スガシカオが、ツアー『FUNK FIRE 2012』のファイナルを恵比寿リキッドルームで飾った。昨秋に、レコード会社からも事務所からも独立したばかり。しかも、『FUNK FIRE』は、これまで何度か行われてきたツアーだが、チケットに“オールスタンディング・ノーバラードの公演となります”と記載されているくらい、熱狂ありき。いろんな要素が重なったライヴ、見逃せるわけがない!　というわけで、当然のようにチケットはソールドアウトとなった。

　ライヴは新曲の『Re:you』で幕開け。しょっぱなから攻撃的である。続けて『ストーリー』。《ひとつづつ…　ひとつだけ…》のところでは、オーディエンスが一斉に指を挙げる。さらに『19歳』では、スガはハンドマイクでステージを駆け回り、フロアにマイクを向けて歌わせる。ここまでで、早くも理解できた。『FUNK FIRE』は全員で作り上げるものであることを、誰もが理解しているんだ、と。そして、その全員の心を一つにしているものといえば――スガが『正義の味方』の前に言った言葉に表れているだろう。「みんなファンクが好きですか?　俺も大好きです!」。この曲では、3人のファイヤーホーンズも現れ、華やかに盛り上げる。とは言え、基本の、スガ、田中義人(G)、坂本竜太(B)、岸田容男(Dr)、pochi(key)というバンド編成も、シンプルながらグイッと心身に入り込んでくるグルーヴを生み出していた。メンバーの誰もが、楽しんで演奏しているところも大きく関わっていただろう。オーディエンスだって、負けじと楽しんで踊らずにはいられない。

　続いては「先月亡くなったチャック・ブラウンに捧ぐ」という言葉からはじまった“ワシントン・ゴーゴー・ファンク”のコーナー。ここでは、カバーも含めて何曲も繋げたノンストップ・アレンジを披露。さらに途中では、「俺が背中を追い掛けてきた人」という紹介で、ゲストの浜崎貴司(FLYNG KIDS)が登場!　名曲『幸せであるように』を二人で歌ったかと思えば、『FIRE』では「まぐまぐまぐまぐ、まぐわりたい!」と叫んでみせるなど(!!)、息もバッチリだった。

　ここで長めのMC。独立して一人になってから、「ライヴハウスに電話を掛けてブッキングするところからはじめて。スガシカオなんですけどって言ったら、はぁ?って言われた(笑)」なんて逸話も。そして、自分のレーベルを立ち上げたことを報告し、大きな拍手が起きる。そこからリリースされる新曲『傷口』を、「『FUNK FIRE』はノーバラードって言っていたんだけど……やっていい?」と問い掛け、演奏。見事に空気がガラッと変わったのが、印象的だった。

　その後は怒涛の展開。『おれたちファンクファイヤー』からは、再びファイヤーホーンズが参加し、ラストは、スガ曰く「『FUNK FIRE』で聴きたい曲No.1!」である『イジメテミタイ』。濃厚な余韻を纏わせて、バンドはステージを降りた。

　当然アンコールが巻き起こる。間もなく出てきたスガが「やりきった、ファンクの神になった!」と宣言(!!)。そして「ここからはセックスで言うところの後戲です。僕は最後までやりますよ!」と、名曲『午後のパレード』、『黄金の月』と畳み掛ける。そしてラストは「今の俺にしか歌えない曲」と言ってはじめた、『Real Face』!　そう、スガがKAT-TUNに歌詞を提供した楽曲だ。これが、バリバリのハードロック・アレンジで、オイオイ・コールまで飛び出す!　そして、スガの「ギリギリで生きていくぜ!」という言葉でライヴは締め括られた。客電が点いても、拍手は暫く止まなかった。

　独立した状況が、タフに、セクシーに、そして何よりファンキーな彼の進化に作用したことは、間違いないだろう。コアでポップな唯一無二のスタンスが極められていく道程が、ますます楽しみになった。

【取材・文：高橋 美穂】