幕張メッセで驚愕の音楽体験空間を生み出したサカナクションのライブの模様をレポート
サカナクション | 2013.06.13
今、最も見逃せないライブを敢行しているのが、サカナクションだ。常に斬新なアイデアを模索し、効果的にライブに組み込む。しかしそれは単に物珍しさを追っているのではない。あくまで音楽を中心に置いて、その魅力を増幅・変換していくために多彩なアイデアを使うのだ。サウンドとビジュアルを同等に位置づけるアイデアは、これまでのライブの既成概念をくつがえして、異次元の時空間を創出してきた。実はこの意図的なミックスこそ、サカナクションの本当の“新しさ”なのだ。それを支える“チーム・サカナクション”は、バンド・メンバーと意識を共有しながら、様々な演出にかかわっていく。デビュー以来、その軸はまったくブレていないと断言できる。
今回の“SAKANAQUARIUM 2013 sakanaction”ツアーの幕張メッセ公演でいえば、世界の音響をリードする“ドルビーラボラトリーズ”の協力によって実現した6.1chサラウンドシステムの使用と、リアルタイムでコントロールされる各種の映像がその焦点となった。
ライブは、そのサラウンドシステムのデモンストレーションから始まった。会場の各所に設置された200本を越えるスピーカーを見て、オーディエンスは果たしてどんな音が飛び出すのか、開演前から期待を膨らませていたが、その期待にストレートに応える演出だ。
“立体的な音像”という言葉だけではいまひとつ分からないことが、一瞬にして体感できる。フロアの前後左右に置かれたスピーカーから現出するのは、まさに“音の立体”。しかも緻密な計算によって、客席のどの位置でもほとんど差のない音像が聴ける。ただそれだけであれば、3Dシアターで経験したことのある人もいるだろうが、幕張メッセという最大規模の会場での立体音像は、想像をはるかに超えていた。メンバー5人がステージでラップトップを前に一列に並んでプレイする1曲目「INORI」で、オーディエンスはあっという間にサカナクション・ワールドに引き込まれる。
さらに驚かされたのは、「M」だった。この曲のサビでオーディエンスはリズムに合わせてハンドクラップするのだが、サラウンドシステムによってどの位置でも同じタイミングで音が聴こえてくるので、2万人のクラップがピタリと揃うのだ。大会場ライブになると、どうしても音の伝わり方に時間差が生まれるので、クラップは後方に行くに従ってズレていく。僕は2万人のピッタリ揃ったクラップを、この日、初めて聴くことができた。それは非常に爽快な音だった。おそらくその音によって、オーディエンスは今まで経験したことのない“一体感”を味わったはずだ。歌や演奏が感動を生むシーンは日常的にあるが、スピーカーシステムそのものが人間の感情に訴えるのを初めて知った。これがサカナクションの“新しさ”なのだ。
「アルデバラン」の映像も、とても刺激的だった。スクリーンに映されるメンバーのライブ映像がリアルタイムでドットに変換されていて、これもまた“見たことのない世界”を目の当たりにさせてくれた。しかもエンディングで画面がフリーズすると、止まったドット全部がそのままスクリーンの中でバラバラと落ちてきたのには驚かされた。
そんなデジタルな刺激の中に、たとえば「なんてったって春」などの抒情的ナンバーが配されていて、アナログな音楽の良さも同じレベルで伝えてくれる。「ホーリーダンス」から始まった終盤の盛り上がりは、そうしたデジタルとアナログの刺激が入り混じって、メッセが巨大なクラブと化したのだった。
「僕たちの苦手なテレビに頑張って出たら、ライブに親子連れのお客さんが増えました。僕はそのことに、責任を感じてます。だって子供たちにとっては、僕らのライブが生まれて初めて観るライブになるわけだから。だとしたら、みんなが新しい体験をしてほしい。ライブハウスも楽しいけど、大きな会場だからこそ面白いことができる。それを期待されるチームでいたいと思ってます」と、山口一郎はアンコールで語った。
そう、サカナクションのライブは、新しい体験するものなのだ。五感をフルに活用して、体全部でサカナクションを味わう。その体験には、日常にエネルギーを与え、夢を膨らませる力がある。
デジタル時代になって音楽が“情報化”されて久しいが、サカナクションが提示するのは音楽の“環境化”という次のステップだ。それを理屈抜きで体感させてくれたライブだった。初日の川崎CLUB CITTA`を観ていたから、その凄まじい進化を実感した一夜だった。
【取材・文:平山雄一】
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リリース情報
sakanaction (初回生産限定盤CD+DVD)
2013年03月13日
ビクターエンタテインメント
01、intro
02、INORI
03、ミュージック
04、夜の踊り子
05、なんてったって春
06、アルデバラン
07、M
08、Aoi
09、ボイル
10、映画
11、僕と花
12、mellow
13、ストラクチャー
14、朝の歌
15、『バッハの旋律を夜に聴いたせいです。』(Ks_Remix)
<DVD収録内容>
初回限定盤の特典DVDならびにBlu-rayにはサカナクションの2012年の活動を記録した
様々な映像や写真データをカレンダー形式で楽しめる「sakanacalender 2012」を収録。
10曲のライブ映像、夏フェス会場でのライブ写真、「僕と花」「夜の踊り子」ミュージックビデオのメイキング、山口一郎自宅、スタジオでのレコーディングドキュメンタリー等となっている。
さらに、Blu-rayにのみMUSIC VIDEO3曲を収録。
このアルバムを購入
セットリスト
SAKANAQUARIUM2013 sakanaction
2013.5.19-20@幕張メッセ9-11
- INORI
- ミュージック
- M
- アイデンティティ
- ルーキー
- multiple exposure
- mellow
- ボイル
- アルデバラン
- なんてったって春
- ホーリーダンス
- 僕と花 -SAKANAQUARIUM 2013 VERSION-
- 『バッハの旋律を夜に聴いたせいです。』 -SAKANAQUARIUM 2013 VERSION-
- ネイティブダンサー -SAKANAQUARIUM 2013 VERSION-
- アルクアラウンド
- アドベンチャー
- Aoi
- 夜の踊り子
- ストラクチャー
- ナイトフィッシングイズグッド
- 朝の歌
お知らせ
JOIN ALIVE 2013
2013/07/21(日)いわみざわ公園〈野外音楽堂キタオン&北海道グリーンランド遊園地〉
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SPACE SHOWER SWEET LOVE SHOWER 2013
2013/08/31(土) 山梨県 山中湖交流プラザ きらら
RUSH BALL 15th
2013/09/01(日)泉大津フェニックス
※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。