BONNIE PINK、東京の夜を魅了した東京公演をレポート!
BONNIE PINK | 2012.10.30
7月にリリースしたアルバム『Chasing Hope』をひっさげ、9月から10月にかけて全国9ヶ所10公演で行われた『BONNIE PINK TOUR 2012』。ツアーも後半戦、東京公演2日目となる10月8日の日本橋三井ホール。1曲目の「Stand Up!」から華々しいムードのオープニングで、民族調の赤い衣装にギターを抱えて歌うBONNIE PINKと、パープルやブルーやピンクの淡く柔らかな色に彩られたステージに迎えられ、会場の空気も一気に晴れやかに。舞台のあちこちには緑の蔦が絡み、中央には大きな白い鳥のオブジェも。まるで都会のジャングルのようだ。
「楽しむ準備は出来ていますか、Are you ready TOKYO?」と煽りながら2曲目の「Animal Rendezvous」に突入すると、手を叩きリズムを刻みながら楽しそうに歌うBONNIE PINK。鈴木正人(B)、奥野真哉(Key)、八橋義幸(G)、白根賢一(D)からなる迫力のバンド・サウンドに、彼女の凛として涼やかな歌声がパワフルに伸びていく様は本当に気持ち良かった。
「昨年3月の震災は私にも精神的打撃があって。その余波で積極的に曲を書くスイッチが入らないまま昨年を過ごしていました。だけどそのぶん自分を振り返る時間も多くて。(デビューから)もう17年、音楽を通して人にパワーや元気を与えられたらと思い直しました」と中盤にはこんなMCを。そして「被災された方に明日への力とか一歩踏み出すものを、と思い出来た曲です」と鍵盤弾き語りで「My Angel」を披露した。力いっぱい生きて行こう、そんなストレートな言葉だってBONNIE PINKの音楽世界の中で伝えられれば、気負わないさり気なさで響いてくる。
そうしてアルバム『Chasing Hope』に込められた真摯な想いをたっぷりと受け取りつつも、このツアー、このバンドのメンバーならではのセッションや演出でも楽しませてもらった。「A Perfect Sky」はジャズっぽいアレンジが格別だったし、悪い男のテーマソングを書いたという「Bad Bad Boy」では「Bad Bad Boys」と命名されたバンドのメンバーたちが曲の合間にキャラ全開で思い思いの言葉を叫ぶなどして盛り上がる。
終盤、お客さんの合唱がピースフルな場面を生んだ「Tiger Lily」を経て、アルバム『Chasing Hope』の要とも呼ぶべき「街の名前」、「冷たい雨」、「Don’t Cry For Me Anymore」の3曲が本編のラストに畳み掛けるように演奏されたのは圧巻だった。特に言葉の鋭さとハードな演奏が光る「冷たい雨」ではステージに垂らされた布がスクリーンになり、そこに言葉の雨が降り注ぐような演出と力強い歌声は胸を打つものがあった。BONNIE PINKの今のソウルを感じさせるラストの「Don’t Cry For Me Anymore」も実に感動的で、同世代の女性目線の楽曲も多くなっていた、ここ数年の彼女が、もっと広い場所へと羽ばたいていく様を観ているようだった。
アンコールではバンドのメンバーとBONNIE PINKの5人全員がギターを抱えて横並びになり「Forget Me Nots」を披露する珍しい場面も。そして「まだ早いし(注:開演が17時でした)、せっかくだからもう1曲歌っちゃおう」と行われたダブル・アンコールの「Rumblefish」まで、BONNIE PINKの過去と現在を感じさせる内容でありながらも清々しく晴れやかなムードに満ちた素晴らしい一夜だった。キャリアを重ねながらも、過去さえも歌で浄化しながら、いつだってフレッシュな気持ちで前に進んでいく。そんなBONNIE PINKの姿勢はひとつのメッセージとなってオーディエンスに伝わっていたことだろう。
【取材・文:上野三樹】