲目の「アメーバ」。これは藤森さん曲で、サビの《この奇観(ワンダー)を抱いて》っていうのが、メロと歌詞が一緒にできたんじゃなかっていうぐらい絶妙。
- 藤森:まったくその通りです(笑)。そこから最終的なメロディは少し違うんですけどね。僕が好きなEDMって、泣ける要素が入ってる曲なんです。だから、盛り上がる4つ打ちの曲はちょっと違うなと思ってて。泣ける要素を煮詰めていくと、日本人っぽいもの。こないだも小田原囃子を見に行ったんですけど、和太鼓の重低音がめちゃくちゃかっこいいし、泣ける要素もある。それがhozzyの声ともすごく合うと思ったんです。今後の新しい藍坊主のオリジナリティが見つかるんじゃないかなっていうのを感じた曲ですね。
- EMTG:3曲目の「月にダッシュする僕の重力」は、hozzyさんらしい等身大の人物像が見える曲ですよね。
- hozzy:これは「魔法以上が宿ってゆく」ですごく時間を使いすぎちゃったので(笑)、そのぶん、ちょっと砕けた感じに書いた曲ですね。歌詞はまんま僕の生活です。酒飲んで酔っ払って歩いて帰って。家に着いたら、近所からピアノが聴こえるっていう。これも実話で、夜中の12時ぐらいに、いつも同じお宅から聴こえるんです。福山雅治さんの「家族になろうよ」をピアノを弾きながら歌ってて。こんな時間に大丈夫なの?って思いながら書きました。
- 藤森:同じメンバーだからっていうのも大きいと思うんですけど、歌の背景が目に浮かびますよね。きっとhozzyは帰り道にファミチキを買って帰ってるんだなって(笑)。
- hozzy:俺はファミチキじゃない。Lチキだな(笑)。
- 藤森:で、その終バスがなくなってしまって、駅から家までの歩いて帰る道は、たぶん前作の「降車ボタン(を押さなかったら)」でバスに乗りながら通った道なんですよ。その徒歩バージョン。あれは昼間の景色が多かったけど、今回は冬の夜道で。2枚のシングルで完結するみたいになってて、うまい歌詞ですよね。
- EMTG:12月らしいクリスマスソングにもなってますし。
- hozzy:曲自体が冬っぽい感じだったので、この季節にピッタリになりました。
- EMTG:そういう意味で、これ……ふたりがどう思われるかわからないんですけど、今回はとてもホーリーなシングルだなと思ったんです。
- 藤森:ホーリー?
- EMTG:神聖な感じというか。「魔法以上が宿ってゆく」でお互いの幸せを祈る感じとか、教会っぽさ、「アメーバ」で感じる人間の神秘みたいなところ。あとは、やっぱりコーラスのゴスペル感が『天使にラブソングを』みたいなイメージで……。
- 藤森:うれしいですね、それ。『天使にラブソングを』と比べてもらえたら、最高ですよ。大好きなんです。ミュージカルではないですけど、今回の作品は言葉と音がものすごく近いところで鳴ってて、ビジョンが見えやすい1枚だと思ってるんです。ジャケットとか歌詞カードにも僕は初めてトライしたんですけど。それも、本当に曲の背景に沿って描いていったら1枚の絵本みたいになっちゃったっていう感じだったので。
- hozzy:モーリー(藤森)が描いてくれた絵、マジで良かったです。メンバーが描いたものを褒めすぎるのもアレですけど……(笑)。トナカイも出てくるしね。
- 藤森:でも、ホーリー感ってその通りですね。使わせてもらいます(笑)。
- EMTG:こうなるとアルバムもすごく楽しみになってきます。
- hozzy:作ってますよ。もうアルバムのレコーディングも始まるし、近いうちに聴かせられると思います。
- 藤森:昨日の夜、hozzyが1曲送ってきたんですけど、それもメロが良くて。アルバムを出したらライブでもやりたいし、それも楽しみにしていてください。
藍坊主が自主レーベル“Luno Records”からの第2弾シングルとしてリリースする『魔法以上が宿ってゆく』は、新しい環境で再スタートを切ったバンドが、改めて音楽を鳴らす喜びに気づけたからこそ生まれた傑作だ。表題曲はhozzy(Vo)と藤森真一(B)による4年ぶりの共作。《もしあなたがいなかったら》と始まるメロディにはかつてない生命力が満ち溢れ、音の一粒一粒が世界の素晴しさを祝福する。さらに、人が生きる、その奇跡に喝采を贈る藤森作の「アメーバ」、hozzyの日常が垣間見られる「月にダッシュする僕の重力」と、シングル1枚に通うエナジー。その正体を探るべく、hozzyと藤森に訊く話は、失礼を承知で言うならば、まるで結成したてのバンドマンのように瑞々しかった。
【取材・文:秦理絵】
リリース情報
Kitrist
発売日: 2020年01月29日
価格: ¥ 3,000(本体)+税
レーベル: BETTER DAYS
収録曲
01.overture
02.Akari
03.矛盾律
04.鏡
05.さよなら、涙目
06.Lento
07.青空カケル
08.雨上がり
09.バルカローレ
10.羅針鳥
11.別世界
ビデオコメント
リリース情報
お知らせ
■ライブ情報
aobozu 年末忘年会 LIVE 2015
~ゆく波、くる波~
2015/12/12(土)CLUB CITTA’ 川崎
※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。
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