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“序盤から感極まってなんも言えねぇや!” BIGMAMAがZepp Tokyoに響かせた「約束の歌」

BIGMAMA | 2012.05.28

 アルバム『君がまたブラウスのボタンを留めるまで』を引っ提げて行なわれた、BIGMAMAの全国ツアー「母がまた母の日を終えるまで」。そのツアーファイナルが、母の日(BIG“MAMA”だけに!)に、Zepp Tokyoで行なわれた。チケットはソールドアウト! オーディエンスでパンパンに膨れ上がっているフロアへ向けて、開演前のアナウンスが流れる。「モッシュ、ダイブ、肩車、その他いろいろありますが、くれぐれも1.ケガをしない 2.ケガをさせない 3.廻りにダメージのある人がいたら助ける 4.母に迷惑をかけない。母へ最大級の愛情と感謝を込めて、ケガなく最後までお楽しみください!」と、ユニークなアナウンスに客席はもちろん大興奮だ。

 そしてライヴがスタートしたのだが、とにかく熱い! “序盤から感極まってなんも言えねぇや!”と金井政人(Vo&Gt)が叫んでいた通り、ずっとクライマックスを迎えているような熱狂と感動が続いていく。また、MCでは“1年に1回はバンド名を変えない?って会議に持ち込むぐらい、あんまりバンド名に愛着がない”と言って客席からブーイングを喰らったり(笑)、ついつい本筋と関係ないことを言ってしまい、“そんなことが言いたいんじゃないんだよ!”とか“言う順番間違えた!”と話が脱線していく様はかなりアットホーム。客席から笑い声も上がった。

 そんな雰囲気が突如急転直下。リズム隊が地の底で叫び声をあげるように豪快にグルーヴし始め、“中途半端なあなた達のために歌います”と「アリギリス」へ。“今日もどっかで誰かが電車に飛び込んでるんだって。もう勝手にしてくれよ! なるべく人に迷惑かけないように……”と話した後の「週末思想」は、バンドに優麗さを与えていたバイオリンの音色が、胸を掻きむしるようなシリアスさをもって響く。こう書くと、ただネガティブな曲をやっているだけのように見えるが、決してそうではない。“ここにいるみんなだけは絶対に死んでほしくない。ズルしたって、ヘラヘラ笑ってでもいいからさ、生きようよ──”そう告げてから曲へ突入したのだ。消えてほしいと思う奴に心の中でツバを吐き、大切な人にずっと生きていて欲しいと心の底から願う。そんな人間の身勝手さを全肯定するような深い愛情を、BIGMAMAの音楽は持っている。

 そして、金井が“アルバムの話をしてもいいかな?”と切り出した。

「去年、ミュージシャンが愛とか希望とか平和とかを、どんどん歌にしてるのを、俺は半歩出遅れて眺めてたんだ。かっこいいなって思ったり、それってちょっとどうなの?って疑ってみたり。でも、いざ自分が何か作りたいって思ったときに、俺もやっぱりそうだったんだ。何十万、何百万の人達の心を癒すような、希望の明かりで照らすような曲を作りたいと思って。それで曲を作ってみたんだけど、なんか全っ然カッコ良くなくて!(苦笑) 自分でも心に響かなくてさ。なんでだろうと思ったら、頭の中でずっとひとりの女の子が泣いてたんだ。そのたった一人を救えないまま、何十万人を救おうとする歌なんて俺には響かねぇわって。もう何年も前の話だけど、ひとつ約束をしたんだ。“君がまた歩き出せるような曲をいつか作るよ”って。でも俺は、その子が明日を選ぶので精一杯なときに逃げ出してしまって、約束を果たせなかったんだ。その約束を果たすことが、俺が音楽に対して誠実に出来る第一歩でした。その積み重ねで出来上がったアルバムです」。

 また、このツアー中に金井は喉を潰してしまったため、1本ライヴを延期している。そのことで彼は“人生のどん底を味わった”と。
「でも、どんなに自分のことを嫌いになっても、自分の作った曲だけはすごい好きだったんだ。それを作ってくれるメンバーもすごい好きだし、それを好きで集まってくれるみんなのことが本当に好きだってことに、改めて気づいたんだ! 本当にありがとう! 今日は誰がなんと言おうとベストライヴだ!!」。

 真っすぐな言葉に胸が熱くなった。客席からも大歓声と熱い拍手が送られている。

「……って言ってみたけど、来週のライヴでも“ベストライヴです!”って言ってると思うけど(笑)」。

 そこから続いた「I Don’t Need a Time Machine」と「秘密」では、オーディエンスの大合唱が一際大きくなり、Zepp Tokyoの空気を激しく揺さぶった。そして、“約束の歌です! みんなに負けないくらいデカイ声を歌うんで!!”と宣言した後、「until the blouse is buttoned up」へ。ステージ後方に飾られた特大サイズの服達がワイヤーで動かされて、まるでこっちに向かって手を振っているように見えた。

 アンコールは「母に贈る歌」からスタート。この曲が産まれた“落ち込んでいる母親に<またあなたの子に産まれたい>って言ったら喜んでくれるかなと思ったけど、恥ずかしくて言えなくて”というエピソードは、まさに「母の日」にふさわしいものだった。そして、初披露の新曲も登場! 浮遊感のあるギターと爆発的なドラムが絡み合う、今までのBIGMAMAとはひと味違う雰囲気を持ったこの曲には、ここから新しく何かが始まるような生命力や希望の光が漲っていた。熱狂に沸く客席を見ていて頭によぎったのは、金井が喋っていた女の子のこと。頭の中で泣いていたその子は、この素晴らしい景色を見て、笑ってくれているだろうか? きっと笑っているだろうと思ってしまうのは、何かと都合のいいように解釈してしまう人間の身勝手さだと思う。でも、それでもいいじゃないか。笑っていてほしい。本当に暖かい気持ちになれた最高のライヴだった。

【取材・文:山口哲生】
【撮影:高田 梓】

tag一覧 男性ボーカル ライブ BIGMAMA

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リリース情報

君がまたブラウスのボタンを留めるまで

君がまたブラウスのボタンを留めるまで

2012年01月25日

RX-RECOREDS/UK.PROJECT

1. beautiful lie,beautiful smile
2. #DIV/0!
3. 最後の一口
4. until the blouse is buttoned up
5. 荒狂曲”シンセカイ”~orchestra編~
6. Zoo at 2 a.m.
7. ”Thank You” is ”Fxxk You”
8. アリギリス
9. I’m Standing on the Scaffold
10. 週末思想
11. 秘密
12. 母に贈る歌

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セットリスト

  1. beautiful lie, beautiful smile
  2. #DIV/0!
  3. GhostWriter
  4. 最後の一口
  5. 荒狂曲“シンセカイ”
  6. Paper-craft
  7. Gum Eraser
  8. Lucy
  9. Lovescape
  10. Zoo at 2 a.m.
  11. “Thank You” is “Fxxk You”
  12. 走れエロス
  13. the cookie crumbles
  14. アリギリス
  15. 週末思想
  16. I’m Standing on the Scaffold
  17. かくれんぼ
  18. I Don’t Need a Time Machine
  19. 秘密
  20. until the blouse is buttoned up
ENCORE
  1. 母に贈る歌
  2. ダイヤモンドリング
  3. 新曲
  4. Neverland

お知らせ

■ライブ情報

ROCKS TOKYO 2012
2012/05/26(土) 新木場 若洲公園

ONEMAN TOUR 母がまた母の日を終えるまで 振替公演
2012/06/02(土)仙台 Rensa

SAKAE SP-RING 2012
2012/06/03(日)CLUB QUATTRO

rockin’on PRESENTS JAPAN CIRCUIT WEST「山崎死闘編」~6/9の日~
2012/06/09(土)大阪 なんばHatch

UKFC on the Road 2012
2012/07/25(水)大阪 BIGCAT
2012/07/26(木)名古屋 CLUB DIAMOND HALL
2012/08/01(水)新潟 LOTS
2012/08/02(木)仙台 Rensa
2012/08/14(火)新木場 STUDIO COAST
2012/08/24(金)福岡 DRUM LOGOS

rockin’on presents ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2012
2012/08/04(土)国営ひたち海浜公園

BAYCAMP 2012
2012/09/08(土)神奈川県・川崎市東扇島東公園 特設会場

※その他ライブ情報・詳細はオフィシャルHPをご覧ください。

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