超満員の中、何もかも忘れさせてくれる享楽さに満ちていたTHE PREDATORSのツアーファイナル
THE PREDATORS | 2012.10.29
この日のライヴの中盤。山中さわお(Vo.&G./the pillows)、JIRO(B./GLAY)、高橋宏樹(Dr/Scars Borough)からなるTHE PREDATORSのメンバーは、楽器をそれぞれ持ち替え、さわおはドラム、JIROはギター、高橋はヴォーカル兼ベースを担当し、新曲「Trade」を披露した。(アンコールでもやったので、この日は同曲を計2回披露)。サービス精神旺盛なバンドの懐の深さを見せるかと思いきや、その懐からは、文字通り何が出てくるかわからない(笑)。事実、ステージと観客の距離感はさらに縮まっていた。なんてズルいバンドなのだ。
前作でナカヤマシンペイ(ストレイテナー)から高橋にドラムが交替し、2年ぶりとなる4thアルバム『Monster in my head』を発表した彼ら。そのツアー・ファイナルとなった、この日のZEPP TOKYOは、ソールド・アウトの満員状態で凄い盛り上がりだった。もっと踏み込んで言えば、観客の表情はワクワクするようなピュアな笑顔に満ち溢れていた。それこそがバンド側が見たかった景色なのかもしれない。音楽活動する上で避けて通れない苦味や陰の部分を骨身に沁みて分かっているのだ、この人たちは。だからこそ、このバンドに於いては、あえて明るく、楽しく、ポジティヴな方向へ迷いなく振り切れることができる。その場で考えてしまうシリアスなメッセージ性よりも、何もかも忘れさせてくれる享楽さが、このTHE PREDATORSのライヴには詰まっているのだ。この味は、若手バンドにはなかなか出せないだろう。そう思わせる無敵のロックンロールが、この日のライヴでも終始大爆発していた。
最新4thアルバムの冒頭曲「God Game」で緩やかにスタートすると、矢継ぎ早に曲を演奏していく。元来ストレートかつポップな曲調が多いだけに、このテンポ感のある進行が実にいい。中盤手前にはTAKURO(GLAY)から「遊び心と硬質な音、攻めてる曲」とメールで感想をもらい、さわお自身も「the pillowsでは絶対やらないタイプの曲!」と念を押して始まった「Crazy Babar」、オリエンタルなメロディが気持ちいい「Monster in my head」を立て続けにプレイし、前半戦のハイライトと言える熱狂ぶりで観客に受け入れられていた。また、後半戦の「Hurry up! Jerry!」、「LIVE DRIVE」、「爆音ドロップ」、「WILD TIGER」の4連射で超アッパーに畳みかける攻めっぷりも圧巻だった。加え、2回のアンコールに応えてくれた彼ら。ダブルアンコールのラストには、このバンドを始動させるきっかけになったNIRVANAのカヴァー曲「Breed」で鮮やかに締め括ってくれた。
「このツアーが終わって、気持ち良く本体に戻ることができます」と、ライヴ終盤のMCでJIROは力強く語った。THE PREDATORSとは、メンバー自身が第二の青春を謳歌するために必要なオアシス(憩いの場)なのかもしれない。そこには音楽をやる上で忘れてはいけない遊び心や無邪気さなど、大切な宝物がたくさん隠されている。本体のバンドでは見ることができないスペシャルな素顔の数々・・・そこには多くの人を虜にさせる中毒性がたっぷり潜んでいた。
【取材・文:荒金良介】
リリース情報
セットリスト
2012 TOUR "Monster in your head"
2012.10.12@ZEPP TOKYO
- God Game
- BRAIN CALLY
- ROCK’N’ROLL LAY DOWN
- Desperate Donor
- TRIP ROCK
- THIS WORLD
- Crazy Babar
- Monster in my head
- SHOOT THE MOON
- Mission
- Trade (新曲/パートチェンジ)
- Dizzy Life
- Risky Revolution
- Sleepy Dragon
- Hurry up! Jerry!
- LIVE DRIVE
- 爆音ドロップ
- WILD TIGER
- Country Roads (カバー)
- Monkeyshine
- Tyrant
- Trade (新曲)
- Breed (カバー)