昨年9月にリリースしたアルバム『because you are you』を掲げ、10月末からスタートしたAqua Timezのホールツアー"because we are we"tour 2012-2013。年をまたいで各地をまわってきた彼らが2月3日、東京国際フォーラムホールAで無事にファイナルを迎えた。場内の照明が落ち、ステージ前を覆うスクリーンには、メンバーのシルエットが逆光で映し出される。この瞬間、オーディエンスのパワーも急上昇。幕が開くと同時に、バンドはアルバムの展開と同じく「音速の風景」から「オーロラの降る夜」をプレイ。2曲目には「MASK」が続き、テンポのいいナンバーで、前半から熱く展開していく。

「国際フォーラム！準備は出来てますか！」と、ボーカルの太志の煽りから「輪になって」へ。勢いのあるロックチューンに観客からは拳が上がったり手拍子が起こったり、3曲目にして完璧な一体感。この後も、ライブはアルバム『because you are you』を中心に進んでいく。だが、合間には懐かしい曲も挟み込み、古くからのファンをジンワリさせた。デビュー・ミニアルバムにも収録されていた「等身大のラブソング」は、メンバーのアカペラで歌が始まる、コーラスワークが美しい名曲だ。他にもメロディアスな「千の夜をこえて」など、聴かせる曲達も惜しみなく披露していく。

　中盤では、芸達者なメンバーぞろいのAqua Timezらしいパフォーマンスが待っていた。このあとのコーナーはメンバー全員がステージに並び、担当の楽器をそれぞれ変えてアコースティック・アレンジでのパフォーマンスを見せてくれた。ベースのOKP-STARはアコースティックギターを披露。ここではドラムのTASSHIもセットを離れてグロッケン(鉄琴)を担当。ギターの大介はピアノを、mayukoはピアニカやアコーディオンで懐かしい音をそえる。「空に近い街」や「君となら」を、ほのぼのとしたアレンジで届けてくれた。前半の熱い空気からは想像できないような空間に、改めてバンドの実力の高さを思い知らされる。

　ライブ後半は、再びアガる選曲となった。「Full a Gain」では、ほとんどの観客がタオルを振り回し、アルバムタイトルと同名の「because you are you」では“I love you,because you are you”のコーラスも起こり、バンドと観客とのエネルギーが交錯する。彼らの代表曲のひとつである「虹」では演奏に負けないほどの大きい手拍子に包まれ、場内の熱気は沸点に。だが、彼らはまだまだサプライズを用意していた。「兎のしっぽ」では、曲の途中でメンバー分のフロアタムがステージに並び、各メンバーが和太鼓演奏のようなスタイルでリズムを叩き出す。これには本能的にワクワクさせられた。本編ラストはミディアムバラードの「HOME」。優しいムードで本編は終了したが、さらにアンコールが2曲、待ち構える観客にプレゼントされた。まずはメジャー第1弾シングルであり、多くの人とっておなじみの「決意の朝に」。このあと、「最高の時間を過ごしてくれたみんなと、記念撮影したいと思います」と、メンバーと客席とで記念撮影。各メンバーが「F」「I」「N」「A」「L」と書かせた紙を掲げ、まさにファイナルならでは光景が写真に収められた。大ラス曲は「別れの詩 -still connected-」。太志は「必ずまた会おうな！」とひと言そえて、力強く歌いきった。盛りだくさんの内容だったが、散漫にならなかったのは、メンバーの実力によるところも大きい。加えて曲のよさやパフォーマンスの確かさ、何よりメンバーの人間くささも伝わり、非常に見応えのあるライブだった。

【取材・文：海江敦士】