5月15日にベストアルバム『さめざめ問題集』をリリースしたばかりのさめざめpresents”13年5月、恋は五月病”。開演を待っていると、アナウンスから凝っている。早速、世界観への拘りが感じられた。ファンのさめざめガール、さめざめボーイたちのテンションも漏れなく上がっていく。

　SEもなく暗転し、バンドメンバーが登場。笛田さおりが最後に現れると、すうっと息を吸い、いきなり彼女を知らしめた楽曲「愛とか夢とか恋とかSEXとか」を歌いはじめる。綺麗な声だし、歌も上手い。だけど、何だか危うさをはらんでいるように聴こえてくるのは、彼女の心が映し出されているからだろうか。オーディエンスも、受け止めるようにじっと見入っている。彼女も、歌に全てを込めるように歌い続けていたが、2曲目のポップな新曲「LOVE中毒」からは、心地よさそうに体を動かし出す。少しづつ、会場の空気がほぐれていった。

　「みなさんこんばんは、さめざめです。ここにいるみなさんは、五月病にかかりにきたということでいいですか？」と呼びかけると、「はい!」という声が飛ぶ。すると、「ここからはリハビリの時間です。体を揺らして」と、自ら手をくるくる回しながら「ぶりっこぶりっこ」を歌う。さらに、「呑んだくれガール」では、勢いよくハンドクラップ。オーディエンスも付いていく。

　「スカートめくり」まで終えると、キーボードで唯一の女性バンドメンバー（佳奈子）以外が降壇。そして、“さめざめ保健室”と名付けた、お悩み相談コーナーへ。助手である佳奈子が悩みを読み上げ、笛田がそれに答えるスタイル。人生やセックスや恋愛について、一つ一つの悩みにかなり丁寧に真面目に答えていた。これは……ファンは惹きつけられてしまうだろうな。過激でも劇場型でもなく、日常と地続きの回答。パブリックイメージとは違う、彼女の人間性が感じられて、興味深かった。最後に「処方箋のお薬を出したいと思います」と、ピアノだけをバックに「ハートノイローゼ?恋は五月病編?」を披露。さらに「あの女?地獄の扉はすぐそこに。ピアノ編?」と続ける。可愛いのに、生々しい。美しいのに、怖い。両極を、当たり前に同じ皿にのせて差し出すような楽曲たち。女性はまだしも、男性はどんな心境でこの表現を受け止めているんだろう？ 存分にショックを受けて欲しい、そんなことを思ってしまった。

　ムーディな新曲「メガネ男子」からは、再びバンドで演奏。途中で胸元からそっとメガネを取り出し、掛けて歌う。そんなエロさも、さめざめの世界観の中では、ごく自然だ。さらに、「あたしの女の子」、新曲の「テイキュウ少女漫画」と、未発表曲を大いに交えながら畳み掛ける。

　「残すところ、あと僅か」という言葉からは、ハンドクラップも起きた「コンドームをつけないこの勇気を愛してよ」、痛快に「バカ」を叫びまくった「みんなおバカさん」と加速していく。そして迎えたラスト。「私個人の話なんですが、子宮頸がんの初期が見つかって、3月に手術を受けました。気付けたことは、息をしていることさえも、当たり前ではなく、笑われるかもしれないけれど、奇跡かもしれないって」──ちょっと震えた声で語ると、「あたしがいなくなれば」を歌い出した。それは、傷付いた人だけが歌える、傷付いている人を救える歌だった。絶唱しながら、切々と言葉を響かせ、彼女はステージを降りた。

　アンコールを求める拍手に迎えられ現れると、ROCK IN JAPANへの出演を発表! (嬉しさのあまり？　噛んでしまっていたのが、愛らしかった)。そして、とびきり切ないラブソング「恋人みたいに」でライヴを締め括った。

【取材・文：高橋美穂】