レビュー
赤い公園 | 2018.02.14
2018年がスタートしたばかりの1月4日、立川BABELでライブを行った赤い公園は、津野米咲(Gt・Vo)、藤本ひかり(Ba)、歌川菜穂(Dr)の3人が、それぞれボーカルを取りながら新曲ばかりを披露したと言う。私は残念ながら見られなかったのだが、見た人たちは興奮気味に彼女たちの新たな可能性を感じたと話してくれた。それから間もなく、昨年脱退した佐藤千明(Vo)がソロ活動を開始するとニュースが流れた。4人はそれぞれ新しい道を歩みだしている。
高校の軽音楽部で藤本・歌川・佐藤が組んでいたバンドに、1年先輩の津野が加わり赤い公園となったのは2010年。その瞬間からどんなマジックが起きていたのかは、折しもメジャーデビュー5年を経てコンパイルされた初のベスト・アルバム『赤飯』を聴けばわかる。デビュー・ミニ・アルバム『透明なのか黒なのか』から最新作『熱唱サマー』まで、リリースしてきた中から選りすぐった22曲を収録し、彼女たちの5年の足取りをたどることができる。それは、この4人だから生まれたマジックであり、彼女たちが他に類を見ないユニークなバンドであることを改めて痛感させるものだ。
津野の書くポップにしてアグレッシヴな曲を、佐藤が伸びやかに歌い、藤本と歌川がしっかりボトムを支えている。通好みといってもいい曲だが、ライブでは媚なく攻めてオーディエンスを熱狂させ、時には隙を見せて惹きつける。それがどんなものかは、『赤飯』を聴けば一目瞭然。初回限定盤にも同梱されるMV集や、4人での最後のライブとなった『熱唱祭り』の映像を見れば、更にリアルに伝わるというものだ。若いガールズ・バンドが抱かれがちな甘っちょろいイメージを一蹴する存在として、彼女たちは前人未到の道を切り開いてきた。
『赤飯』の22曲は、彼女たちを見続けてきたものとしてはどれも忘れがたい。ライブでは定番の「のぞき穴」、柔らかなバラードにして現代音楽めいた展開もみせる「風が知っている」、ヘヴィメタリックな「絶対的な関係」と初期のシングルは持てる力全開で畳み掛け、ポップな曲にパンク魂が潜む「KOIKI」、佐藤の歌を聴かせた「Canvas」、そしてシングル3部作の最後を飾った「journey」が、≪間違いだらけの答えになれ≫と背中を押す。新曲を発表するたびに4人が秘めたポテンシャルに驚かされ、底知れぬ推進力に圧倒されてきた。そんな彼女たちの存在感を再認識させるのが、この『赤飯』である。
赤飯は女の子が一人前になった祝いにも食される。この『赤飯』も4人の新たな門出の祝いだ。大きな試練を乗り越えて、佐藤千明と赤い公園の3人は更に進んで行く。
【文:今井智子】
リリース情報
赤飯【熱唱祭り盤】
発売日: 2018年02月14日
価格: ¥ 5,000(本体)+税
レーベル: ユニバーサルミュージック
収録曲
[CD]
01.NOW ON AIR
02.KOIKI
03.今更
04.サイダー
05.恋と嘘
06.ナンバーシックス
07.黄色い花
08.風が知ってる
09.塊
10.闇夜に提灯
11.のぞき穴
12.ひつじ屋さん
13.西東京
14.絶対的な関係
15.カメレオン
16.Canvas
17.ランドリー
18.透明
19.デイドリーム
20.交信
21.東京
22.journey
[DVD]
東京:Zepp Diver City TOKYO「熱唱祭り」公演
01.カメレオン
02.AUN
03.急げ
04.ジョーカー
05.塊
06.西東京
07.のぞき穴
08.絶対的な関係
09.今更
10.サイダー
11.恋と嘘
12.いちご
13.プラチナ
14.私
15.journey
16.勇敢なこども
17.交信
18.BEAR
19.最後の花
20.闇夜に提灯
21.KOIKI
22.黄色い花
23.ほら
アンコール
24.セミロング
25.スーパーハッピーソング
26.楽しい
27.NOW ON AIR