初のホール公演を遜色なく展開。大成功を収めたback number渋谷公会堂ライブ
back number | 2012.05.15
この日、back numberは、彼ら初となるホールでのワンマンライブを渋谷公会堂にて行った。思い起こせば、私は彼らがホールでライブを行うことを、ずっと楽しみにしてきた。一体感やより近くに感じられる、ライブバンドならではの醍醐味をダイレクトに浴びれる、スタンディングでのライブの魅力も、もちろん捨てがたいのだが、それ以上に、きちんと1対1で彼らと向かい会い、より1曲1曲をじっくりと味わえる、今回のようなホールの方が、より彼らの歌世界に佇むには合っているように思っていたからだ。
この日のライブは、彼らがこの3月より行ってきた、「恋は盲目ツアー」の特別追加公演。ツアーファイナルであった渋谷AXを早期に完売したことを受けての公演だった。そして、その初めてのホールでの単独ライブを、彼らがワンマンライブを行ってきた際に、こだわっていたと思しき、この渋谷にて行なうことに、意義と意味、そして何かしらのこだわりを感じさせた。
チケットも早期に完売したと聞く、この日の公演は、当然ながら2階席までお客さんが満杯だ。
真っ暗になった会場に、扇動するかのようにマンチェスターサウンドのSEが鳴り響き、それにシンクロする形で、ステージ上のライトもまばゆく点滅。このような光景もホールならではの演出と言え、客席のボルテージも引き上がっていく。そんな音と光のページェントの中、ヴォーカル&ギターの清水、ベースの小島、ドラムの栗原、そして、サポートメンバーであるギター、キーボードの計5人がステージに現れる。
各人フォーメーションに着くや、栗原がダンサブルなビートを叩き出し、いきなり会場全体に躍動性を寄与していく。「最後までよろしくな!」とは清水。1曲目は「海岸通り」だ。4つ打ち16ハットのビートが、会場中を弾ませる。合わせて小島も跳ねながらベースをプレイ。それに合わせ起こる呼応も、どことなくホールならではの様相を見せる。おっ、今日の清水はハットをかぶっているではないか。まさか、これもホール仕様…(笑)?ノンストップでスリリングなサウンドが襲ってくる。続いての「こぼれ落ちて」に突入すると、ライトも先程のまばゆいカラフルさから不穏さを有した光類へとシフトしていく。清水の歌声に小島とサポートギタリストのコーラスが加わり、それが楽曲にふくよかさを与えていく。そして、ナチュラルなギターカッティングといきなりの歌い出しから「リッツパーティー」に入ると、どことなくほのかな幸せが会場に満ちていく。それに伴いオーディエンスたちの表情も柔らかさへと移行していく。と、オープニングはタイプの違う3曲を連続でプレイ。自分たちの楽曲の振り幅をしっかりと見せてくれる。
「ようこそ、渋谷公会堂へ。特別な一日にしたいと思う。良い景色を見せてあげられたらいいな。今日は一日楽しませるから、寄り添う形で付き合ってほしい」と清水。この一言で、オーディエンスの各々が、今後展開される彼らの歌物語の主人公や相手になっていく準備を始める。
ここからは、思い返し系のナンバーが立て続けに歌われる。会いたくてもまだ会いにいくことが出来ない思いがゆったりと広がっていった「春を歌にして」、アコギに持ち替えて歌う清水からこぼれ落ちる、「ごめんね、ごめんね」のフレーズが会場中の胸を締めつけた「風の強い日」、オルガンの音色が郷愁さを与え、じわじわと切なさを広げながらも、どこかこの先に待ってる明かりを感じさせた「ささえる人の歌」が、それぞれの切ない物語の中にオーディエンス各々を佇ずませる。
また、中盤に入ると激しいパートへと突入していく。特に「半透明人間」では、その楽曲の激しさに合わせ、メンバーのアクションにアクティブさが加わり、それが会場の熱狂の火に油を注いでいく。
「思い出として、忘れちゃいけないことを歌っているんだ。大事な曲がこの一年で増えたので、その忘れちゃいけない曲たちを、ここからは演ります」と清水。それにならい、「恋」「幸せ」「思い出せなくなるその日まで」「花束」と、メジャーデビューしてこの1年の間に発表された大切な歌たちが披露されていく。
前述のライティングの他にも、この日はホールならではの演出も幾つか用意されており、それらはしっかりと、時に会場を盛り上げたり、煽ったり、聴き浸らせたり、驚嘆させたり、感嘆させたりと、各歌物語へと会場を誘っていった。そして、その中の演出の一つとして特出して挙げられるのが、「はなびら」での舞台天井から舞い散る、無数のはなびらたちと言えよう。毎年この季節がくると、この歌を思い出しそうなくらい、多くの人々の琴線に触れてきた同曲が、舞い散る花びらと絶妙なマッチングを見せる。
「あとのうた」からは、ラストスパートがかかり、会場はさらに弾んだ方向へ。特に「あとのうた」でのサビの大合唱では、これまで以上の一体感や気持ちの同化を見せ、それが会場全体を高みへと引き上げていく。そして、本編最後の「スーパースターになったら」では、4つ打ちによる溢れる高揚と上昇気流が、回り出した巨大なミラーボールと共に、この上ない至福の時を会場全体に与えてくれる。清水による、「新しい自分になって帰ってくるから」の言葉を残し、彼らは一旦ステージを降りる。
アンコールは2曲。彼らのこれまでにはなかったタイプの、ほのかな幸福が会場をじわじわと包んでいった、5月30日発売の新曲「日曜日」。そして一変。”ラストはやっぱりこうでなくちゃ!!”の「そのドレスちょっと待った」が飛び出すと、先程のほのかな幸せから、いきなり場所がパーティー会場へと早変わり。ステージ、オーディエンスを巻き込んでの大団円を迎える。
と、まあ、初のホールながら全く遜色のないステージを味あわせてくれた彼ら。これまでよりもむしろリラックスしているかのように見えたのが、ことさら頼もしかった。
この日、同会場での成功を糧に、更に次の階段を登っていくであろう、彼らの次のステップにさらに期待がたかまった一夜でもあった。
【取材・文:池田スカオ和宏】
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リリース情報
セットリスト
- 海岸通り
- こぼれ落ちて
- リッツパーティー
- 春を歌にして
- 風の強い日
- ささえる人の歌
- 信者よ盲目であれ
- 半透明人間
- 恋
- 幸せ
- 思い出せなくなるその日まで
- 花束
- はなびら
- あとのうた
- スーパースターになったら
- 日曜日
- そのドレスちょっと待った
お知らせ
LIVE FACTORY 2012
2012/07/14(土)Zepp DiverCity TOKYO
HIGHER GROUND 2012 FINAL
2012/07/29(日)【福岡】海の中道海浜公園
ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2012
2012/08/03(金)【茨城】国営ひたち海浜公園
MONSTER baSH 2012
2012/08/25(土)【香川】国営讃岐まんのう公園内芝生広場
※その他ライブ情報・詳細はオフィシャルHPをご覧ください。