KREVA が9月8日(クレバの日)にさいたまスーパーアリーナで行なった「908 FESTIVAL」。毎年この日にはリリースやライヴなど、何かしらのアクションを起こしていた彼だが、今年は1万3000人のオーディエンスを動員する、KREVA史上過去最大級のイベントを開催することとなった。

　入場時には、KREVAがdj908として、彼の相棒である熊井五郎と共にDJでオーディエンスを出迎え、爆破の特効を合図に本編がスタート！　1曲目は「PROPS」。KREVA、KEN THE 390、LB、HI-SO、KLOOZ、サイプレス上野の6人がステージを縦横無尽に暴れ回る、ど派手な幕開けとなった。そして「挑め」で、MCUとLITTLEが早くも登場！　立ち上がる炎と共に、KICK THE CAN CREWの3人がマイクリレー。“頭っからヤベぇだろ「908フェス」！”という煽り通り、序盤からオーディエンスは興奮しっぱなしだ。

「908 FESTIVAL」は、“MAIN STAGE”と客席後方に設置された“SECOND STAGE”の2ステージ制で、“SECOND STAGE”のトップバッターとして現れたのはSONOMI。“クレさんのおかげで、たくさんの人の前で歌うことが出来て幸せです！”と、客席を360°見渡せるステージで、心地よい歌声を届けた。

　続いてメインステージに登場したのは、「STRONG」でKREVAと共演した雅-MIYAVI-。挨拶代わりに「WHAT’S MY NAME」を披露し、圧巻のスラップギターでいきなりオーディエンスの度肝を抜く。“同じ日本人としてKREVAさんを尊敬してるんで、呼んでもらって嬉しいです”と話した後、「DAY 1」へ突入したのだが、この曲の途中でKREVAが登場！“ここで出てくるとは思わなかっただろ!?”と、周りを驚かせ「STRONG」へ。高速ラップVS超絶ギターの熱いバトルが、会場のボルテージを更に上げていった。

　サブステージでのAKLOのパフォーマンスを経て、メインステージのスクリーンに映されたのは、KREVAが音楽監督をつとめた音楽劇「最高はひとつじゃない」のダイジェスト映像。その途中でMummy-DとKREVAが登場し、ダンサーを従えて「中盤戦」を共演。タイトル通り、ライヴもまさに中盤戦へと突入していったのである。また、映像の最後には“2013年、「最高はひとつじゃない」……再び……か!?”という意味深な告知もあった。

　サイプレス上野がサブステージでメドレーを繋げて盛り上げた後、メインステージにKREVAが、柿崎 洋一郎(key)、岡 雄三(ba)、近田潔人(Gt)、白根佳尚(Dr)の4人を引き連れ、「KREVA Band」として登場。“尊敬してるKREVAさんのフェスに出れて嬉しいです！”とジョークを交えつつ、「瞬間speechless」「音色」といったミディアムチューンを届ける。その後、SONOMIを呼び込み「ひとりじゃないのよ」「NO NO NO」を披露し、最後にこの日が誕生日だったSONOMIにサプライズで、ハッピーバースデイの歌が会場全体から送られた。

　サブステージで、フリースタイルラップを交えたKEN THE 390のアクトを終え、いよいよメインステージに大トリのKREVAが登場。熊井五郎をDJに迎え、「OH YEAH」「Have a nice day!」、そして銀テープの特効＋ダンサーを従えての「成功」を、立て続けに披露。そして、“今日、こっち(MAIN STAGE)でも、あっち(SECOND STAGE)でも超頑張ってくれたナイスガイ”と、KEN THE 390とAKLOを呼び込み「No More Mr. NiceGuy」へ。KREVAは、ラップはもちろんのこと、この曲ではボコーダーも操り、メロウな雰囲気を更に盛り上げた。

「いつか「908フェス」を本当にバカでかい野外フェスにして、5万人とかケチくさいこと言わずに10万人ぐらい集まっちゃうようなイベントに出来たらいいなと思います。そのときは今日呼びたかったけど、来れなかった奴も呼びたいよね。AAAの日高(光啓)、坂本美雨ちゃん、あと三浦大知ね。他にも、久保田利伸さん、吉井和哉さん、それに、Perfumeだって、RHYMESTERだって、スピッツだって呼びたいし。それで俺に興味ない人にも俺を見てもらって、俺がこんなに素晴らしいファンに支えてもらってるのを見てもらいたいわけですよ。今日の「908フェス」はどうですか!?──(オーディエンスの大歓声)──ねぇ？　こんなに楽しいのに。なんかさ、来れなかった人達も、もう、来ちゃえばいいのにと思いません？」

　そんなMCの後に、草野マサムネとのコラボ曲「くればいいのに」。“今日は来てないからみんなが声を届かせるんだよ！”とオーディエンスにマイクを渡し、会場中が大合唱していると、途中で三浦大知が登場！　この日、彼は神戸で仕事をしていたのだが、スケジュールを調整してなんとか駆けつけることが出来たとのこと。“来るに決まってるじゃないですか！(三浦大知)” “あざーっす!!(KREVA)”そんなやりとりに会場のテンションも上がりに上がる。その後、最新シングルにして、今年の夏フェスでビッグアンセムに育て上げた「Na Na Na」を披露。ラストは「基準」をビシっと決め、本編が終了。アンコールとして「C’mon, Let’s go」がフロアに流れ始めると、サブステージにKREVAが登場！　再びフロアに大合唱が巻き起こり、ハッピーな空気に包まれたまま「908 FESTIVAL」は幕を降ろした。

　とにかく“盛り上げる”ということに対して、徹底的にこだわり抜いたイベントだった。まず、基本的にKREVAはステージに出っぱなし。サブステージのアクトはだいたい10分前後だったのだが、その間にスーツやタキシードなど、様々な衣装に着替えているので、裏でもほとんど休みなし。自身の多種多彩な魅力をセクションごとに切り分けたり、サプライズを仕掛けてみたり、ありとあらゆる手法でフロアを“盛り上げ”続けた。そして、若手がパフォーマンスする時間を設けたり、自身が共演することで、日本のヒップホップシーンを“盛り上げていく”というトップランナーとしての使命や決意、そして、それに果敢に挑んでいく姿勢を感じることが出来た。

　3時間超えの「908 FESTIVAL」は、KREVAのサービス精神とチャレンジ精神を、絶妙なバランス感覚で昇華した“最高のエンターテイメントショー”だった。毎年9月8日の「国民的行事」になればいいのにと、結構マジで思っている。

【文：山口哲生】