さめざめ、新アルバム『さめざめ白書』に懸けた想いとは。
さめざめ | 2014.10.01
- EMTG:ついにメジャー初のオリジナルアルバムがリリースされましたね。
- 笛田:はい。メジャーデビューして2年ぐらい経ってるんですが、ここでやっと勝負が出来るところに来たなと思ってます。というのも、デビューシングルの『愛とか夢とか恋とかSEXとか』はもともとインディーズの時に発表していた楽曲で、その後にリリースしたミニアルバムの「さめざめ問題集」も、新曲は入ってますがインディーズの曲が中心だったんですね。そういう意味では、今回が新しいさめざめの世界を知ってもらえる大事な機会だなと思っているので。
- EMTG:その大事な1枚を作るに当たって、方向性のようなものは決めて臨んだんですか?
- 笛田:コンセプトというものはなかったんです。去年ミニアルバムを出した後に「次はシングルを出そう」という話になったので、それ用にいっぱい曲を作ってたんですよ。そしたらいつの間にか10曲揃ってた、みたいな(笑)。なので、私としてはシングルのA面にするつもりで作った濃厚なものだから、アルバムにするにはもったいないかなとも思ったんですが、やっぱりこのタイミングで出したいなと思い、『さめざめ白書』という形にしたんです。
- EMTG:この濃厚さは、そういうことだったんですね。箸休め、なし!でした(笑)。
- 笛田:本当にその通りで(笑)。最初からアルバムとして作るのであれば、もうちょっと多種多様なさめざめがあってもいいのかなと思うんですけど、これはシングルでバン!といきたいという気持ちの表れなので、みんなが姿勢を正して凛として立ってるような曲になってますね。
- EMTG:今回の曲に出てくる主人公は、なんだかこれまでよりも強くなりましたよね。もがき苦しんでいたとしても、それがこの先の何かに繋がることをちゃんと見据えているというか。
- 笛田:たぶん、私自身の成長というのもあるかもしれないです。今回の曲はメジャーになると決まってから作ったものばかりなので、気持ち的にもかなり前向きでしたからね。いつものさめざめらしさ――叶わないものとか切ないものはありつつも、聴いた後にどこか「明日も頑張ろうかな」って気持ちになれるようなエッセンスをもう少し出していきたいなという部分もあったので、そういう風に感じてもらえたのかなと思います。
- EMTG:なるほど。
- 笛田:インディーズの頃は、自分のやりたいことを“これくらいの人に聴いてもらえればいい”ぐらいの気持ちで作っていたんですね。意識的に。でも今は、欲張りですけどたくさんの人に聴いてほしいし、さめざめを勘違いしている人にも1曲好きになってもらえたらそこから広がっていく可能性みたいなものを信じたいなという気持ちが強いんです。そういう変化もありましたね。
- EMTG:「それでも生きなくちゃ」という曲は映画「幻肢」の主題歌として書き下ろされたものですが、これもたくさんの人に知ってもらうきっかけのひとつですね。
- 笛田:はい。エンディングで流れることはお聞きしていたので、映画を一緒に作るような気持ちで書き上げました。脚本を読んで感じた純愛を、さめざめの中でもちょっと違う感じのラブソングに出来たらいいなと思いながら。
- EMTG:映画のテーマがあったとはいえ、さめざめが「それでも生きなくちゃ」と歌うこと自体がなんだかすごく必然のように思えたんですが。
- 笛田:たしかにそうかもしれないです。私自身、エッチな歌だけを歌うアーティストではなく、女の子の言えない本音を歌うというところはありつつ、生きていくことへの葛藤とかも今まで描いてきたつもりなんですね。この「それでも生きなくちゃ」は、そこがフィーチャーされた曲かなと。恋人に限らず、家族など大切な人の命が失われた時の気持ちも重ね合わせたいなと思いながら書いた曲なので、私自身もいいきっかけをいただいたなと思いましたね。
- EMTG:映画をきっかけにこのアルバムを手に取られた方は、たとえば「We are メンヘラクソビッチ」なんてタイトルにまず驚かれるでしょうけどね(笑)。
- 笛田:全く知らない方は(笑)。でも曲自体は結構真面目でいい歌だったりするので、そういうギャップを楽しんでもらいたいなというのはこれからも続けていきたい部分です。
- EMTG:先ほど必然という言葉を使いましたけど、アルバムを締めくくる「清く正しく美しく」も、きっと今さめざめとして書くべき曲だったんだろうなと思いましたし、この曲があるからこそ1stアルバムとして完成したんだろうなと思いました。
- 笛田:ありがとうございます。去年子宮頸がんになって少しお休みをさせていただいたんですが、そんなに深刻な状況ではなかったので自宅で療養してたんですね。その時に出来た1曲です。いつのまにか音楽を始めて、世間的には「…お!?」と思われるような言葉を使うような音楽をやるようになっても、両親は応援してくれている。自分の中でも、さめざめとしてやってきたこととか、ごくごく普通にここまで生きてきた自分の人生を否定したくない。でも、結婚して子供を産むというひとつの幸せの形を、この年になってもしてあげられてないことをどこかで申し訳ないと思う自分もいて。
- EMTG:いろいろ思うところがあったわけですね。
- 笛田:たとえば女性だったら一度くらいは親に言えない恋をしたりだとか、親に話せなかった出来事とか、あると思うんです。そういうものと重ね合わせて聴いてもらえたらいいなと思って書いたんですよね。こんないろんなことを歌ってますけど(笑)、私は真面目に音楽と向き合ってるし、みんなも自分の人生に後悔しないように向き合ってくださいっていうメッセージが込められたかなと思っています。
笛田さおりのソロプロジェクト・さめざめが、メジャー初となるアルバム『さめざめ白書』をリリースした。「これで伝わらなかったら、もうさめざめは理解してもらえないかもしれない。それくらい、この作品に懸けてる自分がいます」という彼女の言葉を借りるまでもなく、この作品は、さめざめというアーティストの今とこれからを正しく伝える作品になっている。これまではどちらかというと、「愛とか夢とか恋とかSEXとか」や「コンドームをつけないこの勇気を愛してよ」といった大胆な言葉遣いが先行し、色眼鏡や勘違いで通り過ぎてきたリスナーがいたかもしれないが、この作品に触れればきっと、その言葉の奥にあるとてつもない純粋さに息を飲み、見えなかったものが見えるようになるはずだ。ちなみに本作の「楽曲」だけでなく、彼女の声による「朗読」(※初回限定盤特典CD)、初の「書籍」(※「誰にも言えない恋ばっか」)など、用意された入り口はいろいろ。直感を信じて、その手を伸ばしてみてほしい。
【取材・文:山田邦子】
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リリース情報
さめざめ白書(初回限定盤)[2CD]
2014年09月24日
ビクターエンタテインメント
02. We are メンヘラクソビッチ
03. テレフォンナンバー
04. それでも生きなくちゃ
05. ヤミツキッス
06. 一心同体逆説理論
07. 恋だろ、恋
08. LOVE中毒
09. エッチスケッチワンタッチ
10. 清く正しく美しく
【初回限定盤特典CD】
別冊「誰にも言えない恋ばっか」
01. 朗読「愛のあるセックス」
02. コンドームをつけないこの勇気を愛してよ
(さめアコバージョン)
03. 朗読「恋だろ、恋」
04. 好きだから(さめアコバージョン)
05. 朗読「春売りの少女」
06. 春売りの少女(さめアコバージョン)
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お知らせ
赤い糸
今グッズのデザインを考えているんですが、今回のアルバムや書籍でも使われている赤い糸をモチーフにしたものにしたいなと思い、赤い糸にはどんなネタがあるかな?ということで検索しました。ある画像からインスピレーションを受け、パパッとデザインも決定。出来上がってくるのが楽しみです。
■ライブ情報
「さめざめ白書」レコ発単独公演
『さめざめ白書祭』
2014/10/10(金) LIVE HOUSE FEVER(新代田)
※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。
■さめざめ 笛田さおりが、恋愛の言葉の本「誰にも言えない恋ばっか~さめざめ白書~」を出版。
9月24日発売のNEWアルバム「さめざめ白書」初回限定盤CDに収録される別冊「誰にも言えない恋ばっか」は、この恋愛の言葉の本と連動した内容。
【作品詳細】
「誰にも言えない恋ばっか~さめざめ白書~」
著者:さめざめ
定価:1,300円(税別)
ページ数&色数:160頁、カラー&2色展開(予定)
発売元:ディスカヴァー・トゥエンティワン