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約3時間、全27曲! くるり、感動の日本武道館公演の模様をレポート!

くるり | 2013.02.05

 岸田繁(Vo&G)、佐藤征史(B&Vo)に、吉田省念(G&Cello&Vo)、ファンファン(Tp&Key&Vo)が加わった新生くるりの1stアルバムとなった『坩堝の電圧(るつぼのぼるつ)』を引っ提げて行われた全国ツアー『くるりワンマンライブツアー2012?国民の性欲が第一?』の特別公演にして、くるり史上通算5回目となる日本武道館ワンマン公演『くるりワンマンライブツアー2012/13特別公演?国民の成長が第一?』。ステージは、4人に加えて、ツアーを共に廻ったあらきゆうこ(Dr)、さらには堀江博久(Key)、権藤知彦(ユーフォニアム)、ザ・サスペンダーズ(渕上祥人・遠藤由美:Cho)、高田漣(G・ペダルスチール・マンドリン・バンジョー)、BoBo(Perc)というメンバーが、勢揃いしたり、入れ替わったり、楽曲によって編成を変えながらパフォーマンスしていった。錚々たる面々による演奏はかなり贅沢。とは言え、ド派手な演出やキャラクターではなく、音楽そのものの魅力で武道館を大勢のオーディエンスで埋めたことが、感動的な事実だと思う。もちろん、数々のドラマがちりばめられ、ライヴはさらなる感動を呼ぶこととなったのだが。なお、ツアーファイナルだった渋谷公会堂とは、大きく異なるセットリストだった。

「ありがとね、集まってくれて」と笑顔で岸田が言い、「everybody feels the same」からライヴはスタート。さらに「ロックンロール」、「Morning Paper」と、楽曲とシンクロした照明や、オーディエンスのじわじわ高まる興奮が、武道館をさらに特別な空間へと変えていく。「ようこそ、ライヴハウス武道館へ!」と岸田が叫べば、佐藤が「男なら、誰でも憧れる一言ですよね」とすかさず突っ込み。そんな岸田は「都営新宿線で武道館に来た」と、彼らしいエピソードも披露。それが伏線となってはじまったのは「赤い電車」。岸田が「武道館にお越しの方と、赤い電車に乗って何処かへ行ってしまおうではないですか!」と言うと、アナウンスからホイッスルが響き、スクリーンには運転席の車窓の風景が。その後、「WORLD’S END SUPERNOVA」、「惑星作り」と続く感じは、何だか銀河鉄道に乗って宇宙に行ってしまうような、ドラマティックな流れを感じた。そして、「Pluto」、「crab, reactor, future」 、「falling」、「dancing shoes」と『坩堝の電圧』の楽曲を畳み掛けた後、メンバー紹介。オーディエンスは穏やかに聴いているようで、岸田がステージドリンクを飲んでいると「美味しいかー!?」なんて声をかけたりして、何だか一つのお家みたいだ。

 昔の丸ノ内線の車両が、今は武道館の真裏にあるブエノスアイレスで活躍している、という「へえ?!」な情報からはじまったのは、もちろん『argentina』。「アルゼンチンの、ファンファンさん!」という岸田の振りから、アルバムにも収められていたファンファンのナレーション付きで披露された。大所帯のバンドで、荘厳に響いた「soma」を経て、終盤はくるり・スタンダードの大放出。特に「マーチ」や「街」は、この歌詞と共に生きてきたんだな……と思わずにはいられなかった。さらに「ばらの花」や「Baby I Love You」では、毛布に包まれているような至福感さえ覚えるハーモニーを響かせていく。それは、客席がバーンと照らされた「ワンダーフォーゲル」で絶頂へ! 演奏を終えて、改めて客席を眺めながら、岸田「どうですか、この武道館満員のお客さん!」、佐藤「幸せです」という二人のやり取りに、こちらまで幸せになる。「感慨深い系の話をしても仕方ないけど、感慨深いなあと」言った岸田が「魂の演奏をします」とはじめたラストナンバーは「東京」。岸田の歌声を含めて、全ての音色が力強く共鳴し、オーディエンスの心を震わせていく。誰もが、東京と自分を重ね合わせずにはいられない、そんな熱演だった。

 茫然と余韻に浸りながらアンコールを求めていると、岸田が「もうちょっとっていうか、だいぶやる」と言いながら、再びバンドはオン・ステージ。iTunes限定配信されたばかり(そしてチャート1位を記録!)の「Remenber me」、そして岸田が「メンバーもゲストも、一緒に演奏するの、めちゃ楽しいです」と言い、その気持ちが伝わってくる「リバー」と続ける。

 2曲でステージを降りてしまったバンドに、あれ? もっと!という思いで拍手を送るオーディエンス。そして、Wアンコールへ! 「white out (heavy metal)」、「シャツを洗えば」、「春風」、「地下鉄」と、ほんとにたっぷりと演奏。佐藤は「普段はアンコールを決めないんですけど、今日は、次の曲まで一つのショウとして考えてきた」と言い、最後は「glory days」。スクリーンには福島県いわき市・薄磯海岸の映像が表れる。東日本大震災後の2012年を象徴するようなこの楽曲が武道館に響いた意味は、とても大きい。穏やかに苦悩を溶かし、背中を押すエンディングとなった。時代を映し、人生に寄り添う音楽を生み出してきたくるりが、最強のメンバーとゲストを得て、破格のポジティヴなパワーを宿した、素晴らしきライヴだった。

【取材・文:高橋美穂】

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リリース情報

坩堝の電圧(るつぼのぼるつ)【初回限定盤A】

坩堝の電圧(るつぼのぼるつ)【初回限定盤A】

2012年09月19日

ビクターエンタテインメント

1. white out (heavy metal)
2. chili pepper japons
3. everybody feels the same
4. taurus
5. pluto
6. crab, reactor, future
7. dog
8. soma
9. o.A.o
10. argentina
11. falling
12. dancing shoes
13. china dress
14. my sunrise
15. bumblebee
16. jumbo
17. 沈丁花
18. のぞみ1号
19. glory days

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セットリスト

くるりワンマンライブツアー2012/13特別公演〜国民の成長が第一〜
2013.1.17@日本武道館

  1. everybody feels the same
  2. ロックンロール
  3. Morning Paper
  4. 赤い電車
  5. WORLD’S END SUPERNOVA
  6. 惑星づくり
  7. pluto
  8. crab, reactor, future
  9. falling
  10. dancing shoes
  11. argentina
  12. soma
  13. マーチ
  14. ハローグッバイ
  15. ばらの花
  16. 太陽のブルース
  17. Baby I Love You
  18. ワンダーフォーゲル
  19. 東京
ENCORE
  1. Remember me
  2. リバー
ENCORE2
  1. white out (heavy metal)
  2. シャツを洗えば
  3. 春風
  4. 地下鉄
  5. glory days

お知らせ

■ライブ情報

俺たちの太2013〜東北ライブハウス大作戦ツアー〜
2013/02/09(土)KLUB COUNTER ACTION 宮古
2013/02/10(日)大船渡LIVEHOUSE FREAKS
2013/02/12(火)石巻BLUE RESISTANCE
2013/02/13(水)仙台Rensa

くるりファンクラブイベント2013
2013/04/25(木)LIQUIDROOM

WHOLE LOVE KYOTO
2013/04/29(月)京都 KBSホール

※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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