“musium”をコンセプトに、スキマスイッチの多彩な世界が広がった忘れられない一夜
スキマスイッチ | 2012.04.27
そこは奇跡の作品が並んだ、至福のミュージアムだった。 最新アルバム『musium』を引っ提げてのスキマスイッチ全国ツアー、追加公演@NHKホール。客電が徐々に暗くなると、遠くから近づいてくる足音が聞こえてきた。やがて足音は止まり、重い扉が開く音と、高まっていく心臓の鼓動が会場に響き渡る。どっくん、どっくん。その鼓動はまんま、オーディエンスの胸の高まりとリンクしていく。次の瞬間ステージに光が当たり、マイクの前に立った大橋とピアノの前に座っている常田のシルエットが薄い幕に浮かび上がった。と同時に、放たれたのは「時間の止め方」。今ツアーの支柱であるアルバム『musium』の1曲目に収録されている楽曲だ。“準備はどうだい?そろそろいいかい?さあいこう!”と歌われる、始まりを告げるかのような同曲。サビの部分で薄い幕が落とされ、ステージ全景が露わになる。目に飛び込んでくる大橋と常田の姿。バックにはバンドのメンバーと、さらにその奥には『musium』のシンボルである巨大なフクロウのセット。わあー!と沸き起こる大歓声。この1曲で会場を埋め尽くしている3500人は、一気にスキマ博物館の中へと惹き込まれていった。
「どうも、スキマスイッチです。ミュージアムへようこそ!」。短いMCを挟んで2曲目は、キラーチューンの「ふれて未来を」。大橋がハンドマイクで前に出てきて歌い、オーディエンスは飛び跳ねながら頭上で高速手拍子。会場中が笑顔になる。「アイスクリーム シンドローム」では大橋がアコースティックギターを抱えて歌い、世界を広げ、「センチメンタル ホームタウン」では常田のしなやかなピアノと大橋のやわらかな歌声のアンサンブルがみんなの心をさらに解放する。「キミドリ色の世界」では、レアな曲が放たれた驚きと、曲自体が引き起こす興奮が交じり合い、曲が終わった瞬間、「キャー!」という嬌声にも似た歓喜の声が上がる。 「すごい盛り上がり方ですね。もう汗だくですよ、まだちょっとしか歌ってないのに(笑)。今回は『musium』というアルバムを作りまして、それを引っ提げてのツアーなんですけど、新しい曲ばっかりじゃなく、古い曲もたくさん用意してきました。しかも今回のツアーのためだけにアレンジして、いろいろ工夫して、歌はもちろん、照明、セット、そして僕らのこの衣装にいたるまで、全部“ミュージアム”というコンセプトのもと、準備してきましたので、最後まで楽しんでいってください」
そんな大橋のMC通り、特に中盤の聴かせるゾーンでは、レアな曲や懐かし目の曲が大胆にリアレンジされ、披露された。なかでも「螺旋」は歌が始まるまで何の曲だかわからなかったほど。ホーンとジャジーな常田のピアノ、大橋のオシャレで洗練されたヴォーカルが、アダルトなムードを醸し出す。気分は高層ビルの最上階から一人カクテルを飲みながら都会の夜景を見下ろす……そんな感じ(笑)。 「テーマはアーバンです。今まではニューヨークっぽいイメージでやってたんですけど、昨日アメリカから来ている人がいて、『ニューヨークはこんな感じですか?』って聞いたら、『違う』って言われて……(笑)」と大橋。常田が「反省したよね(笑)」と続け。会場がどっと沸く。それを受けた大橋が、「そう。だから今日からは“六本木っぽい”って言うことにしました(笑)。六本木っぽいアーバンです(笑)」と繋げる。さっきまでのアーバンな雰囲気から一転、超フレンドリーなMCだ。この後もしばらく、大橋と常田のおしゃべりは続き、会場に何度も爆笑が起こったのだが、このギャップもスキマの大いなる魅力だ。
後半は再び『musium』の曲を中心に進行。これはどの曲にも言えることだが、常田の繊細で表情豊かなピアノと、大橋のより磨きがかかったおそるべき歌唱力には本当に圧倒された。とりわけ「スモーキンレイニーブルー」は言葉を失うほど圧巻だった。常田のピアノが躍動し、アコギを掻き鳴らしながら歌う大橋の歌も艶やかに力強く弾けていく。バンドのメンバーもそれぞれが自己主張。全員が曲の中に入り込み、互いに戦っているような迫力を感じさせつつ、それでいて全員が強烈に1つになって溶け合い、エクスタシーに向かって登り詰めていく。その高揚感、恍惚感といったら!エンディングでは気持ちの高ぶったドラマーがペットボトルの水を頭からかぶり、スティックを両手でバキッとへし折り、常田は鍵盤の端から端まで指を滑らせる。ミュージアムにふさわしい、芸術的な演奏。もはや“圧倒的”を超えて、神がかってすら見えた一幕であった。
このあとも、「キレイだ」では、会場に激アツの一体感を生んだり、鉄板ナンバー「全力少年」では、その歌の前に、みんなで一緒に歌うデモンストレーション代わりにコール&レスポンスを会場に要求。その難易度の高さに、みんなで笑い転げながら歌ったりとハイライトのオンパレード。一際の盛り上がりを見せた同曲では大橋も高揚。アクティブな動きに交え、常田が弾くグラウンドピアノの上に立って歌う場面も。そして、最後はそこから大ジャンプ。ライヴはクライマックスを迎えた。そして本編ラストはオープニングでも歌われた、この日2度目の「時間の止め方」……かと思いきや、歌詞が変えられており、そこからはこんなメッセージが届けられた。“今日のこの景色を忘れないで。もし君が淋しくなったら、いつもの場所にいるから。また来てくれるかい?僕らもまた来るよ”。……スキマの2人のあたたかさに、思いっきり、やられた瞬間だった。
アンコールも含めて全24曲。オーディエンスを楽しませるために、徹頭徹尾、世界観にこだわり、なおかつ、ライヴの醍醐味に溢れたミュージアム。多彩で濃密な3時間はあっという間でもあり、一生忘れられない永遠の記憶が刻まれた夜となった。
7月9日からデビュー10周年イヤーに突入するスキマスイッチ。彼らの次なる動きにも期待せずにはいられない一夜であった。
【取材・文:赤木まみ】
【撮影:堀 清英】
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リリース情報
セットリスト
- 時間の止め方
- ふれて未来を
- アイスクリーム シンドローム
- センチメンタル ホームタウン
- キミドリ色の世界
- 太陽
- ボクノート
- 願い言
- 螺旋(らせん)
- 石コロDays
- LとR
- Andersen
- 雨は止まない
- さいごのひ
- ソングライアー
- 君の話
- スモーキンレイニーブルー
- キレイだ
- 全力少年
- 晴ときどき曇
- 時間の止め方(Ending ver.)
- ガレポンク<instrumental>
- ガラナ
- 惑星タイマー