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「SAKANAQUARIUM2011 DocumentaLy」ツアー最大規模幕張メッセ開催!!

サカナクション | 2011.11.18

 チームプレーの見事さが際立つライブだった。バンドのメンバーだけでなく、音響、照明、オイルアートや“ニンジャーライト”などの特殊効果を含めた“コンサートに関わる人間たち”の有機的な関係が、音楽を中心にしてインスピレーションに富んだ形を取る。もちろん、“コンサートに関わる人間たち”として圧倒的多数を占めるのは、見渡す限り幕張メッセのフロアを埋めた2万人のオーディエンスたちだ。おそらく人間同士がコミュニケーションを取る限界と思われる人数を、承知で挑むサカナクションのフレッシュなロック・スピリットが前代未聞の感動を呼んだのだった。

 開演前の巨大スクリーンには観客の生映像が映し出され、そこに水中の映像がかぶせられている。なので、ライブのタイトル “SAKANAQUARIUM”、“SAKANA”と“AQUARIUM(水族館)”を合わせた 造語どおりの世界に、オーディエンスたちは自然に引き込まれていく。この規模なので、初めてサカナクションのライブを観る人が多いと思われるが、彼らにとってこのバンドの世界観への導入は心強いものだったに違いない。ステージから映される客席の映像は、言ってみれば“メンバーから見える景色”でもある。その壮大なフロアの模様は、メンバーばかりでなく、オーディエンスにも勇気を与えるものであったに違いない。

 4つ打ちビートのボリュームが上がり、いよいよ開演だ。オープニング・ナンバーの「RL」に合わせて“R”と“L”の文字映像の洪水がフロアの興奮を誘う。5人が登場すると熱は一気に上がる。「いくぜー!」と叫ぶ山口一郎の声も、高ぶっている。「モノクロトウキョー」に続く「セントレイ」で、会場は一瞬にして大きな祭りの場になった。「Klee」まで一気に6曲。♪綺麗でなくていい 僕らしさ見つけたら それが全て 全ての始まりです♪という「Klee」のフレーズが強烈な印象を残す、素晴らしいスタート・ダッシュだった。

「すごい人!! 後ろのみんなも、聴こえてる? 僕たちは9月28日にアルバム『DocumentaLy』をリリースして、今日はそれの全国大会・・・じゃなかった(笑)、全国ツアーです。ワンマンでこんなに大きいのは、初めて。最後まで楽しんでいってください」と山口。バンドの演奏はしっかりしているが、しゃべるとまだ高ぶりが残っている。それはそうだろう。初の武道館からわずか1年で、ワンマンの規模は3倍になった。今回のライブは極力MCを減らして演奏に集中する構成だが、しゃべらなくてもサカナの気持ちは充分に伝わってくる。

 ここからしばらく、じっくり聴かせる曲が並ぶ。どっしりしたファンク「アンタレスと針」、変則的な5拍子をうまく活かしたサウンド・コラージュ 「years」、特に「流線」で、岩寺基晴(g)、草刈愛美(b)、岡崎英美(kyd)、江島啓(dr)の表現力のアップが如実に表われた。大きな会場では、細かなフレージングはあまり意味を成さない。逆に、グルーブの大きさや、フレーズの線の太さが問われる。5人はその課題を見事にクリアして、膨大な数のオーディエンスに自分たちの音楽を良い状態で届ける。

 またこの「流線」では、スクリーンにオイルアートが映し出される。60年代末からライブの演出に用いられてきたこの“ロックの伝統”とも言えるビジュアル・アートは、2枚のガラスの間に流したオイルを動かして幻想的な模様を生み出すシンプルなもの。それをDJプレイのように、リアルタイムで行なうのがサカナクションのライブの特徴だ。観客の興奮を現場で感じ取って、オイルをコントロールする。ある意味、ミュージシャンと同じレベルでライブにコミットするオイル・アーティストも、“チーム・サカナクション”の大切な一員なのだ。

 『DocumentaLy』の核と言える曲「エンドレス」では、“ニンジャーライト”が登場。これはコンピュータでLEDライトの動きや色を制御する、斬新な照明システムだ。ひとつの点に過ぎないLEDが、同時に動くことによって“面”や“形”を形成する。その様子は、このバンドの“チーム観”を暗示していて、非常に興味深かった。“チーム・サカナクション”は、ある時は点になり、またある時は面になって表現に関わっていく。

 人気だったの は、「『バッハの旋律を夜に聴いたせいです。』」だった。「セントレイ」や「ネイティブダンサー」でロックシーンの注目を集めたサカナクションだが、当時は“ダンスロック・シーン”の1バンドと目されていた。が、最新シングル「バッハ?」で、サカナクションを知った人にとって は、“ダンスロック”というジャンルよりも、良い楽曲と刺激的なアイデアを持ったバンドとして認識されている。実際、PVに起用された4体の“山口一郎人形”がダンサーとともにステージに現われると、フロアは爆発的に盛り上がった。

 ライブはアンコールまでパワフルに進む。サカナクションはダブル・アンコールの「目が明く藍色」まで、誠実に会場をリードしていった。それは、サカナクションが目指す新しいロックのディメンジョンに、“共同歩行者”であるオーディエンスを招くにふさわしい礼節だったように思う。

 ニンジャーライトといい、“山口一郎人形”といい、これはもう完全に“メディア・アート”の領域に踏み込んでいる。そうしたアイデアをためらいなく取り入れるサカナクションの独創的なライブ観に触れて、このバンドの持つ可能性の大きさに改めて驚かされた。次々と繰り出される演出は、ただのアミューズメントではない。サカナクションの新しいポップ観を示すのに必要なアイテムであり、同時にサカナクションの作品そのものでもある。

 僕はアルバム『DocumentaLy』にいくつかの謎の部分を感じていた。最大の謎は、音に“余白”が多かったことだった。実験的に作られた音楽のような手触りで、完成の鍵となるラストピースは、誰かに委ねられているような予感があった。その謎が、このライブで解けた。“誰か”とは、バンドの創造に不可欠なスタッフであり、創造を一緒に楽しむオーディエンスだったのだ。この日、山口は繰り返し観客とスタッフに感謝の気持ちを述べていたが、『DocumentaLy』というアルバムが完成するには、この“チームの力”が必要だったからだと思う。
最後に「いつかここで2DAYSできるように、いい音楽を作っていきます」と語る山口の言葉には、“1バンド VS 2万人”という奇跡のコミュニケー ションを成立させた歓びと自信に満ち溢れていた。

【 取材・文:平山雄一 】

tag一覧 ライブ 男性ボーカル サカナクション

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リリース情報

DocumentaLy

DocumentaLy

2011年09月28日

ビクターエンタテインメント

1. RL
2. アイデンティティ
3. モノクロトウキョー
4. ルーキー
5. アンタレスと針
6. 仮面の街
7. 流線
8. エンドレス
9. DocumentaRy
10. 『バッハの旋律を夜に聴いたせいです。』
11. years
12. ドキュメント
13. ホーリーダンス Like a live Mix

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