真骨頂的なナンバーを連発!各地ソールドアウトを記録したback number「スーパーツアー」の模様をレポート!
back number | 2012.01.11
2009年末のO-CRESTでの2マンと2010年夏のワンマン、2011年冬のO-WESTでのワンマン、そして、今回のO-EASTでのワンマン…。都度会場を満杯にし、そのキャパシティの大きさに比例するかのような、着実なる動員実績を見せてきた、back number。振り返ればここまで、間に違った箇所でのワンマンを挟みながらも、彼らの成長は、この渋谷円山町の一連のライヴハウスと共にあったように思う。
そして、この日の会場は、その渋谷円山町ライヴハウス群の中でも最大のキャパとステージの広さを持つ、O-EAST。ライヴ中、ボーカル&ギターの清水が何度か言っていたが、彼らにとって、まさにここは、<いつかは立ちたい憧れの場所>であった。その感無量さもあり、この日の清水は、途中歌詞が何度かトんだ。しかし、それをカバーすべくお客さんも奮闘。途中、彼が歌えなくなる箇所では、会場中の大合唱がその歌を完成させ、失敗し、曲を演り直した際には、みんなの「ドンマイ」の声援が、その後のプレイや歌への糧となった。言いかえると、それはまさにお客さんと共に作り上げていったライヴ。と同時に、彼らの歌が着実に、みんなの歌に変わっていることに改めて気づかされた晩でもあった。
切なさや健気さも交えた歌たちが、聴く者の胸を締めつける彼らの真骨頂といえるナンバーはもとより、これからや新しさも感じる楽曲がズラリと並んだニューアルバム『スーパースター』と共に回ってきた今回のツアー。このO-EASTには、今回のアルバムを機にした新しいファンを含む多くの人々が集った。
スペーシーなSEが場内に流れ、色とりどりのライトがステージ上を飛び交う。それ合わせてギュッとフロア前方の密度が上がる。今までの彼らのライヴではあまり見られなかった光景に、多少の戸惑いを覚える中、1曲目「こぼれ落ちて」のドラマティックなイントロが放たれる。と同時に会場全体が盛り上がりを見せ、ベースの小島も”行くゼ!!”とばかりに前までせり出し、会場を激しく煽る。1曲目からセンチメンタルさとドラム栗原による16ビートが走り出し、場内に躍動感が生まれていく。続いて、上昇感と切なさと共に、姿を消せない主人公の切なさや寂しさが会場に広がった「半透明人間」、メンバーも弾みながらプレイ。楽曲が擁しているポップ性や弾力が炸裂した、景色観溢れる「海岸通り」、会場を更なる明るさへと誘った「リッツパーティー」と、頭の4曲は、色々なタイプを配しつつも、4つ打ちのリズムでフロアの盛り上がりをがっちりと掴んでいく。
軽いMCを挟み、次の2曲は比較的しっとりとしたナンバー。パーッとした白色ライトをバックに、ダイナミズム観溢れる「stay with me」、サポート・キーボディストによるピアノ音が加わり、会場中にロッカバラードが染み渡った「西藤公園」と、無邪気に踊らせておいた先程とは違い、今度は歌物語へと会場を誘う。中盤ではアクセントを付けるような曲が続く。アコギを交え、あえてクールなトーンで独白のように歌を綴った「チェックのワンピース」、サビでは幸せ感や多幸感で会場をいっぱいにした、彼らの楽曲の中でも白眉な「はじまりはじまり」等がライヴに幅をもたらせる。
途中のMCでは、「カッコ悪くてもいいから、自分のうたを今後も歌っていきます。1人でも求めてくれる人が居るのなら」と、その口から放たれる朴訥さ溢れる言葉は、会場にいる多くのファンの気持ちを掴んでいく。
そして、上京ソングでもあり、どこか決意や自身の所信を滲ませつつも、振り返っちゃいけない力強い前向き感に満ちた「電車の窓から」、彼らの真骨頂の一つでもある、女心が代弁されているかのような歌、「幸せ」「思い出せなくなるその日まで」を連続して届ける。同2曲において楽曲の物語性や光景感を広げるのは、サポート・キーボードだ。作品同様、ストリングス的な音を重ね、会場の琴線に触れていく。そのアレンジも含め、2曲とも後半に向かうに連れての堰を切ったかのような、ブワーッと広がる感情の放出がたまらない。
ここからはラストスパート。彼らをリーダーに、会場がグイグイと歌物語へと惹き込まれていく。歌謡的ロックが歌世界と会場に一体感を生み、作品時には無かった大サビへの転調にもグッときた、「あやしいひかり」、そして、楽曲を再度演り直した上に、途中清水が感無量で歌詞をトばしながらも、それを会場の大合唱がレシーブ。まさにステージと会場とで作り上げた「スーパースターになったら」が、場内を大団円へと導く。
アンコール1曲目には、「はなびら」が飛び出す。同曲では舞い上がった清水が出だしをトチり、再度演り直し。とは言え、まだその舞い上がりは鎮まらないようで、楽曲の途中で歌詞がトんで歌えなくなるアクシデントも。”ここはもう一度演り直しか?”と思っていると、清水の代わりに会場中が続きを歌い、大合唱で同曲をお客さんが支える。これまで事ある毎に、「自分のことを歌っているだけ」と語っていた清水だったが、この瞬間には、<今や自分の歌がみんなの歌に変わっていたこと>に改めて気づいたのではないだろうか。そして、”ラストはやはりこんな明るい曲で”とばかりに、「そのドレスちょっと待った」が最後に会場に鳴り響く。同曲では、合わせて会場も終始大合唱。サビの上昇感と解放感を共有するように、みんな笑顔で幸せそうにハネている。
最後に会場に向け、「もう一回り男らしくなって帰ってきます!!」と力強い言葉を残してくれた清水。
いや、back numberに男らしさは似合わないと、個人的に思っている私としては(笑)、過去を美しいまま、自分の脳内ビデオで再生し続けるような、その歌世界はそのままに、ステージでは逆。どんな状況がきても、どっしりと落ち着いた対応で挑んでくれるだけでいい。
なんてことを偉そうに言うと、「じゃあ、見本を見せて下さいよ!!」なんて清水に言われそうだが、たぶん、自分も憧れの地に立ったら、同様、舞い上がっちゃうんだろうな…(笑)。
【 取材・文:池田スカオ和宏 】
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リリース情報
セットリスト
- こぼれ落ちて
- 半透明人間
- 海岸通り
- リッツパーティー
- stay with me
- 西藤公園
- チェックのワンピース
- はじまりはじまり
- 花束
- 電車の窓から
- 幸せ
- 思い出せなくなるその日まで
- あやしいひかり
- スーパースターになったら ENCORE
- はなびら
- そのドレスちょっと待った