新曲「夜の踊り子」も初披露された、サカナクションのツアーファイナルをレポート
サカナクション | 2012.06.29
サカナクションのライブはDJのプレイスタイルを踏襲していて、各曲のテンポやキーやグルーヴを踏まえて流れが構成され、オーディエンスがダンスしながらバンドとコミュニケーションを交わしやすいように作られている。それだけに、彼らのライブはアルバムと同等に“ひとつのトータルな作品”であると断言できる。この“SAKANAQUARIUM 2012 ZEPP ALIVE”は特定のアルバムを掲げたツアーではないので、セットリストは彼らの全作品の中からセレクトされている。それゆえ、ファイナルはこれまでのツアーの中でも飛び抜けてオリジナリティと完成度の高い内容を持つライブとなった。
パーカッシヴなBGMのボリュームがぐっと上がり、観客がそれに合わせてハンドクラップを始める。ステージの前面を覆った白いカーテンに、メンバー5人のシルエットが浮かび上がると、大きな歓声が沸く。ギターをコード・カッティングする山口一郎のシルエットが映ると、すぐにカーテンが切って落とされ、さらに大きな歓声が上がる。それを正面から受け止めて、サカナクションは1曲目「Klee」からロックバンドとして身に付けた貫録を、一瞬でアピールしたのだった。
最強のオープニング・ナンバーだ。このとき、僕には♪見えないもの 描きたくて 僕は言葉を使う♪という歌詞が強烈に焼き付いた。それはまるでこのライブ全体の“伏線”のようなもので、その後、何度もこのフレーズを思い出すことになる。
続く「アルクアラウンド」でギターの岩寺基晴とベースの草刈愛美がステージ前に出てきたところで、ZEPP TOKYOのフロアが最初の爆発を起こす。サビの前に山口が右手を上げてアオると、オーディエンスは大合唱を始めた。最強の2曲目だ。
江島啓一のドラムが間髪入れずに「セントレイ」へとバンドを導く。“ライブという旅”に共に出たバンドとオーディエンスは、たった3曲で一体になる。山口の歌う♪僕は宇宙♪という歌詞を共有しながら、そこにいる全員がそれぞれの鼓動を合わせることに成功したのだった。
暗めのライティングが効果的な「モノクロトウキョー」からは、サカナクションの独壇場になった。ファーストアルバム『GO TO THE FUTURE』からの「フクロウ」は、一曲の中に組曲的な要素を持つ曲で、DJとは異なるタイプの重層的な音楽表現で会場を覆い尽くす。彼らの評価を決定づけたアルバム『kikUUiki』からの「壁」は、全編照明は真っ暗なまま。暗闇で研ぎ澄まされたオーディエンスの聴覚を、ギリギリまで刺激する。この2曲はある意味、この日のメインと言ってもいい濃度の高いシークエンスとなった。
その後、曲は再びダンサブルになり、オーディエンスは覚醒していく。「『バッハの旋律を夜に聴いたせいです。』」では、キーボードの岡崎英美の素晴らしいコーラスが、山口の言葉を明瞭にこちらの耳に届けてくれた。
最新シングル「僕と花」も、すでに高い完成度で演奏される。そのイメージを増幅させるように動くコンピューター制御された球体のLEDライティング・システムは、サカナクションと共に進化してきた新しいライブ表現のひとつだ。その他にも、音響やレーザーやオイルアートなど、“チーム・サカナクション”は、このツアーの成果を誇るようにそれぞれのやり方でバンドの音楽とシンクロしていく。そこにオーディエンスのリアクションが加わって、初めてサカナクションのライブは完成するのだ。だからこのライブは、ただ“チーム・サカナクション”の結束を表わしているのではなく、本当の意味での“ライブの完成型”を提示していた。
それを特に強く感じたのは、「ルーキー」だった。「僕と花」に収録されている、石野卓球によるリミックスを強く意識したライブ・バージョンは、オーディエンスがバンドの意図をよく汲み取って合唱で参加。曲が進むに従って、ステージと客席が互いに盛り上げていくという理想的なパフォーマンスとなった。それに応えて、エンディングで山口が「ZEPP TOKYO!!」と感謝の言葉を大声で叫ぶ。♪行かないで 言わないで 思い出して♪という歌詞が、深く心に響いた。
そうして本編のラストは、とつとつとしたピアノから始まる「エンドレス」。♪見えない世界に色をつける声は僕だ♪という歌詞が、1曲目の♪見えないもの 描きたくて 僕は言葉を使う♪というフレーズとよく呼応する。このライブは、もしかすると、「歌詞をDJ的につなぐ」意図があったのかもしれない。またそれは、音楽としての連なりが見事だったから訪れた感覚だったかもしれない。あの真っ暗闇のシーンを含めて、チーム・サカナクションの集中力が到達させてくれた境地だった。今まで経験したことのないライブだった。
アンコールでは新曲「夜の踊り子」をリリースすることをその場で初めて情報解禁して、そのまま演奏。サカナクションがいかにライブをファンとのコミュニケーションの場として大切にしているかを痛感する。
ダブル・アンコールで山口は「これをやったらツアーは終わりだね」と名残り惜しそうに言い、「三日月サンセット」を歌って、両手でピースサインをして別れを告げた。それは、最新のライブが最高のライブになった瞬間だった。
【取材・文:平山雄一】
【撮影:石阪大輔(Hatos)】
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リリース情報
セットリスト
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OPENING
- Klee
- アルクアラウンド
- セントレイ
- モノクロトウキョー
- フクロウ
- 壁
- ネプトゥーヌス
- 『バッハの旋律を夜に聴いたせいです。』
- ホーリーダンス
- インナーワールド
- サンプル
- 僕と花
- boku to hana remix
- ネイティブダンサー
- アイデンティティ
- ルーキー
- エンドレス
- Ame(B)
- ライトダンス
- 夜の踊り子
- ナイトフィッシングイズグッド
- 三日月サンセット
お知らせ
JOIN ALIVE 2012
2012/07/21(土)いわみざわ公園
〈野外音楽堂キタオン&北海道グリーンランド遊園地〉
FUJI ROCK FESTIVAL’12
2012/07/28(土)新潟県 苗場スキー場
SPACE SHOWER SWEET LOVE SHOWER 2012
2012/09/01(土)山中湖交流プラザ きらら
RUSH BALL 2012
2012/09/02(日)泉大津 フェニックス
※その他ライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。