レビュー
back number | 2019.02.19
back numberのラブソングは、なぜ魅力的なのか? その問いに対しては様々な答え方ができると思うが、「なかなか言葉にできない感情を描いてくれるから」というのは、多くのリスナーが納得するもののひとつではないだろうか。恋愛はひとりではできないし、相手との心の交わし合いが発展しなければ何も始まらない。しかし、現実はそんなに甘くはないというのは今更ここで強調するまでもなく、みなさんもよくご存知の通りだ。残念ながら大半の恋愛は成就せず、虚しい独り相撲のまま終わっていく。back numberのラブソングは、そういう現実に直面した時に湧き起こる感情を鮮やかに描いてくれる。
では、この素晴らしい描写力の源とは何なのか? そこで注目すべきなのは、《~だよな》だ。この語尾に代表される独り言のようなトーンの言葉は、back numberの歌詞の中で度々用いられている。“独り言のようなトーン”は、さらにわかりやすい言葉に置き換えるならば“ぼやき”と言ってもいいのだろう。恋する気持ちは泣くとか叫ぶといった目に見える身体的な現象にもダイレクトに結びつく一方、自分の胸の内だけでくりひろげられる出口のない自問自答=ぼやきとも非常に近しい。いや、むしろひとりで悶々としたまま過ごすことこそが、費やす時間の大半ではないだろうか。目には見えないものだが、紛れもなく恋愛のリアルであるこの部分を的確に描写しているから、back numberのラブソングはリスナーの心に優しく寄り添うことができているのだと思う。
そして、このかけがえない作風は、新曲「HAPPY BIRTHDAY」でも最大限に発揮されている。TBS系 火曜ドラマ『初めて恋をした日に読む話』の主題歌となったこの曲で描かれているのは、誕生日に噛み締める切ない感情だ。世界中の誰よりも自分の誕生日を祝福して欲しい人からの連絡が来ないことによって、否応無しに突きつけられる非常な現実……じりじりと待ちわびる時間が過ぎて行くほどに、できるならば認めたくない“片想い”という言葉が色濃く浮かび上がっていく描写がとても生々しい。主人公の心の声がユーモアを交えた自嘲気味なフレーズも交えていることによって、抱いている悲しみがホロ苦く映し出される様にも、“back number節”とでも言うべきものを感じられる。この曲も、たくさんのリスナーの眠れない夜を支えるものとなるに違いない。
【文:田中 大】
リリース情報
HAPPY BIRTHDAY
発売日: 2019年02月27日
価格: ¥ 1,000(本体)+税
レーベル: ユニバーサルシグマ
収録曲
1.HAPPY BIRTHDAY
2.エキシビジョンデスマッチ
3. ジャスティスインザボックス
4. HAPPY BIRTHDAY (instrumental)
5. エキシビジョンデスマッチ(instrumental)
6. ジャスティスインザボックス(instrumental)