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サカナクションが台湾で行なったワンマンライブの模様をレポート!

サカナクション | 2013.07.09

 高評価を受けたアルバム『sakanaction』を掲げてのツアー“SAKANAQUARIUM 2013 sakanaction”は、 画期的なサラウンド・システムを導入した幕張メッセのライブでピークを迎えたかに見えた。が、サカナクションはファイナルとなる台北のライブハウス“THE WALL”で、さらなる成果を獲得したのだった。
 日本と気温はさほど変わらないが、湿度の極端に高い台湾の首都・台北。市街にあるTHE WALLへ降りるエントランスの階段には、今日のライブを観に来たオーディエンスたちが列を作っている。期待にざわめいているその光景は、日本とほとんど変わらない。THE WALLはキャパ600くらいの箱で、2daysの2日目、ツアー・ファイナルのこの日はもちろんソールドアウトしている。
 オーディエンスは18?28才くらい、女子7割弱、男子3割強、スタンディング・ライブに慣れている様子で、観客のうち日本人は50人ほどという構成だ。開演前にサウンドチェックの音が響いただけでも歓声が上り、期待の大きさが伝わってくる。

 暗転になるとフロアから勝手にハンドクラップが起こり、イントロのエレピの音で大歓声が上がる。様子見の雰囲気だった昨日とは大違いだと、そばの日本人客が教えてくれた。今日こそ、サカナクションの台北ライブの真価が問われる。5人がラップトップに向かってステージ前に並ぶオープニングは、これまでどおり。オーディエンスは今にも踊り出しそうだ。一瞬、真っ暗になった後、再び点灯された照明の中に、それぞれの楽器の位置に素早く移動したメンバーの姿が浮かび上がると、最初の爆発が起こり、会場中が踊り出した。
 「アイデンティティ」のイントロで大合唱したり、難易度の高いハンドクラップを見事にやってのけたり、台北の観客には驚かされっぱなしだが、いちばんビックリしたのは“日本語の理解力”。山口の日本語によるMCをすぐに理解して、笑ったり、歓声を上げたり。サカナクションに対しての関心の高さばかりでなく、J-ROCKや日本語に対しても好奇心旺盛なオーディエンスに囲まれて、このライブがアジアのロックシーンにとって、今後、重要な意味を持つに違いないことを確信したのだった。

 反対にサカナクションがオーディエンスを驚かせたのは、レーザーによる演出だった。「ルーキー」でグリーンの光がTHE WALLの空間を満たすと、オーディエンスはトランス状態に近いワイルドな反応を示す。するとそれがステージ上のメンバーに伝わって、フロアが一気にヒートアップする。

 最大規模の幕張ライブに比して、THE WALLは今回のツアーの中では最小規模のひとつにあたる。しかしサカナクション はそんな落差をまったく感じさせないテンションで、演奏し、パフォーマンスする。オーディエンスも幕張に劣らないリアクションを返す。これまで数多くの日本人アーティストがアジアでライブを行なってきたが、その中でも屈指の深いコミュニケーションが、THE WALLにはあった。シングル曲のほとんどを一緒に歌うオーディエンス。「テレビは苦手で」と、山口一郎がバンドの現状を包み隠さず話す。「僕らは音楽に対して真面目だけが取り柄のバンドなので、これからもよろしく」 と真摯に挨拶すると、観客からは大きな拍手が起こったのだった。
 レーザー以外には大規模な演出はなく、ほとんど素の状態でプレイするサカナクションが、今回のツアーでの大きな成長をダイレクトに伝えてくれる。バンドとして、とてもタフになった。最低限の機材でも、幕張とまったく遜色なく、オーディエンスを彼らの世界に巻き込んでいく。台北でのライブは、図らずもサカナクションの現状の力を如実に物語っていた。

 アンコールの1曲目は「ストラクチャー」。コラージュされたサウンドに乗って、この日いちばんの大合唱が起こる。あまりの盛り上がりに、5人のメンバーは顔を見合わせてニッコリ。
「I love you,TAIWAN! 台湾、最高!! 日本のバンドなのに、こんなに来てくれるとは思っていなかったので、ビックリしてます。今やった“ストラクチャー”のコーラスは♪ラララ♪だけだから、すごく一緒になれた。みんなと僕たちが繋がったよね。箱が鳴ってた。感動しました。今回のツアーの中でもいちばんの鳥肌が立ちました。謝謝(シェーシェー)! もう、台湾に引っ越そうかな(笑)。ここに来てるのは、きっとセンスのいい人。センスのいい人たちをもっと集めたい。僕たちはもっと頑張りますので、そうしたらまた台湾に来ます」。
 そんな思いを込めて「ナイトフィッシングイズグッド」を歌う。エンディングで山口は、マイクのない場所でもう一度「台湾、最高!!!」と満面の笑みで叫ぶ。素の声なのにその声が聴こえてくるのは、ライブハウスならではだ。そうしてその究極の“ドヤ顔”には、今までに見たことのない山口がいた。
「僕たちの音楽が台湾にも届いたと、今日、実感しました。ツアーが終わって、部屋で曲を作るとき、今日の経験を曲にしたくなると思います。サカナクションは“アジア”でやっていきます。今日はどうもありがとう」。

 ライブ後、楽器の撤収をしているメンバーと話す機会に恵まれた。
「今日は呑むぞー!」とキーボードの岡崎英美が興奮の笑顔で叫ぶ。「アンプをこっちで借りたので、音の調整に気を遣いました」とギターの岩寺基晴。「楽しかったですよ」とベースの草刈愛美。「台湾のお客さんは、ある意味、日本のお客さんよりも素直に喜んでくれていて、みんなすごくいい顔をしてました」とドラムの江島啓一。打ち上げの席では山口が「ここに来る前は、もっと距離があるのかと思っていたんだけど、全然違った。またここで絶対やりたい」と、ウィスキーのグラスを片手にまたしてもドヤ顔で語っていたのだった。
 すごいモンを見てしまった。サカナクションの未来が、ますます楽しみになった台北の夜だった。

【取材・文:平山雄一】

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ビデオコメント

リリース情報

sakanaction (初回生産限定盤CD+DVD)

sakanaction (初回生産限定盤CD+DVD)

2013年03月13日

ビクターエンタテインメント

<CD>
01、intro
02、INORI
03、ミュージック
04、夜の踊り子
05、なんてったって春
06、アルデバラン
07、M
08、Aoi
09、ボイル
10、映画
11、僕と花
12、mellow
13、ストラクチャー
14、朝の歌
15、『バッハの旋律を夜に聴いたせいです。』(Ks_Remix)

<DVD収録内容>
初回限定盤の特典DVDならびにBlu-rayにはサカナクションの2012年の活動を記録した
様々な映像や写真データをカレンダー形式で楽しめる「sakanacalender 2012」を収録。

10曲のライブ映像、夏フェス会場でのライブ写真、「僕と花」「夜の踊り子」ミュージックビデオのメイキング、山口一郎自宅、スタジオでのレコーディングドキュメンタリー等となっている。
さらに、Blu-rayにのみMUSIC VIDEO3曲を収録。

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お知らせ

■ライブ情報

JOIN ALIVE 2013
2013/07/21(日)いわみざわ公園

ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2013
2013/08/02(金)国営ひたち海浜公園

SONICMANIA2013
2013/08/09(金)幕張メッセ

サンスター オーラツー presents 25th ANNIVERSARY J-WAVE LIVE 2000+13
8月16日(金)国立代々木競技場第一体育館

SPACE SHOWER SWEET LOVE SHOWER 2013
2013/08/31(土)山梨県 山中湖交流プラザ きらら

RUSH BALL 15th
2013/09/01(日)泉大津フェニックス


※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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