今年も全国全箇所ソールドアウト!「 スペースシャワー列伝 JAPAN TOUR」のファイナルをレポート
スペシャ列伝 | 2013.03.22
今回の「スペースシャワー列伝 JAPAN TOUR」は、これまで以上に、出演アーティストの今後のポテンシャルや将来性に賭けたかのようなラインナップだった。そしてそれは、観後、彼らのこれからの飛躍を強く確信させるものでもあった。
正直に書こう。私は毎年このツアーのラインナップが発表される度に、”今年は例年になく、ちょっとメンツが弱くないか?”と疑ってしまう。しかしそれは、このツアーが始まる頃には払拭。発表後しばらくすると、参加各アーティストの名前が色々なところから聞こえ出し、ツアーの最終日には、キッチリ”今年も凄いラインナップだったな…”と感心させられる。加え、その1?2年後には、中の幾つかがシーンを台頭するバンドに成長しているのだから凄い。その先見性と信憑性には、毎度恐れ入りっぱなしだ。
そして今回の「スペースシャワー列伝 JAPAN TOUR」に選ばれたのは、indigo la End、tricot、WHITE ASH、グッドモーニングアメリカの4組。既知/不既知混合のことだろう。にも関わらず、今回も全国8箇所で行われたツアーは全て早期にソールドアウト。今年もファイナルの赤坂ブリッツは、そのブランディングの確立を示すと同時に、今後のアーティストの伸び、このイベントに、ある種の身元保証的な信頼を求めたお客さんたちで満員だ。
まずは一発目。今年2月に、待望の1stフルアルバム『夜に魔法をかけられて』を発売したばかりのindigo la Endが登場する。ボーカル&ギターの川谷絵音、ギターの長田カーティス、ドラムのオオタユウスケからなる彼ら。バックの赤いライトの中、一人一人のシルエットがゆっくりとステージに現れる。ガツンとしたデモンストレーション音の中、川谷の「indigo la Endです。よろしくお願いします」の一言からスタートした彼らのステージ。1曲目はメランコリックなイントロから、3拍子がめまぐるしく加わり、変貌していく「大停電の夜に」だ。性急的なサウンドとポエトリーリーディングの狭間、ゆったりとした3拍子が情景を描いていく。続いての「緑の少女」では、川谷のカッティングに長田の景色を広げるメロディアスなギターソロ、サポートのベースも動き回り、躍動感を楽曲に加えていく。そして、「♪抱きしめてよ 心と心が触れ合うぐらい♪」のリリックフレーズも印象的だったミディアムナンバー「抱きしめて」、「♪やっとわかったよ 分かってしまったよ♪」との歌詞のレトリックも特徴的な「sweet spider」等、ニューアルバムからの曲たちがセットリストに彩りを添える。そして、ラストの「素晴らしい世界」では、優しい疎外感が会場に広がっていく。同曲のラストではシーンと静まる会場の中、川谷の独唱が会場中が固唾を飲んでステージに魅入る光景を作り出していたのが印象的であった。
前出のindigo la Endが圧倒的な世界観と光景で会場に魅入らせ、聴き入らせたのとは対照的に、このtricotでは、フロアがステージに向け、分かりやすい呼応やノリを見せる。とは言え、彼女たちの音楽性は決して分かりやすいものではない。いや、むしろ逆に凝った展開なものばかり。それは、途中の中嶋の「乗りにくい曲ばかりですみません」とのMCにも、よく表れている。2010年9月に、ボーカル&ギターの中嶋イッキュウ、ギターのキダ モティフォ、ベースのヒロミ・ヒロヒロにより結成。2011年5月にサポートメンバーであったドラムのkomakiが正式加入した、フロント3人が女性の男女混合バンドだ。幾何学でポストロック的な要素も持ちながらも、そこに親しみやすさや敷居の低さ、メリハリの効いたエモーショナルさを特徴としている彼ら。2012年は、多くの大型フェスにも出演し、各地で反響を呼んだのも記憶に新しい。そんな彼女たちのステージはまさに疾風怒涛。激しい曲や難拍子もスムーズに次々と繰り出しては乗りこなしていく。オープニングのインスト&ハミングの「G.N.S」から、アフロ/ラテンポップのダンサブルさも特徴的、中嶋のポエトリーリーディングによるアジテーションも強烈な「夢見がちな少女、舞い上がる、空へ」、スリリングさと緊迫感がありながらも、3声の甘いハーモニーが独特のポップソングへと導いた「おもてなし」、そして、4月24日に発売されるニューシングル「99.974℃」が一足早くここで披露されると、この日は、このライブが同シングルのミュージックビデオになるということも伝達され、更に会場に起爆を引き起こす。そして、ラストの「MATSURI」では、始まる前にキダがフロアのお客さんの上でギターイントロをプレイ。中嶋がハンドマイクで歌えば、ベースのヒロミも客席に飛び込む阿鼻叫喚っぷり。もちろんフロアもそれを全身で享受し、tricotとお客さんとのエネルギーの交歓会は終了した。
続いてのWHITE ASHが始まると、これまた会場の雰囲気がガラリと変わる。アメリカン/カレッジロック的な要素を持ちつつ、MCでは、ギター&ボーカルのび太のちょっと甘めな声質が共感を持ち、そのギャップが魅力へと繋がっていく。ギター&ボーカルのび太、ギターの山さん、女性ベースの彩、そしてドラムの剛からなり、2006年に結成。都内を中心に活動を始め、ライブハウスシーンで話題に。2012年7月発表の1stフルアルバム『Quit or Quiet』は、オリコンインディーズチャート1位に輝いた。そんな彼らのステージは、山さんのソリッドなギター、躍動的な彩のベース、剛によるタイトな8ビートを叩き出す「Jails」からスタートした。サビのストレートさがたまらない同曲。合わせてフロアも盛り上がり呼応する。次は日本語曲。赤いライトが似合うスリリングさを有した「Kiddie」だ。ベースの彩がガリンガリンなベースを弾き倒す。続いては、「好きな踊り方でいいんです。赤坂ブリッツをダンスホールにしませんか?」との、のび太の呼びかけの後、セカンドラインのリズムを彼らなりに消化した「Deadmans On The Dancefloor」に入る。そして、フロアにクラップとジャンプの応酬を呼び込んだ「Paranoia」、今まで有言実行してきた彼らが、「言わして下さい。新しい音楽、そしてシーンの主役は我々WHITE ASHですから」の頼もしいMC後に伝えられたミディアムな「Scar(t)」では、聴かせる曲もキチンと擁しているところをアピール。ラストはホラーロックのような緊張感のある演奏とクールな歌声の「Stranger」で締め、幅と各音楽へのオマージュをキッチリ感じさせる6曲を堪能させてくれた。
そして、トリのグッドモーニングアメリカは、ベースのたなしんが着ぐるみを着た格好で、いきなり2Fのバルコニーに現れる。去年は同位置から、”来年は出たい”と思っていたと言う彼ら。夢がかなった今年はその感動もひとしおだろう。それはその後、ステージから放たれる各曲からもありありと伝わってきた。
ボーカル&ギターの金廣真悟、ギターの渡邊幸一、ベースのたなしん、ドラムのペギからなる彼ら。2006年の活動休止を経て、2007年に現在のバンド名へと改名。現在までに3枚のミニアルバムを発表してきた。そんな彼らのライヴは「ウォールペーパーミュージックじゃ踊りたくないぜ」からスタートした。ボーカル&ギターの金廣真悟のハイトーンがこの日も冴え渡り、会場は楽曲に合わせ、時に上昇感を味わったり、ダンサブルな世界へと惹き込まれていく。さすがはトリ。彼らのライヴになるとフロアの後方まできっちりと盛り上りが伝わっていく。うぉーうぉーとのシンガロングや3声によるコーラスが楽曲にふくよかさを寄与した「空ばかり見ていた」。2ビート全開の疾走ナンバー「言葉にならない」、サビ時には、会場の全コブシがステージに寄せられた「だけど不安です」、そしてラストは、ゆったりと陽が昇っていくようなナンバー「餞の詩」で、スケールの大きなダイナミズムも堪能させてくれる。
そして、アンコールに応えてくれた彼らが放ったのは、この列伝ツアー限定シングル「キャッチ&リリース」。この曲ではミュージックビデオ同様、主婦っぽいダンサー3人がステージに現れ、最後に会場/ステージの一体感を呼び込む。
ここから、毎年恒例の出演者全員によるセッションが。これまではトリのバンドの曲に出演者全員が参加したり、有名曲のカバーをみんなで演ったりといった趣きだったのだが、今回はナント、この時の為にオリジナル曲をみんなで作成。披露してくれた。タイトルは「列伝2013 get going?前進あるのみ?」。このツアー中に作られたという同曲は、ギター、ベースは全員、各ボーカルはメロディブロックごとにリレーション、ドラムに関しては、交代交代で叩くという、まさに全員で作られ、プレイされ、歌われたもの。最後は会場全体が楽曲に合わせゆっくりとワイパーを描き、彼らの夢を後押しするような今年のスペースシャワー列伝ツアーは大団円を迎えた。
このイベント終了の数日後、WHITE ASHは、この5月からバップへのメジャー移籍を発表。グッドモーニングアメリカも5月には、メジャーのコロムビアレコードより1stフルアルバムをリリースする。indigo la Endは渋谷のクアトロでのワンマンライヴが決定し、着実に動員や人気を上げているし、tricotもニューシングルを4月24日に発売し、渋谷のクアトロでのワンマンも決定している。やはり今回の出演陣も、例年に漏れず、今後も色々なところで話題になっていくことだろう。 この日撒かれた種が、芽を出し、大輪の美しい花を咲かせている。そんな光景が見終わった後のステージを思い返し、オーバーラップした。
【取材・文 池田スカオ和宏】
【Photo 古溪一道】
なお、このイベントの模様をスペースシャワーTVにてオンエアが決定!
タイトル:「スペースシャワー列伝 JAPAN TOUR 2013」
放送日時:初回放送:4月30日(火)23:00?24:30 他 是非!
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セットリスト
スペースシャワー列伝 JAPAN TOUR FINAL
2013.3.9 @ 赤坂ブリッツ
W / indigo la End、tricot、WHITE ASH、グッドモーニングアメリカ
indigo la End
- 1.大停電の夜に
- 2.緑の少女
- 3.抱きしめて
- 4.sweet spider
- 5.素晴らしい世界
- 1.G.N.S
- 2.夢見がちな少女、舞い上がる、空へ
- 3.おもてなし
- 4.99.974℃
- 5.爆裂パニエさん
- 6.MATSURI
- 1.Jails
- 2.Kiddie
- 3.Deadmans On The Dancefloor
- 4.Paranoia
- 5.Scar(t)
- 6.Stranger
- 1.ウォールペーパーミュージックじゃ踊りたくないぜ
- 2.空ばかり見ていた
- 3.言葉にならない
- 4.だけど不安です
- 5.輝く方へ
- 6.餞の詩
- En-1.キャッチ&リリース
- 「列伝2013 get going〜前進あるのみ〜」