赤い公園が代官山UNITで行なったレコ発ライヴの模様をレポート!
赤い公園 | 2012.08.08
本年2月、黒盤『透明なのか黒なのか』でメジャーデビューした赤い公園。5月には、前述した黒盤と対になる白盤『ランドリーで漂白を』をリリース。オルタネイティヴでディープな曲を集めたという黒盤、ポップな歌モノを集めたという白盤という、デビュー作の2作で、楽曲の幅とバンドの懐の深さを印象付け、シーンの注目を集めたガールズ・バンドである。
そのリリース公演ライヴ“ランドリーで漂白を”が、7月21日、代官山UNITで行われた。
最初にステージに現れたのは、この日の特別ゲスト、チーナ。ボーカル&ピアノ、ヴァイオリン、コントラバス、ギター&マイクロコルグの4人に、サポートのドラムを加えた5人編成。ロック、ポップス、クラシック、オーケストラ、ジャズ、フォーク、カリプソをなどのワールド・ミュージック、そしてサウンド・コラージュと、雑多な要素をポップに仕上げた、カラフルなサウンドが特徴か。曲により異なる表情を見せるボーカルの存在感が、印象的であった。
20時10分過ぎ。赤い公園のメンバーが、1人ずつ、ステージに姿を現わした。フロア前方の密度が、グッと濃くなる。飛び交う歓声の中、ボーカルの佐藤千明が、空中を平泳ぎするようなジェスチャーで登場。中央にスタンバイすると、ピタリとSEが止まり、1曲目へ。ミディアム・チューンの「ランドリー」で、ライヴはスタートした。途中、右手に持っていた黄色いタオルを、はらりと落とす佐藤。ハンドマイクを握り、左手をひらひらさせ、髪を振り乱しながら歌う。エンディングでは、ステージ後方からの逆光の中央に仁王立ちし、「だーいーかーんやーーまぁああ!」とシャウトした。ニューウェイヴなキテレツさが印象的なナンバー「ナンバーシックス」では、佐藤は「今日は最後まで付いて来いよ、おめーら!」とシャウトして、観客をどんどん煽っていく。続く「世紀末」のイントロでは、メンバー紹介を試みるも、ドラムの紹介をすっ飛ばしてしまった。早々のアクシデントなのか計算なのか(?)に、観客、ざわざわ&笑い声。しかし、そんな客席の様子などお構いなし。4つ打ちからブルージーなギターフレーズへと展開するアップ・チューン「はてな」では、メンバー4人の、エネルギッシュなパフォーマンスが、ライヴのテンションをあげていった。4人が作り出す空間が、どんどんイマジネーションを広げていく。5曲目の「血の巡り」で佐藤は、♪痛いの飛んでけ 嫌いなあの子の頭に?♪ という歌詞に合わせ、左手を目の前にかざし、覗きこむようなジェスチャーを見せた。ヒップホップ然としたアプローチから、サビでR&B経由の美メロを響かせた「TOKYO HARBOR」では、このバンドの“メロディーの良さ”を発見。続いて披露されたバラードで、発見は確信に変わった。オルタネィティヴな演奏、斬新な楽曲展開や、そのライヴパフォーマンスから、前衛的な印象が強く、そこを称賛されるパターンも多く観られるが、この優しくふくよかなメロディーラインと、そこをしっかりを表現できる佐藤のボーカリストとしてのスキルに、このバンドのネクスト・ステージを予感した瞬間であった。
8曲、ほぼノンストップで飛ばした後、この日、最初のMC。佐藤がマイクをとった。「どうも、クリスティーナ・アギレラです」と軽いジャブ。観客、爆笑。佐藤が続ける。「クリスティーナ・アギレラじゃないです、赤い公園です。あと残りわずか……(観客からエ―ッ!のブーイング)……あとわずか、8曲くらいありますね(観客から笑い&拍手)」さらに、前からライヴは楽しかったけど、最近特にライヴが楽しくって、楽しくって、だから次の曲にいきたくない、次の曲がどんなにいい曲だったとしても! と、泣き真似を交えながら、独特の間合いでトークを展開。予定調和皆無のこのMCも、このバンドのライヴの魅力だろう。隣りにいた男性が「相変わらずだなー」と、笑っていたのがその証拠か。
ライヴは中盤へ。津野の“はぁ?”という吐息やダーン、ダーンと残響というダブのようなギターが印象的な「透明」、佐藤がトライアングルを持ち出し、三拍子+シューゲイザーのアプローチをみせた「副流煙」など、ジャンルレスなセンス&演奏のスキルを感じさせた中盤を経て、再びMC。佐藤が歯切れよく「♪ ピンポンパンポーン!♪」と叫び「赤い公園からお知らせがあります」という言葉の後にアナウンスされたのは、9月19日にファーストシングル「のぞき穴」を発売すること。最後に、佐藤は、こう締めくくった。「赤い公園、唯一のダンスチューン! 行くで! 代官山! のぞき穴!」放たれたのは、ダイナミックなアップチューン。ボーカルの佐藤は、早口でシャウトしながら(ラップというより早口シャウトに近かった)、ステージ向かって左側のスピーカーによじ登る。他の3人も、演奏しながらジャンプするなど、この日、1番のダイナミックなアクションを見せる。間奏では、メンバーが揃ってヘッドバンキング。佐藤は客席に背中からダイヴ。長い手が、綺麗に弧を描く様は、じつに絵になっていた。佐藤千明、カッコぇええええ! 佐藤はステージに戻ると、客席に背中を向け、リズムに合わせてダンス。ハイテンションのまま、新曲をぶっちぎった。
空間が、赤い公園のサウンドで、ドライヴしていく。ライヴは後半へ向かう。表面に“ちょっとでも”裏面に“たった今”と書かれたプラカードを持ち「これが出てきたってことは、何の曲がわかるよね? コールアンドレスポンスお願いするよ!」と「よなよな」へ。サビでは客席からスルー・ハンズが起こる。観客達の手の動きに合わせて、大きく手を振っていた佐藤。プラカードを持ちなおそうとして、落とし、びっくり顔。その直後、観客からはプラカードなしの、どんぴしゃのレスポンスが。この様子に、ボーカルの佐藤の、否、赤い公園のメンバー4人の笑顔がはじけた。
「I Love You Japan!」と佐藤。観客爆笑。佐藤が続けた。「こんな野蛮なライヴに最後までお付き合い頂いた皆さん、ありがとうございます」この言葉を受け、鍵盤ハーモニカから始まる「タヒチの夕焼け」を披露。続いて轟音で聴く者を包み込むディープなバラードで、ライヴで人気の曲「ふやける」へ。佐藤は下手のスピーカーに上り、しなかやかな肢体を伸ばして観客を煽っていたが、最後には、この日、2回目のダイヴを決めた。
最後は、ボーカルの佐藤千明とギターの津野米咲だけがステージ残り「何を言う」。津野のピアノと、ボーカルだけという構成。優しい歌声、温かなファルセットが響いていく。彼女の歌声から感じられる体温に、女性ならではの包容力を感じた。こういうエキセントリックとは相反する表現力が、これからこのバンドの中で、どう展開されていくのか、じつに興味深い。たぶん、エキセントリックな部分もますます増大させながらの展開になるのではないか。そう思わせる懐が、このバンドにはあると感じさせるライヴだった。
暗転したままの会場に、ニューシングル「のぞき穴」のミュージック・ビデオが流れる。インパクト大の映像に、観客、ちょっとだけ茫然。そのビジュアルについては、オフィシャルホームページで確認してみて。
でも、何度も言うけど、赤い公園は“あれ”だけじゃないし、もちろん“これ”だけじゃないよ。
あれが何か、これが何かは、あなたが直接触れた“赤い公園”で、判断すればOK。
それがどんな“赤い公園”であれ、彼女達の実力に、間違いはない。
【取材・文:伊藤亜希】
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リリース情報
セットリスト
赤い公園リリース記念公演
「ランドリーで漂白を」
2012.7.21@代官山UNIT
- ランドリー
- ナンバーシックス
- 世紀末
- はてな
- 血の巡り
- TOKYO HARBOR
- 私
- くい
- 塊
- 透明
- 副流煙
- のぞき穴
- よなよな
- タヒチの夕焼け
- ふやける
- 何を言う
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