ユニコーン、手島いさむ50歳を祝う日本武道館に史上最も暑い衣装で登場!
UNICORN | 2013.09.05
あれは4年前のこと。ユニコーンのドラマー川西幸一の生誕50周年イベントがあったが、今年はギタリストの手島いさむが50才。それを記念しての“手島いさむ50祭 ワシモ半世紀”というわけだ。2DAYSの初日が、誕生日当日というわけで、満員のオーディエンスも開演前からお祭りムードでワイワイがやがや。川西のときと同じく、バンドマン愛と音楽愛と笑いに満ちた一夜となった。
トップバッターは電大。昨年デビューして、わずか1年間でアルバム3枚を発表し、ツアーも3回行なうという、年齢からは想像できない絶倫バンドだ。メンバーは手島、川西と、ユニコーンのベースEBI。EMTG MUSICで3回のツアーすべてをレポートしているが、電大の最大の武器は“グダグダしゃべり”。その機先を制するように、2曲演奏した後、「今日はあんまりしゃべってる時間、ないよ」と手島が言う。だが、それをまったく無視してEBIが「てっしー、開会宣言とかやらないの? 喜びの踊りでもやったら」。「いやいやいや(笑)。今日は、振り返るじゃないけど、自分がやってきたことを観てもらおうと思ってます。10代の頃、地元の広島で川西さんと“ストリッパー”っていうバンドをやってまして、今日はその時のボーカルの河名直行さんに来てもらってます」。「ま、現役ストリッパーですね(笑)」と川西。今でもバンドを続けている河名は、ストライプのジャケットと黒のレザーパンツ姿で登場。パンキッシュな「Rock’n Roll Radio」をサクッと歌う。川西と同い年の54才とは思えないスピード感のあるパフォーマンスに、会場が沸く。河名を送り出した手島は、「一緒に演奏するのは、30年ぶりですよ。当時、高校生だったEBIくんが、ストリッパーを観に来てました」と感慨深そうに語ったのだった。
電大はその後、2曲を演奏。ライブハウスと変わらない演奏なのに、武道館を充分に楽しませる。広島から始まった手島の歴史の奥深さを感じて、ちょっとウルッときてしまった。
インターバルには、瀬戸内に実在する島、“手島”をてっしーが訪ねる映像“手島 in 手島 その1”が流される。凝った企画の割にはしょぼい内容で、会場が和む。
続いての登場は“阿部民バンド”。阿部義晴と奥田民生を中心に、真心ブラザーズなどユニコーンを取り巻く連中が、てっしー50祭のお祝いに駆け付けたというメンバー構成だ。だから、一筋縄でいくわけはない。SPARKS GO GOの八熊慎一と奥田がベースとドラムを交代で担当する変則演奏ながら、見せ場を作るのはさすがだった。
また、阿部のミニアルバム3部作の第1弾『R』の「SUN SET SUN」と、第2弾『G』の「SO SO GOOD」が、世界で初めてライブ演奏されたのも、嬉しいビッグニュース。いつこの新曲をライブで聴けるのかなと楽しみにしていたファンは、フライングVを抱えて♪だいたいは 問題なし♪とニコニコ歌う阿部のサービス精神に、喜びの拍手を贈る。
「こんばんは?、特に言うことはございません。手島さん、おめでとうございます?。さっさと次の曲です?」と奥田。八熊がドラムを叩き、奥田がベースを弾き、YO-KINGがブルースハープを吹いた地球三兄弟の曲「呼びにきたよ」が、心に沁みた。手島はこの”友達ソング”をどこで聴いているのだろうと思うと、温かい気持ちになった。
が、それも束の間、八熊がリズムボックスを抱え、YO-KINGがカウベルの代わりにシンセパッドを叩き、桜井秀俊がライトハンド奏法に挑戦したユニコーンの大ヒット「WAO!」は、文句なしにグダグダ。これが“阿部民”流お祝いってことで(笑)。
3番手は“手島いさむソロバンド”。手島はユニコーンや電大とは別にソロ・プロジェクトを進行しているが、彼のルーツであるハードロックやインスト・ミュージック、のんびりした歌モノと、その幅は広い。手島の男っぽさと、ロマンチックな面がうかがえて、興味深いライブになった。途中、ゲストにフジタユウスケと、PUFFYの大貫亜美が登場。フジタがPUFFYに書いた「欲望」をセッションする。ボーカルはフジタが担当し、なんと大貫はギタリストとして参加。ポップなロックチューンを一緒に形作っていく。ここにも手島の音楽愛が見えて、楽しい時間になった。
さてさてイベントのトリは、もちろんユニコーンだ。復活してからのユニコーンは、ライブの度にシャレの効いた全員お揃いのコスプレで登場するのがお約束。今回はどんなかな?と会場が注目する中、まず4人がイギリスの近衛兵スタイルで現われた。川西のときは“モーツァルト”のコスプレだったから、中世ヨーロッパつながりのジョークだ。
4人は赤い軍服に黒の毛皮の帽子をかぶり、しかも近衛兵特有のやり方で、足を曲げずに行進する。さらに手島がナポレオンに扮した将軍服に身を固め、エコポニー(自分で動かす馬型乗り物オモチャ)にまたがって現われたからたまらない。会場の笑いは最高潮に達する。ステージ中央には、今日の主役てっしーのために作られた台があり、おもむろにてっしーが位置に付いてライブが始まった。
1曲目の「Feel So Moon」から、めちゃめちゃカッコいい。近衛兵軍団の背後には今までのスクリーンが7面に割れて設置され、宇宙の映像が流れる。いま自分がいつの時代のどこにいるのか、見失いそうになる。続く「ケダモノの嵐」で、さらに演奏は鋭角的になる。4thアルバムに収められていたこのファンキーな曲は、ユニコーンの実力がグッとアップしたことを告げたナンバー。今年のユニコーンは、ずいぶん尖がっている。
てっしーが歌う「オッサンマーチ」では台がせり上がり、「服部」では超ド級の歓声が上がる。が、このあたりからメンバーが少し苦しそうな様子を見せる。なんといっても今回のコスプレは、史上最高に暑い仕様。終演後の楽屋で川西が「帽子がつらかった。汗が止まらないから、イヤーモニターがビショビショで聴こえないんだよ」。阿部も「わざわざ本物の毛皮を貼ってるんだもん。あの帽子は暑いな」。それでも、誰ひとり凶器の帽子を脱がないのがユニコーンなのだ(笑)。大真面目にジョークをやり遂げるから、こちらも心から笑える。我慢比べのようなライブを、5人は力技で乗り切っていったのだった。
再びポニーにまたがって、手島はアコギで「オールウェイズ」を弾き語る。その間、他の4人は直立不動で聴いている。たまにEBIが首を振ったりするのが面白い。新曲「新甘えん坊将軍」は、まさに手島のための歌。甘えん坊の50才に、大きな拍手が贈られる。「すばらしい日々」では、5つのスクリーンに5人がそれぞれ映し出されて、バンドらしいエンディングとなった。
アンコールは、先に手島が登場してメンバーを呼び込むと、4人はまたまた兵隊歩き。それを追って、てっしーの勇姿が描かれた特大バースデーケーキが運び込まれる。台に上がった手島に、4人が巨大クラッカーを向けてヒモを引っ張ると、銀テープが手島の顔面を直撃。同時に、会場にも銀テープが舞った。
最後の最後は、「HELLO」。汗みどろになりながら、5人は全力でパフォーマンスする。手島の合図で演奏を終えたとき、手島はめでたく50才になったのだった。
【取材・文:平山雄一】
【撮影:TEPPEI】
ビデオコメント
ライブ終了後の興奮を会場からお届け。
楽屋での打ち上げ秘話も公開!
セットリスト
手島いさむ50祭 ワシモ半世紀
2013.08.27@日本武道館
電大
- ハレルヤ
- 愛の陽炎
- Rock’n Roll Radio
(ゲスト:河名直行(The STRIPPER)) - Body Guard
- オートクチュール
- 御免ライダー
- SUN SET SUN
- 呼びにきたよ
- 愛する人よ
- SO SO GOOD
- WAO!
- どか〜ん!
- birds
- around again
- 欲望
(ゲスト:大貫亜美、フジタユウスケ) - Circles
- あの丘へ
- Feel So Moon
- ケダモノの嵐
- 裸の太陽
- オッサンマーチ
- WAO!
- 服部
- オールウェイズ
- 新甘えん坊将軍
- オレンジジュース
- スターな男
- すばらしい日々
- ゴジュから男
- HELLO
阿部民バンド
(阿部義晴/奥田民生/八熊慎一[SPARKS GO GO]/YO-KING[真心ブラザーズ] /桜井秀俊[真心ブラザーズ]/木内健)
手島いさむバンド
ユニコーン