“崩れる寸前のおいしさ”。嬉しいショックの連続だったゴスペラーズのツアー終盤をレポ!
ゴスペラーズ | 2013.04.08
アルバム『STEP FOR FIVE』は、タイトルどおり5人の個性をそれぞれにアピールしながら、5人にしかできない共同作業で作り上げたアルバムだ。その“ライブ版”ということで、どんな内容になるのか期待していた。しかもツアー終盤の東京公演だから、仕上げは万全…のはず。さて、いつも驚きがあるツアー最終盤のゴスペラーズの心意気を楽しみに、東京・国際ファーラムに行ってみた。
“10”から始まったカウントダウンがなんと1から折り返して“4,5”(フォー・ファイブ)で止まると、ステージ中央の電飾前に白シャツとパンツにブルーのジャケット姿の5人がスポットライトの中から浮かび上がる。ショーアップされたオープニングだ。
「STEP!」から「It`s Alright ?君といるだけで?」と、アルバム『STEP FOR FIVE』の曲順どおり。黒沢薫のつややかな声、酒井雄二の自信に満ちたリードで、パーティ感いっぱいのスタートを飾る。次の「靴は履いたまま」は98年のアルバム『Vol.4』からの曲で、時代がグッと引き戻されるはずが、アッパーなダンスチューンとなっていて、さらに客席をヒートアップさせる。「靴は履いたまま」は村上と北山のリズムが、「Let it go」は安岡の突き抜ける声がいい。そして「ミモザ」まで、この最初のブロック5曲のこなれ具合にツアーの成果が見事に凝縮されていて、しばらく拍手が鳴り止まなかった。
「『STEP FOR FIVE』はステージが見えてくるようなアルバムにしようと思って作りました。去年の11月にツアーがスタートして、今日で38本目!」と挨拶する。ここからはオーディエンスは座って聴き入るブロックだ。
ツアー中にリリースされた最新シングル「氷の花」の後、このツアーのテーマであるメンバー・フィーチャーのコーナーは、まずは3人。宇宙的なサウンドの北山ナンバー「astro note」、ロックギターがうなる安岡ナンバー「Your Hero」、渋いソウル風味の村上ナンバー「Soul Song Juke」が、それぞれの音楽的ルーツまで感じさせてくれる。ここまで個人のテイストを打ち出すライブは珍しいので、とても新鮮に響いたのだった。
そうして安岡、北山、村上とバックバンドがステージを去って、残ったのは酒井と黒沢だけ。2人がゴスペラーズのアマチュア時代のエピソードをしゃべりながら、たった2人で“アカペラ”を披露したのがとても面白かった。次は酒井と黒沢が着替えに行くのと交代で、着替え終わった3人が登場。今度はオールデイズのアカペラを披露。その後、2人が合流して、5人でスタンダード・ナンバー「Someone To Watch Over Me」をビシッと決める。
そう、今回のツアーは5人の個性を活かすのと同時に、5人のバラエティ感たっぷりのステージングが楽しめるという趣向だ。もともと芝居っ気たっぷりのグループではあるが、特に今回は“個の能力”にかかるところが大きい造りになっている。しゃべりやパフォーマンスの“引き出し”を最大限に使って楽しませ、その上で歌を伝える。ツアー終盤ということもあって熟し切った運びは、言葉は悪いが“崩れる寸前のおいしさ”。ライブ・アーティストとしての風格さえ漂わせていて、嬉しいショックがあった。
ここからはマイケル・ジャクソンをリスペクトした黒沢ナンバー「CLASH」、80’sサウンドの未来形の酒井ナンバー「2080」がアグレッシヴに客席をアオる。
困難に立ち向かうすべての人にあてた感動的なバラード「BRIDGE」から始まった後半で圧巻だったのは、「愛の歌」だった。会場を誕生月で分けてハモってもらう手際の良さは、ゴスペラーズの独壇場。しかもそのハーモニーの出来の良さは、ゴスペラーズの観客にしかできない奇跡の光景だ。国際フォーラムいっぱいに響く5000人のコーラスは、歴代ツアーの中でも抜群の熱さがあった。
本編終盤の「ギリギリSHOUT!!」のあと、「オレら、とっくにギリギリだぜ。お前らのギリギリの叫びを聴かせてくれ!」と酒井が叫び、続く「1,2,3 for 5」でライブは最高潮。エキサイティングな終わりを迎えたのだった。
アンコールは「NEVER STOP」。2011年6月に発売されたシングルで、歌い続ける覚悟をアカペラで歌い上げる。このシングルのカップリングは、この日のライブの3曲目に歌われた「靴を履いたまま」のライブ・バージョンだった。そうした構成の妙もあって、「NEVER STOP」はこの日いちばんの感動を呼んだ。
「ほんと、東京って大きいね」と酒井が歓びを表わすと、「今日来てくれたみなさんは、アルバム『STEP FOR FIVE』をずっと聴いててくれたんだなと感じて嬉しかった」と村上が感謝の言葉を述べる。アンコールのラスト「永遠(とわ)に」の最後の方はほとんどノーマイクで歌われ、アブラの乗り切ったツアー終盤のゴスペラーズを堪能させてくれたのだった。
【取材・文:平山雄一】
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リリース情報
セットリスト
ゴスペラーズ坂ツアー2012〜2013 “FOR FIVE”
2013.3.2 @ 国際フォーラム ホールA
- STEP!
- It’s Alright ~君といるだけで~
- 靴は履いたまま
- Let it go
- ミモザ
- ひとり
- 真夏の夜の夢
- あたらしい世界
- 氷の花
- astro note
- Your Hero
- oul Song Juke
- Someone To Watch Over Me
- Love me! Love me!
- パスワード
- CLASH
- 2080
- BRIDGE
- ゆくてに
- 終わらない世界 2009
- 愛の歌
- ギリギリSHOUT!!
- 1, 2, 3 for 5
- NEVER STOP
- 永遠(とわ)に
お知らせ
2013/04/13(土)大阪ビジネスパーク円形ホール
2013/04/14(日)大阪ビジネスパーク円形ホール
黒沢 薫 ゲスト出演! DRAMATIC SOUL vol.5 -Beyond Borders- at 下北沢GARDEN
2013/04/18(木)下北沢GARDEN
『MUSIC COMPLEX 2013,Spring』supported by JCB
2013/05/24(金)中野サンプラザ
SOUL POWER SUMMIT 2013
2013/08/30(金)東京国際フォーラム ホールA
2013/08/31(土)東京国際フォーラム ホールA
2013/09/07(土)グランキューブ大阪 メインホール
2013/09/08(日)グランキューブ大阪 メインホール
※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。