7月に1stフルアルバム『FLASH4』をリリースし、8月上旬からアルバムを掲げたツアー「アンモフライト　ワンマンTOUR 2013 合言葉は“FLASH4”」を行っていたアンモフライト。福岡、大阪とまわり、8月11日には東京公演であるShibuya eggmanに登場した。

　満員のオーディエンスが待ち構える中、ライブは意外にもアコースティックギターの音色から始まる「sewing a moment」でスタート。『FLASH4』ではラストを飾るボーナストラックであり、かなり壮大なアレンジのナンバーだ。オープニングに敢えて聴かせる曲を持ってきたところは、なかなかのチャレンジ魂である。ただ、この作戦により、ライブにはいい緊張感が生まれ、オーディエンスはバンドの演奏に引き込まれていった。2曲目は「ライフ・イズ・ア・ギャンブル」。アッパーチューンでライブハウスらしいノリへとギアチェンジ。ボーカルの津久井恒仁が「し~ぶ~や~！」と一喝すると、静から動へと空気は一変。「トーリ」「Moonlight St.」など、テンポのいい曲が飛び出し、メンバーはもちろん、観客からも笑顔がこぼれる。5曲目の「cheese:-)」も、聴けば笑顔になれそうなナンバーだ。演奏前に津久井が「曲の最後、携帯、スマホで“チーズ”しちゃってください」と前置きしたように、エンディングでは全員が携帯&スマートホンで記念撮影する光景が見られた。中盤では曲のテンポを落とし、聴かせる曲をフィーチャー。「reverse clock」やシングル曲でもあるバラード「アルタルフ~この恋の終わりに~」と、しっとりと聴かせていく。津久井のボーカルにもグッと感情がこもる。

　このあと、ちょっと長めのMCタイムが設けられ、メンバーの人間味あふれる一面が顔を出す。

　「皆さん、ライブ楽しんでますか？　合言葉、覚えてますか？（かなり唐突）。練習ナシでいけますか？　合い言葉は？――」と、いきなり観客に合言葉を突きつける津久井。しかし、ファンも心得たもので「FLASH4!!!」と返し、完璧なリアクション。かと思うと、「最近、おばあちゃんちにホームステイしてるんですよ……ちょっと太りました（苦笑）」と津久井。「え？　そうなの？」とギターの久保田庸友もすかさず突っ込みを入れる。

　ホノボノしたやりとりに笑いが起こり、すっかり打ち解けたムードに。このあとも「PRINCIPLE」などの聴かせる曲が続いたが、バンドは集中力を保ったまま、熱いプレイを展開した。10曲目の「REC」は2ndシングルのカップリング曲で、夏にピッタリの曲。「さびのメロディーは一番簡単なところです！」と津久井が観客をうながし、「ラララ……」とサビでの合唱を引き出した。この瞬間に実感したが、彼らの曲はとにかくキャッチーで覚えやすい。おそらく、この場で初めて聴いた人がいたとしても、しっかりと歌えていたことだろう。

　この後、再びMCタイムへ。このコーナーでは、各メンバーが各地で順番にメインのトークをすることになっていたようで、この日の担当はベースの鳥居塚尚人。

　「昨日、シゲ（＝ドラムの葛西一茂）の誕生日でした。ふたり（津久井＆久保田）プレゼントあげてたでしょ？　俺、あげてなくて、今この場であげようかと……」と、言うやいなや、ステージ後方からプレゼントを取り出し、葛西に直接プレゼント！　その中味はなんとダイエット食品（笑）。ダイエット中という鳥居を気づかった気の利いたプレゼントだった。メンバー間の和気あいあいとした空気が伝わってきて、何だか暖かい気持ちになる。鳥居塚のサプライズでいい流れができたところで、そろそろ後半へ。ここからは勢いのある曲達の出番だ。「スーパーステップ」「カメレオンダンス」、そしてこの時期には完璧な「夏色ドット」などなど、ポップな要素に力強さを加えた演奏で、満員の会場を熱く盛り上げた。爽やかな印象のある彼らだが、こういうパワフルさを感じられるのもライブならでは。本編ラストにはアルバム（通常盤）のラストを飾る「奇跡」が用意されていた。津久井は「奇跡を待つだけじゃなく、掴みに行くために、いい音楽を作っていこうと思います」と語って曲へと導いた。シンプルな中にも普遍的なテーマを盛り込んだ曲であり、オープニング同様、シメにも聴かせる作品を持ってきたあたりには、バンドの自信や成長が感じられる。

　余韻を残して本編を終えた彼らだが、もちろんアンコールでは、ハジケてくれた。メジャーデビュー曲「桜グラフィティ」や「Hello Tomorrow」で、アンモフライトらしいキラキラのポップチューンを披露。メロディーのよさを重視しながらも、熱いところはキッチリとアゲまくり、清々しくシメてくれた。熱さも清々しさも合わせ持つライブ……それこそが、アンモフライトの醍醐味なのだと実感した。

【取材・文：海江敦士】