BONNIE PINK、最新アルバムが奏でる、風と光。
BONNIE PINK | 2012.07.25
“1人で在る時間”を、愛(いつく)しみながら、育むことが出来る人。そんなパーソナリティーが、彼女の音楽家としての個性に直結し、唯一無二の魅力になっている。デビュー当時から、楽曲と歌詞のクオリティと、ハイセンスなアレンジ能力で、名実ともに音楽シーンに、存在感を残してきたBONNIE PINK。
デビューから12年目。12枚目のオリジナルアルバム『Chasing Hope』が完成した。
昨年、セルフカバーアルバム『Back Room- BONNIE PINK Remakes-』をリリースし、同アルバムを携えたアコースティックツアーを行った彼女。その流れの中で、気持ちはどう変わっていったのか。
流れを追いながら、新作の魅力、そして彼女のパーソナリティに迫る。
- EMTG:動画コメント(右上に掲載中!)で、昨年の暮れから、アルバムの制作がスタートした、と。
- BONNIE PINK:そうですね。去年、セルフカバーアルバムを作り、アコースティックツアーをやって、自分の歩みを振り返る作業ができたと思っているんです。震災もあった中で、なんかこう……自分が今後の活動をより前向きに頑張って行くためにも、今まで作って来たものを振り返る作業が必要だった、そういう年だと思うんですね。正直、震災の後、しばらく音楽やりたくないってくらいに考えていたんです。本当に、今後、自分の人生どうしようかなって思っていて、次の作品を作る気持ちになれなかった。でも、やっぱり楽しみにしてくれているファンの人がいて、被災された地域の方でも、音楽を普通に続けてくださいって人もいたりして。それを励みに去年も活動していく中で、未来を見据えて、一歩また踏み出そうって、思えるようになったんですよね。振り返る作業ができて、一旦リセットができたというか。それに、私の音楽を聴いて、ついてきてくれる人もいるから、立ちあがる必要があるんじゃないかって思ったんです。気持ちの切り替えができてからは、わりとすんなり、制作に入っていけたんですよね。
- EMTG:アルバムを聴いて、まずは、すごく開けているなと思ったんですよね。あとは、聴いた後、宗教的な意味ではなくて、浄化された気持ちになりました。
- BONNIE PINK:あぁ、それはすごく良かったです。 これは、震災があって、前よりも強く思うようになったことなんだけど、生かされたからには、全力で生きたい、という。そんな風に思えるようになったのが、色濃く出てると思います。だから、地球環境のことを書いた曲もあったり。“今、自分がここに在る”ってことに、感謝したい……そういう思いがすごく強くなった。だから、ピックアップするワードも、開けたというか、よりそこをイメージできるものになっていったのは、実感としてありますね。
- EMTG:景色とか、光景をイメージさせる言葉が、韻層に残りました。そういう言葉を使って歌詞を書く時に浮かんでいるのは日本の景色? それとも海外の景色?
- BONNIE PINK:あぁ、もっと漠然とした……広い意味の……自然とか。海とか山とかですね。場所を限定して想像したことは無いです。場所とかよりも、例えば、匂いやスピード感、湿度とか……そういうのをイメージしながら、書くことが多い。曲を作る時、そのきっかけは、いろんなところに転がっているはずだから、なるべくグローバルな視野を持って五感を研ぎ澄まして、作ってますね。で、メロディがふってきたら“このメロディとコード感は、どこで聴いたら似あうだろう?”っていうのを、連想ゲームみたいに広げていく。で“この風景に似あう”って出てきたら、今度は、そこに居そうな人を連想して、その人が言いそうな言葉を書いていく。1行書いたら、その次の行がまた浮かんでくるんですよね。
- EMTG:台詞はあまりないけど、考え方は脚本っぽい。
- BONNIE PINK:そうですね。“歌詞は実体験ですか”って、良く質問されるんですけど、私の場合、9割妄想なんで(笑)。で、聴いた方にも、私の方からは限定しない歌詞を心がけてるんですね。その方が、聴いた人が、自分と重ねやすいと思うから。グレーな要素を残すようにしたり、情景が浮かびやすい歌詞を書きたいなと思って、そこはいつも意識して書いてます。
- EMTG:聴く人の立場からしたら、絶妙な距離感ですよね。
- BONNIE PINK:聴き手に委ねるというか、聴き手の想像力をストップさせないように必ず余白を残すようにしてます。だから言い切ってる歌詞も少ないし、“To Be Continued”や“?(クエスチョンマーク)”で終わっている歌詞とか、HappyかSadか言い切って無い曲が多いんですよ。両方あるのが、人生だと思っているから。ただ、聴き終わった後、聴いた人が暗くなっちゃうのはイヤなんですよね。最後は希望の光が見えてくるような終わり方にはしたいと思っているんです。
- EMTG:なるほど。希望の光というのを、違った言葉で言うと、例えばどんな感じですか?
- BONNIE PINK:……曲の終盤に、ふわっと優しい気持ちになっていたい。アルバムとしてもそうで。最後の方に、デトックスしきった感じというか……例えば、マッサージから出てきて、フーッってなってる感じってあるじゃないですか。曲もアルバムも、あぁいう風に終わりたいっていうのがあるんですよね。そうすると、自然に楽曲や作品にあるべきバイオリズムが見えてくるんです。個人的な好みでしかないんですけど、自然とそれに準じて作曲や作品作りをしてますね。
- EMTG:あぁ、その空気感、今回のアルバムにすごく出ていると思います。聴いててすごく伝わりました。
- BONNIE PINK:レコーディングで、曲毎にプロデューサーさんやプレイヤーさんを変えたりするんですけど、発注のポイントでいちばん気をつけるところは、曲のバイオリズムなんです。だから、そこを伝えるのに、すごくエネルギーを使うし、私がこれまで10何年やってきて、守ってきた部分がもしあるとするなら、そこだと思います。そのバイオリズムって“曲のハイライトはここだ”っていうことだったり、”ここは助走部分だから沸々とした感じで”、とかそういうこと。”この歌詞はこういう音で聴いてもらいたい”っていうような、詞とメロディ、サウンドのベストマリッジを目指しています。自分で曲を書いているから、曲の意図を伝えるのが、私の義務だと思ってます。
- EMTG:今回のアルバム「Stand Up!」と「Change」は、どんな空気感を目指したんですか?
- BONNIE PINK:「Stand Up!」は、もう“スタンドアップ!”って言っているから、朝の勢いとかエネルギーを感じられる曲にしたいと思った。それは伝えたような気がしますね、プロデューサーに。「Change」はビュンっと風が吹く感じ。吹いてくる風に、立ち向かってくような曲にしたくて。心機一転、みたいな主人公をイメージしました。人って、何度でもスタートを切れる……そういうことを言いたくて。「Change」をアルバムの最後にもってきたのも、そこからまた始まっていく感じにしたかったからなんですよね。
- EMTG:少し話が前後しちゃいますが、先ほどおっしゃった“フーッってなる状態”が、BONNIE PINKさんにとっても、HAPPYな時間だったりします?
- BONNIE PINK:そうですね。1人でぼんやりしている状態が、いちばんストレス・フリー、みたいな(笑)。例えばヨガやっている時とか、土いじりしている時とか、1番優しい気持ちになってると思う。私、昔から、わりと1人でも平気な子供だったみたいで。こう……1人上手というか(笑)。1人で絵を描いたり、1人で粘土遊びしている時間が、至福の一時だったんです。それは今も変わって無くて、それを音楽で表現できたらいいなと思っていたんですよね。
- EMTG:孤独感を感じたりはしなかったんですか?
- BONNIE PINK:んー、あの、かと言って……友達がいないわけじゃないんですよね(一同笑)。1人で淋しいとか、孤独だとかは、本当、あまり感じた事はなくて。1人でいる時は、その分、頭の中が忙しいんですよ。いろんな妄想したり。絵を描いてても、話がどんどん展開して、横に長くなって、巻物みたいになったりとか(笑)。孤独を妄想が凌駕するみたいな、そういう生き方をチョイスしてましたね。
- EMTG:9月からは、ツアーも決まってますね。
- BONNIE PINK:はい。去年が今までと違うライヴのスタイルだったんです。アコースティックで、お客さんに座って見ていただく形だった。丁寧な音作りをして、空間や間を楽しんでもらうようなライヴだったんですけど、すごく評判が良かったんですよ。後からいろいろ感想もいただいて、私の音楽を座ってじっくり聴きたいって人も、多いんだなって気付かされたんです。今回はライヴハウスなので、ライヴ全部がそのスタイルにはならないと思うんですけど、昨年の経験もどこかで、生かせたらいいなと思っています。
【取材・文:伊藤亜希】
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多肉植物……代表的なものは、サボテンとかなんですけど、自分で水分を内包している、ぷっくりした植物なんですよ。最近、多肉植物を家に増やして、自分で寄せ植えしたりするのにはまっているんですよね。じつは多肉植物って、すごく種類があって、基本は育てやすい植物とされているんですけど、それぞれにとっていちばんいい環境や育て方も違うんです。だから、図鑑をamazonで探して買って。今、調べながらいろいろ育ててます。
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※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。
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