EMIにレーベル移籍して第1弾となるアルバム『INDEPENDENT』をひっさげ、“AI「INDEPENDENT」TOUR 2012”を行っていたAI。各地ソールドアウトで盛り上げてきた勢いをそのままに、6月22日、日本武道館でファイナルを迎えた。開演前、オープニングアクトとしてキッズダンサーのパフォーマンスが披露される。キッズとはいえ、ダンスはかなり本格的で、AI自身の“見て！　マチガイナイ！”という声がきこえてきそうだ。

　さて、開演時刻となり、いよいよ本編がスタート。1曲目は「INDEPENDENT WOMAN」。アルバムを象徴する、力強いメッセージにあふれたナンバーである。ドラムセットの上に現れたAIはアーミー調の衣装。男性ダンサーを従え、勇ましく登場した。AI自身もステップを踏みながら、歌とダンスでオーディエンスを惹きつけていく。2曲目の「DANCE TOGETHER」では手拍子が起こり、会場全体がビートのきいたサウンドに染まっていった。

　続いて「If」や「E.O.」など、懐かしい楽曲もバランスよく聴かせてくる。バンドのアンサンブルもダンサーとのコンビネーションもバッチリだ。アルバムのリリースインタビューでAIが「今回のツアーでは、久々にダンスもあり、バンドにも気合を入れて、ショーとして楽しめるものにしたい。もうね、バンドのメンバーも素晴らしいんです！」と気合十分に語っていたのを思い出す。それがリアルに再現されている喜びだろうか、バンド紹介は「Playboy」にのせて、実に楽しみながら行っていた。中盤には彼女が敬愛するマイケル・ジャクソンとホイットニー・ヒューストンの曲をメドレーで熱唱。「Human Nature」「I’m EveryWoman」、そして「Billie Jean」など、誰もが知っている名曲達を、堂々の歌唱力で歌い上げていく。

　時にマイケル風のダンスを取り入れたりして、本人も純粋に楽しんでいるようだ。中盤ではロングドレスに見えるようなシックな衣装で登場し、ダンスチューンでまとめた前半とは異なる側面で魅了。「ウツクシキモノ」「Story」をはじめ、3人のコーラス・シンガーをフィーチャーした曲でも、次々に深みのあるボーカルを聴かせてくれた。“オリちゃん”ことオリビアとはジュディス・ヒルとのコラボ曲「For my Sister feat. JudithHill（japanese cover version）」を見事にデュエット。オリビアも名前にちなんで、アドリブで名曲「オリビアを聴きながら」の一節を歌いあげ、場内を沸かせた。唯一の日本人コーラスのYURIとは「My Friend」をデュエット。即興で歌詞を変えるなど、絶妙なアドリブが飛び出す余裕も。密度の濃い時間は過ぎるのもあっという間で、気づけば本編最後のMCタイムへ。

「ホントにはやいね！　次の曲で最後。ビックリだよ！（笑）」観客からは“え?っ！”という残念がる声援が飛んだが、ラストナンバーとして「ハピネス」が歌われると、日本武道館は一気にハッピーなオーラで包まれた。AIが“みんなが笑ってくれたら一番嬉しい”と、震災後の祈りをこめて作った暖かい曲だ。暖かい空気のまま、ライブはそのままアンコールへ。観客が歌う「ハピネス」の合唱を受けて、再びステージに現れたAIは「結局戻ってきてしまいました（笑）」と笑顔。そして、まだまだ終わりたくない！……とばかりに、7曲も披露してくれた。

　アッパーな「Wavin’ Flag（Coca Cola CelebrationMix -Version AI-）」や安室奈美恵とのコラボでおなじみ「FAKE feat. NamieAmuro」、そして「I’ll Remember You」などが飛び出し、ラストは強いメッセージを込めた「I Wanna Know」で締めくくられた。観客の呼びかけに即答してしまう親しみやすいキャラクターはそのままに、終始ライブをコントロールしていくパワーは圧巻。もちろん、歌そのもので集まった人々から笑顔を引き出す包容力も実証し、ツアータイトル通り、AIのインディペンデントな逞しさに圧倒されたツアーファイナルとなった。

【取材・文：海江敦士】
【カメラマン：岸田哲平】