ツアーファイナルを初の中野サンプラザ公演で締めくくる!
キマグレン | 2011.11.14
美しいガットギターのアルペジオを軸にしたスペイシーなサウンドに乗り、キマグレンの二人が登場。拍手が手拍子となり、いきなり眩しいライトが客席を照らすと同時に「蛍灯」が始まった。ドラム、パーカッション、ベース、ギター3本にキーボード。そこから繰り出されるリズムがからみあったブラジリアンなサウンドは、ロックバンド以上に洪水系だ。もうすでに頬を紅潮させているISEKIとKUREIが裸足でリズムをとる。体の底から湧き上がる躍動感。これがキマグレンのライブなんだなと、引き込まれた。
波音がしてMC。「ただいま!今年は日本も僕達自身も大変な年でした。ステージに立つ意味をずっと考えてきました。今日、ここで何かを感じてくれたらうれしいです。よろしく」とKUREI。サポート陣のアーティキュレーションが素晴らしい「リメンバー」。爽やかな8ビートの「サヨナラの朝」と 続き、ここでISEKIが口を開いた。「秋といえば、きのこ~!ヘイヘイ、僕のお魚ちゃんたち」と、ノリ不明なキャラで失笑を買っているのが可笑しい。
ちょっと呆れ気味のKUREIが「こんな夏の恋のストーリーもあるんじゃない?」と、「真夏の夜のシンデレラ」へ。マイナー系な音が新鮮だ。ティンバレスがフィーチャーされた超ファンキーな「TOMODACHI」もカッコいい。相変わらず何を言い出すかわからないISEKIのフリートークにハラハラしながら「女性目線で書いた」という「シェーデッド・クリーム」、大人気のラブソング「トコシエ」。
黄色いライトが印象的だった「向日葵に恋をした」からは後半の疾走へ。キマグレンのテーマソングといえる「海岸中央通り」は夏全開だ。ものすご いジャンプを見せたKUREIがシャツを脱ぎ捨てて「ENDLESS SUMMER」。ノンストップで「君のいない世界」、そして「LIFE」とけしかけていく。なんとKUREIは客席に降りて、通路を駆け回り、観客とハイタッチ。興奮の渦の中、「ハーイヤ~」の大合唱が響き渡った。本編ラストは「みんながくじけそうになったとき、必ず僕は言うよ。リセットして、またここか ら始めようぜって」と、「バースデイ・イブ」。キマグレンの一途な温かさが伝わる歌だった。
初めてのホール、しかもファイナルということで気負いがあったのか、本編の流れにはちょっと硬さがあった。また、ミュージシャンのプレイは素晴 らしく、楽器のみを考えたときのバランスは悪くないものの、歌に対する楽器全体のボリュームが大き過ぎて、歌詞が聴き取れないのが正直ストレスになった。特に、独特の周波数を持つKUREIの声の魅力が埋もれてしまっているのが気になった。が、「卒業の時」から始まったアンコールの5曲は、それを補って余りあるものだった。ガットギターがチェロに、ベースがコントラバスに、ドラムがブラシになったりして、全体の音が整理され、ISEKIとKUREIの心をこめた歌声をようやく十分堪能することたできた。二人の硬さもとれ、気持ちよく音楽を遊んでる様子に、こちらもなんだかホッとした。
「MAJIK IN THE WORDS feat. カサリンチュ」では、オープニング・アクトとしてずっと一緒にツアーを回ってきたカサリンチュもジョイント。爆笑トークから互いのリスペクトが垣間見られる楽しいセッションだった。個人的にいちばん印象に残ったのが、境界線のない理想の世界を歌った「ボーダー・グランド」。実にキマグレンらしい曲だ。最後にKUREIは、冒頭のMC「ステージに立つ意味をずっと考えてきた」に対する答えを、静かに語り出した。「いろんな答えを探してきました。僕ひとりで世界を救おうとか、日本をよくしようとかって思ってもやっぱり難しい。でも、笑顔の連鎖を作ることはできるんじゃないかと思ったんです。それを今後も、本気 でやりてーなと思いました!」と、最後は大きな声で宣言。オーラス、思わず楽しくなる「君が好きだ」が始まると、本当に会場は笑顔でいっぱいになった。 きっとその一人ひとりが、それぞれの方法で笑顔の連鎖にかかわっていこうと胸に期したのではないだろうか。
【 取材・文:藤井美保 】
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