UNICORN全国ツアー「ユニコーンがやって来る zzz...」。さいたまスーパーアリーナ、レポ!
UNICORN | 2011.10.31
今年のユニコーンの活動も終盤戦。全国のホールを回った後、ツアーはアリーナに舞台を移し、いろんな意味でバージョン・アップを果たしている。たとえば、テッシーに続いてEBIも空中に浮かんで歌って演奏。あるいはツアー途中に発売したニュー・ミニアルバム『Z ?』の曲をセットリストに追加したり。そんな新しいチャレンジもライブの数を重ねてぐんぐんグレードアップして、いよいよさいたまスーパーアリーナにたどりついたのだった。
2日目にはライブDVDの収録が予定されており、ユニコーンは今やノリノリの絶好調だけに「このタイミングで正解!」と、思ってスーパーアリーナに足を運んだら、まさかの大逆転劇が待っていた。
スーパーアリーナ初日の10月8日は、17時開演。
これまで何回か“ぐだぐだのユニコーン”を見てきたが、ここまでぐだぐだなのは復活後、初めてと言ってもいいくらい、キッカケは間違えるは、歌詞は飛ぶはの大混乱。名古屋日本ガイシホールから3週間空いたことでメンバーは段取りをすっかり忘れてしまっていて、ある意味、この日、観た人はラッキーといえるくらいの大笑いのライブが展開されたのだった。
それでも前半は、凄かった。特に2曲目の「頼みたいぜ」は、今年のアルバム『Z』収録曲で、この“ハネるリズムのロックンロール”をユニコーンはあまり得意ではなかったから、バンドにとっては“挑戦”という意味合いの濃いナンバー。それをツアーを重ねるうちに完全に自分たちのモノにして、彼らにしかできないグルーヴを生み出していたのが凄かった。
ところがその3曲後の「BLACKTIGER」で、大歓声の中、飛び上がったEBIが、2コーラス目の歌詞を忘れてしまい、さらには「君達は天使」で黄色いコロモをまとった“エビフライ”に扮したEBIが飛び上がった途端に歌い出しを逃してしまい、OTが「戻れ、戻れ!」とやり直しを指示。結局、OTはEBIが飛ぶ前のドラム・ソロを2回やることになって、後半のスタミナ配分が目茶苦茶になってしまった。ただし、EBIの飛び出しからやり直せばいいものを、川西がドラム・ソロからやり直し始めたことを受けて、OTが迷いなく渾身のドラム・ソロを再びやってのけたファイティング・スピリットには感激。全力で音楽と遊ぶユニコーンの底力を見た思いがした。それにしても明日の収録は大丈夫なのかぁぁ?!。
さて一夜明けてDVD収録日の10月9日16時、1曲目の「ライジングボール」を歌い出したOTの声が、少し枯れている。が、歌の中盤で「ウォーッ!」と雄叫びを上げたOTに、“ここ一番”に賭ける気迫がみなぎる。それをいち早く感じ取ったてっしーが「オーッ!」と応える。3週間のインターバルは、昨日一日ですっかり払拭され、バンドは王者の風格を取り戻した。さあ、今日はこちらも気合を入れて見ないと、な。
続く「頼みたいぜ」のOTのギター・ソロの前に、今度はEBIが「ハゥワーッ!」と叫ぶ。「ハヴァナイスデー」で川西が昨日以上のグルーヴを叩き出す。てっしーのシブいギター・ソロに続いて、阿部が対照的なエキセントリックなギター・ソロを弾くと、EBI、OT、てっしーの3人が阿部を囲んで盛り上げる。かっこいいじゃん! 早くも前半のハイライトとなった。
「昨日に引き続き、早いスタートにも関わらずたくさん来ていただいて、アリヤトヤース!。でも4時スタートって、どうなんスか? こっち的にはリハーサルな気分です。もしくは、トリじゃないフェス?」とOTが笑わせる。川西が「まだ明るーい」とひと言。「じっちゃん、明るくないよ」とすぐさまOTが返したとき、突然、「今日は絶対、いいライブになる」という確信が僕に訪れたから不思議なものだ。
4曲目「手島いさむ物語」でてっしーが、5曲目「BLACKTIGER」ではEBIが、今日は見事なフライングを決める。アリーナだけにかなりの高さで飛ぶのだが、恐れを知らぬ2人は空中で交差したりのアラワザも平気でこなして大喝采を浴びる。
また中盤にはホール・ツアーにはなかったEBIのアコースティック・コーナーが新設され、「いちじく」と「水の戯れ?ランチャのテーマ?」が一風変わったアンプラグド・セッションで演奏される。EBI以外の4人は、ダンボールなどありあわせの材料で自作したパーカッションと、コーラスでEBIをサポート。ユーモラスなアンサンブルでまたまた笑わせてくれる。全体に、ホール・ツアーと比べるとエンタメ色の濃いステージになっている。このアコースティック・セットを含めて、“アリーナだからこそ”似合うアイデアにこだわったライブ構成は、とても秀逸だ。
だが今回のアリーナ・ツアーの特長は、そうしたエンタメ・パートばかりではない。ホール・ツアーから一変したのは「オレンジジュース」だった。シーケンスから始まるロックは、シューゲイザー風な暗く激しいサウンドで貫かれる。フロント4人の分厚いコーラスと、川西のパワフルなドラムが、これまでのユニコーンになかった世界観を提示する。加えて、その世界観に合わせた演出が素晴らしい。燃え上がる炎と、赤を基調にした照明が、高い緊張感と迫力を生み出し、他のどのバンドにも真似のできない“至高のユニコーン・ロック”を現出させていた。
この「オレンジジュース」から始まる終盤怒涛のシークエンスは、ラストの「デジタルスープ」で大団円を迎える。今の日本に突き刺さるメッセージを持つ「デジタルスープ」の♪まるはだか叫び続け 心から愛を込めて♪という歌詞のリアリティが、5人のバンドマンによって体現される。この感動はアリーナ・ツアーを通じて何度も体験したが、感動の大きさはこの日もまったく衰えることはなかった。
アンコールの“阿部ショー”は、著作権の問題(笑)で残念ながら映像化はされないだろう。が、毎回オーディエンスの興奮を見事に笑いに転換させていたことを、感謝を込めて大事に心にしまっておこうと思う。
この日の模様を収録したライブDVDは、傑作になると断言する。楽しみにリリースを待て!!
【 取材・文:平山雄一 】
リリース情報
ZII
2011年08月31日
KRE
1. 手島いさむ大百科
2. レディオ体操
3. ぶたぶた (ZIIver)
4. いちじく
5. メダカの格好
6. 晴天ナリ
ディスク:2
1. デジタルスープ (Music Clip)
2. 頼みたいぜ (Music Clip)
3. Z LIFE (Music Clip)
4. SAMURAI 5 (Music Clip)
5. さらばビッチ (Music Clip)
6. ウルトラヘブン・スーパーマイルド (Music Clip)
7. AGONY (Music Clip)
8. 手島いさむ物語 (Music Clip)
9. Making of 手島いさむ物語 Music Clip
10. Uc Goes To Hollywood Part3 ~ Back to Japan
このアルバムを購入
セットリスト
- ライジングボール
- 頼みたいぜ
- ハヴァナイスデー
- 手島いさむ物語
- BLACKTIGER
- WAO!
- Maybe Blue
- いちじく
- 水の戯れ~ランチャのテーマ~
- レディオ体操
- パパは金持ち
- 君達は天使
- メダカの格好
- ブルース(RAP ver)
- さらばビッチ
- オレンジジュース
- HELLO
- Z LIFE
- 大迷惑
- デジタルスープ encore1
- 手島いさむ大百科(DJ TESHIMA)
- SAMURAI 5 encore2
- 晴天ナリ
2011.10.09
- ライジングボール
- 頼みたいぜ
- ハヴァナイスデー
- 手島いさむ物語
- BLACKTIGER
- WAO!
- Maybe Blue
- いちじく
- 水の戯れ~ランチャのテーマ~
- レディオ体操
- パパは金持ち
- 君達は天使
- メダカの格好
- ブルース(RAP ver)
- さらばビッチ
- オレンジジュース
- HELLO
- Z LIFE
- ヒゲとボイン
- デジタルスープ encore1
- 手島いさむ大百科(DJ TESHIMA)
- SAMURAI 5 encore2
- 晴天ナリ