京都発の新生くるりの東京公演をレポート!
くるり | 2011.12.23
今年、岸田と佐藤は元々住んでいた京都に戻ったが、吉田とファンファンは京都のバンド“吉田省念と三日月スープ”のメンバーで、拠点を京都に移したくるりが出会った新たな才能に期待してライブを聴いた。
岸田が「おはようございます。くるりです」とひとこと言って、1曲目の「Bus to Finsbury」が始まる。この歌の♪キョウトからやってきた♪という歌詞がぴったりのシチュエーションに、思わずニヤリとする。
最初の嬉しいショックは、2曲目「ブレーメン」だった。ウイーンで録音されたアルバム『ワルツを踊れ』の代表曲で、吉田がなんとチェロを弾く。岸田のギター、佐藤のベースに、吉田のチェロ、ファンファンのトランペット、そして田中のドラムという編成の特長が十全に発揮される。以前、『ワルツを踊れ』のツアーの際は、コーラスやパーカッションでオーケストラ並みの音の厚みを演出していたが、吉田とファンファンの的を得た演奏によって少人数ながらサウンドに充分な温かさが与えられる。明るい倍音と、しなやかな音圧が、“京都のくるり”のサウンドだ。
中盤では新曲2曲を披露。「のぞみ1号」は、これもチェロのラインが印象的。「ペンギンさん」はアコースティック・ギターの高音を響かせて、ウクレレみたいなサウンドを出すユーモラスな曲。客席からは、そんなくるりならではのユーモアを楽しむオーディエンスから小さな笑い声が漏れる。
「今、東京の新木場でライブやってるじゃないですか。最近、僕らは京都に住んでて、今、オノボリさんなんですよ。前は“東下り”なんて言ってましたけど、今は“都落ち”です(笑)」。このゆるいジョークもくるりの魅力のひとつだ。
後半はベストヒット的な内容。「ハイウェイ」では岸田のアコギと、吉田のエレキギターが好対照を見せる。続く「ばらの花」ではファンファンがピアノでリフを刻み、岸田が自由奔放なコード展開で美しくエンディングを飾る。「Thank You My Girl」はフロントの3人がコ―ラスやボーカル・チェンジをして、ダイナミックなバンド感を醸し出す。
1曲1曲が短いので、テンポよくライブが進み、フロアから大きな拍手と歓声が次々に上がる。「ワンダーフォーゲル」のイントロでは、さらに大きな歓声が湧く。盛り上がりの中、「ワンダーフォーゲル」が終わって、残すは、あと1曲のみ。
と、ここで岸田が話し始めた。
「今日は、試したことのないセットリストでやっていて、予定だと次が最後の曲なんですけど、なんか短くて盛り上がりに欠けるから、もう1曲、追加します。あ、2曲やろう」。岸田がメンバーやスタッフと耳打ちしながらその場で曲を決めるのを見て、会場は大喜び。
だが、単純に 速いテンポで盛り上がる曲を選ばないところがくるりらしい。まず「男の子と女の子」でフロアをホンワカ温める。次の「リバー」もホンワカ・ナンバーなのだが、曲の後半にハードなセッションに持ち込んで盛り上げるあたりが、さすがだった。メンバー全員がクレイジーなソロを決め、ライブは大団円に向かう。とにかく音楽を徹底的に楽しもうという姿勢が快い。
「ほな、最後の 曲やりますわ。これで普通ぐらい疲れましたもん。疲れるかどうかが、ライブのバロメーター」と岸田がアコギでイントロのアルペジオを弾き出す。今年のくるりを語るなら、やはりこの曲、「奇跡」だ。丁寧に演奏するくるりに、ふと年末な気分になった。ああ、いい歌だなあ。
アンコールは3曲。「チアノーゼ」、「尼崎の魚」はシブイ選曲。ここでもメンバーのソロをピックアップして、5人の個性を強調する。中でも、京都音博 にも登場したファンファンのトランペットは、いままでのくるりにない色彩をバンドに加えて印象的だった。
そして最後の最後は「東京」。「またお会いしましょう。くるりでした」という岸田の言葉に、このメンバーで新曲のレコーディングに望む気迫を感じて嬉しくなった。来年のくるりが、とても楽しみだ。
【 取材・文:平山雄一 】
リリース情報
セットリスト
- Bus to Finsbury
- ブレーメン
- マーチ
- コンバットダンス
- 窓
- のぞみ1号
- ペンギンさん
- 旅の途中
- さよならアメリカ
- ハイウェイ
- ばらの花
- Thank You My Girl
- さっきの女の子
- ホームラン
- ワンダーフォーゲル
- 男の子と女の子
- リバー
- 奇跡 ENCORE
- チアノーゼ
- 尼崎の魚
- 東京