表も裏も、本音も建て前も、全てフロアと分かち合った、PAGEのレコ発ライヴ!!
PAGE | 2013.07.08
会場に入り、フロアにしばらくいると、通例のライヴハウスとは多少お客さんの層が違っていることに気がついた。年齢的にはPAGEと同世代か、もう少し若いかもしれない。フェスともクラブとも違ったお客さんたち。みんなキラキラとした目で、イベントの開始を待っている。いや、中には若干不安そうな瞳をしている人たちも…。しかしこの日は、その不安そうな瞳たちまでもが、終いには嬉々とした瞳子へと変わっていく、そんな魔法を目の当たりにした。
この日は、PAGEのニューシングル「MY NAME IS xxxx」のリリースイベント。『中ニ病でもライブがしたい!』?ぼっち全員集合?」とタイトルされ、ゲストにネットラップ界の先輩らっぷびと、同世代女性3人組ロックバンドSHISHAMOを迎え、行なわれた。
まずイベントは、「PAGEパミュパミュです」とちょっと失笑気味の挨拶も交え、PAGE自らによる注意事項から入った。
そして一番手はらっぷびと。イベントの発火役として現れた彼は、ラップトップ&CDJを駆使するDJをバックに、頭からのコール&レスポンスで会場を温めると、疾走感のあるトラックに上向きなリリックも頼もしい「再動」からライヴを始動させた。続く、プリセットされた女性ボーカルの歌声と共に歌った「シンクロキューブ」や、トロピカルなトラックとライミングで会場をショートトリップさせた「Wack Wack Rhythm Island」、頭のリリックがトンでしまい、やり直し。が故のラップ中の「どうにかなる」を体現せしめた「どうなかなる」、そして新曲「軋轢プロナウンス」では、オンレイをサイドMCに交え、疾走感溢れるロックテイストたっぷりのトラックの上、情報量ふんだんなラップが会場の温度をグンと引き上げた。
続いては、今春高校を卒業したばかりの女性3人組SHISHAMOが登場した。PAGEより多少先輩に当たる彼女たちだが、放つ音楽性や歌内容は、まさしく同世代の子たちの共感を得ること間違いなし。キュートな歌と、分りやすくてキュンとなるメロディ、一筋縄ではいかない曲展開という自身の魅力を短い時間ながら存分に伝えていく。
高校生の日常や思い、考えていることが各曲に乗り、同世代をうんうんとリアルに頷かせ、上の世代にも、"そうそう、そんなことあった、あった!"と、この日も幅広い人の同感性をロックしていった3人。サビでの上昇感が心地良かった「夢のはなし」、宿題を片づけるまでのあれこれが歌われ、その浮かんでくる光景も微笑ましい「宿題が終わらない」、会場にタオルの大旋回を呼び込み、「♪持っていない方は物販コーナーまで♪」と、歌中促した(笑)、「タオル(仮)」、ボーカル宮崎朝子(Vo.&G.)の艶やかな歌声が印象的だった「いきたくない(仮)」では、多くの同世代を頷かせていた。
また、スリリングさとサビのストレートさが特徴的な、男性目線の「しゃべりたい(仮)」では、松本彩(B.)、吉川美冴貴(Dr.)のリズム隊が、16ビートやラウドな部分、軽やかさから重さまで、スムーズに幅広く展開出来る奥の深さを体現。中でも最も私が感心したのは、既に各楽曲に大サビと呼ばれる、最後にもう一度、転調させてサビを持ってくる楽曲の多いところ。ここまでの楽曲の練りは、この歳ではなかなかできないもの。これらがあるが故、彼女たちの各楽曲は、シンプルながらも、どの曲も飽きなくドラマティックに響く。
そして最後は、会場中に卒業式のあの日、あの時を呼び起こし、それを振払うように走る演奏が会場中の気持ちを同化させた「第3ボタン」で締め。ラストのPAGEへとしっかりとバトンを渡す。
そして、トリはPAGE。この日は、ベース&キーボードのクボタマサヒコ、ギターにカトウタロウ、ドラムにマシータと、3/5元BEAT CRUSADERSの「大きいお友達バンド(通称OTB)」&DJをバックに挑んだ。彼至上最長のライヴ尺と布陣のセットリストで行なわれたこの日は、彼の18回目の誕生日だった。
ライヴは1曲目の「You topia」から、いきなりキュンとした想い出が会場を誘った。キメのフレーズを会場全体で歌うことで楽曲を成立させ、早くも一体感が生まれていく。「ラストまでエクスペクトして下さい」の言葉の後、放たれた「エクスペクト」では、疾走感と勢いのある楽曲が再度ライヴを走り出させる。そこに会場中がライドオン。作品以上の臨場感や生命力がフロアに満ちる。 「一人一人のスタンスで揺れる、そんなライヴになればと思っています」とPAGE。ここからは、みんなが思い思いのスタンスやノリ方/踊り方でライヴを楽しんでいく。引きこもりが何か新しいものを見ようと踏み出す、その一歩が歌われた「ニューデイノミー」、雅びやかなサウンドの上、トーンも多少ウェットに歌われた「たりら」、「♪からっぽな空の下♪」と歌いながらも、その向こうに待っている何かを期待させ、信じさせた「からっぽな空の下で」、<会える人とは、会えなくなってしまう前に会っておくべきだと実感した>との後に伝えられ、地元に居る両親や家族へのリスペクトを伝えた「MY NAME IS xxxx」は、この日、会場に訪れた、ネットやTwitter等のSNSで彼を知り、繋がり、もっとその歌をリアルに、近くに感じたいと願い、ライヴハウスという空間に勇気を振り絞って参戦した者たちへの力強い支柱となった。気づけばオープン当初、不安げだった人々も、嬉々とした顔をし、思い思いに楽しんでいる。会場全体が彼の放つ歌やリリック、そして思いや気持ちに安心して心を寄り添わせている。
ライヴは後半、SEKAI NO OWARIの楽曲にPAGEのラップを乗せたビートジャックバージョンの連発で更なる盛り上がりを見せるも、やはり最後は、実に彼らしい楽曲で幕を閉じようとしていた。それは、「自分線空回り」。”自分が望んでもいないのに、どうしようもなく進まされている”と感じている気持ちを、とぼとぼとしたラップに乗せて吐露するようなナンバーであった。最後に本音を正直に歌うところに、彼の真摯さと、が故の、ある意味、人付き合いがシビアで、誰かれと気持ちを預けたがらない、その層の人たちの気持ちを一身に吸心していく理由が分かった。「♪大声でもう疲れたと言わせて欲しい♪」のリフレインは、胸に痛いものの、この日集まった、私を含む多くの気持ちとリンクしていった。
PAGEにとってもこの日は、やはり格別だったのだろう。当初予定のなかった「エクスペクト」の再演を含む4曲がアンコールではラップされた。加え、サプライズとしてこの日18歳の誕生日を迎えた彼に、バックの<大きいお友達バンド>からバースディケーキのプレゼントが。そして、このアンコールでの4曲は、全て心の明と暗が織りなす縄のように各楽曲と共にラップされた。裏も表も、本音も建て前も、上辺も実直さや真摯さも全て、フロアとステージで分かち合い、この日のライヴは幕を閉じた。
再び客電が全開となった会場に満ちていたのは、大満足そうな顔、顔、顔。入場時に窺えた不安そうな瞳の人たちも、今や嬉々とした瞳子の輝きに変わっていた。多くの人が、”やっぱり独りじゃなかったんだ!!”と、帰り道、いきなり誰かに伝えたくなるような嬉しそうな表情で会場を後にしていく。その姿が非常に頼もしく映った。
【取材・文 池田スカオ和宏】
リリース情報
セットリスト
「MY NAME IS xxxx リリース記念イベント『中二病でもライブがしたい!』〜ぼっち全員集合〜」
2013.6.22@下北沢GARAGE
らっぷびと
- 再動
- シンクロキューブ
- オーバーキルアクションリプレイ
- Wack Wack Rhythm Island
- どうなかなる
- 軋轢プロナウンス feat.オンレイ
- When They Cry
SHISHAMO
- お菓子作り
- 夢のはなし
- 宿題が終わらない
- タオル(仮)
- いきたくない(仮)
- しゃべりたい(仮)
- 第3ボタン
PAGE
- You topia
- エクスペクト
- ニューデイノミー
- たりら
- からっぽな空の下で
- Colorful
- MY NAME IS xxxx
- スターライトパレード(SEKAI NO OWARIビートジャック)
- RPG(SEKAI NO OWARIビートジャック)
- 自分線空回り
- MY NAME IS xxxx(asamiya Remix)
- Hello Negative
- ラストソング
- エクスペクト
お知らせ
ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2013
2013/08/04(日)国営ひたち海浜公園
World Wide Words -Day-
2013/08/10(土)渋谷WOMB
MUSIC MONSTERS-2013 summer-
2013/08/25(日)Shibuya O-EAST・Shibuya O-WEST・duo MUSIC EXCHANGE・Shibuya O-nest・Shibuya O-Crest・7th Floor(いずれか1会場)
※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。