5回目のくるり京都音楽博覧会開催!
くるり | 2011.10.12
5回目を迎えた“くるり京都音楽博覧会”は、原点に戻って、都会の公園でのアコースティック・ライブを楽しもうというテーマの元に開催された。小田和正や石川さゆりなど、これまでに出演したアーティストの再参加もあって、5年間の集大成になると予想されていた。が、“まとめ”に入るどころかそれぞれにフレッシュなアプローチに挑戦して、音楽三昧の素晴らしい一日になったのだった。
すっきりした晴天の下、涼しい風が吹くという、これ以上ないイベント日和。最初に登場したのは、小田和正だった。以前、参加したときは、くるりの名曲「ばらの花」を岸田繁と歌ったが、今回はなんと細野晴臣やフジファブリックの山内総一郎らとはっぴいえんどの名曲中の名曲「風をあつめて」を歌う。この豪華セッションに、イベントはオープニングから大盛り上がり。
続く10-FEETも、アコースティック・セットで、いつもとは違う表情を見せる。
2年前、国民的キラーチューン「津軽海峡・冬景色」のフル・オーケストラ・バージョンでオープニングを飾った石川さゆりは、今回は「ウイスキーがお好きでしょ」でスタート。「津軽海峡・冬景色」は、前回とは対極のアコースティック・バージョンで歌う。オーディエンスのリクエストに即座に応じて、予定外の「天城越え」も披露。“音博”の自由な雰囲気をリラックスして楽しむ姿勢が、“5年目”を象徴していて印象的だった。
フジファブリックが登場すると、ギターの山内がくるりのツアーに参加していたこともあって、会場が沸く。
「シゲさん(岸田繁)に『お前もなんか歌え』って言われて、歌って誉められた曲をやります」と前置きして演奏した「ECHO」が最高の出来。ニューアルバム『STAR』でさらに大きな一歩を踏み出した気鋭のバンドらしい、潔いステージだった。
細野晴臣は、マンドリンの高田漣と二人で、いきなり代表曲「恋は桃色」から。アコギで弾くベースラインのグルーブの素晴らしさに、改めて驚かされる。バンドを従えて、「Hong Kong Blues」ではグルーブのマジックを見せつける。小田や石川たちと並んで、ずっと音楽シーンを牽引してきた実力者のスピリットを、痛快な思いで浴びたライブだった。
マイア・ヒラサワはスウェーデンからの参加。日系なので、京都での初ライブに感慨もヒトシオらしく、おおらかな持ち味を発揮。バイキング・ミュージックのような「Boom!」を、スケール感 たっぷりに歌って拍手を浴びていた。
斉藤和義はアコギ一本を抱えて、ひとりで登場。マウスハープ(ハーモニカ)を吹きながら、シンプルな弾き語りでライブを 進める。ニューアルバムからの「ウサギとカメ」など、独特の哲学に貫かれた歌を歌う。そんな斉藤のリアリティあふれる世界観が、後半 に爆発。みんなが聴きたい「ずっと好きだった」、続く替え歌「ずっとウソだった」で震災や原発事故をめぐる欺瞞に満ちた現状を暴く。斉藤にとっては、エンターテイメントもシリアスなボヤキも、同じ地平にあるのだ。そんなアーティストとしてのスタンスを託して最後に「歌うたいのバラッド」を歌ったのには、本当に感動した。
そしてトリはもちろん、くるり。最近の最高作「奇跡」から歌い始める。暮れてきた空に爽やかな風が吹き、ステージ後方の京都タワーが、一瞬の残光に照らされて浮かび上がる。このシチュエーションで聴いた「奇跡」の歌詞は、一生忘れることはないだろう。「BABY I LOVE YOU」まで、すっきりと進む。
「ありがとう、くるりです。お客さんが、むちゃくちゃぎょうさん入りましたね。今日は朝7時に起きて、ここまでアッという間。楽しい一日です。ありがとう。今年で5周年、やってよかったです」。岸田の素直な感謝の言葉が会場に沁みていく。きっとオーディエンスたちも同じ気持ちなのだ。
高田がバンジョーを弾く、デキシーランド・ジャズ風味のユーモアソング「京都の大学生」、岸田のアコギが光る「バンドワゴン」がよかった。
「今日はずっと感動しっぱなし。出演者全員に拍手を。それと、このイベントをやろうって言ってくれた京都市の小林さんが、来年引退されます。拍手を!」。岸田が再び感謝を述べる。
本編ラストの「宿はなし」は、この場所、この時間に歌われるのがとても似合う情緒たっぷりの曲で、集まった全員を包みこんでくれた。
アンコールは出演者ほぼ 全員が歌い継ぐ「リバー」。「ニッポンイチのお客さん、どうもありがとう」というくるりの言葉でイベントが終わった。改めて言おう。これは“音博”の集大成ではない。音楽を心から愛するくるりの、新しい一歩だ。
セットリスト
小田和正
- 東京の空
- 恋は大騒ぎ(w/くるり岸田&佐藤&田中、フジファブリック山内総一郎、bobo)
- 風をあつめて(w/くるり岸田&佐藤&田中、フジファブリック山内総一郎、bobo、細野晴臣)
- たしかなこと
- SHOES
- RIVER
- LOODY(w/つじあやの)
- recollection(w/つじあやの)
- 1.sec
- ウイスキーがお好きでしょ
- 津軽海峡・冬景色
- 緑のふるさと
- 転がる石
- 天城越え
- 朝花
- MUSIC
- STAR
- 水飴と綿飴
- 虹
- ECHO
- 恋は桃色
- Ramama
- Radio Activity
- Lonesome Road Movie
- Hong Kong Blues
- Roochoo Gumbo(w/くるり)
- The Wrong Way
- HUSH NOW
- 太陽
- It Doesn’t Stop
- Fragile
- 丘の上で
- Star Again
- Boom!
- アゲハ
- 空に星が綺麗
- ウサギとカメ
- ずっと好きだった
- ずっとウソだった
- 歌うたいのバラッド
- 奇跡
- 旅の途中
- 砂の星
- BABY I LOVE YOU
- 京都の大学生
- いっぽ
- バンドワゴン
- おはら節
- ブレーメン
- 宿はなし
- リバー (w/TAKUMA(10-FEET)、フジファブリック、細野晴臣、マイア ヒラサワ、斉藤和義)