エレカシ、文句なしの完全復活!再会の地、野音は歓喜に包まれた
エレファントカシマシ | 2013.10.17
「エレカシ完全復活!」と誰もが認める素晴らしいライヴだった。歌いたい、歌を伝えたいという宮本浩次の熱い思いが、最初から最後まで溢れていた。
SEもない中を無言で現れ、沸き上がる歓声の中で「優しい川」からスタート。どっしりと腰の据わった演奏はまぎれもなくエレファントカシマシで、再会の喜びが滲み出るメンバーを従えた宮本は以前と変わりない声でしっかりと歌っている。約1年ぶりに聴く、タメすぎなぐらいタメたグルーヴと力強い宮本の歌に圧倒される想いがした。
「ハロー、エヴリバディ!」と宮本が呼びかけ、矢継ぎ早に演奏して行く。「四月の風」「悲しみの果て」「東京からまんまで宇宙」とお馴染みの曲が続けばオーディエンスも一緒に歌ったり腕を高く上げたりと、約1年ぶりの再会を心から喜んでいるようだ。
充分に温まったところで「みんなの前にいるとしょちゅうコンサートやってたみたいだけど、1年ぶりぐらいで」と宮本は話し出した。昨年10月、宮本が急性感音難聴を発症したため恒例の日比谷野音でのライヴが中止となったが、開催予定日だった10月14日に宮本は病を押してにステージに立ち、12曲を披露した(内1曲はメンバーとともに演奏)。それ以来彼は、この日が来るのを待ちこがれてただろうが、そんなことはおくびにも出さず、ベースのセイちゃんこと高緑成治が練習を休んでたが怒れなかったなどと休養中のことや、耳は聴こえているが守るためにイヤモニをつけている、など皆が気にしていそうな事を軽い調子で話す。
「1月になって曲をいっぱい作って、それをバンドでやって、みんなに聴いてもらおうと練習したんです。面倒くせえなあってうのがオヤジになってから口癖になりましてね、そういう歌です」。つっかかるようなギターを宮本と、金髪のロングヘアーになったイシくんこと石森敏行が合わせる「めんどくせえ」から「デーデ」、「星の砂」とアグレッシヴな熱気が高まっていく。オーディエンスは夕闇の中で掌を星に模してひらひらと返し、宮本はドラムのトミこと冨永義之を煽る。やり場のない苛立ちをダイレクトに歌に詰め込むエネルギーは、15歳で書いたデビュー曲「デーデ」から新曲まで少しも変わっていないようだ。続く「涙を流す男」は昨年10月に出たシングル「ズレてる方がいい」のカップリングだが、レコーディングが終わって間もなく自分が入院した事から暗示的な曲だと思ったのだそうだ。「それでもドンと行くぜ、という歌です、聴いてください」と、軽快なギターに乗せて歌い出した。昨年10月の野音では弾き語りで披露しているが、この日はサポート・ギターのヒラマミキオ、蔦屋好位置との演奏がカラフルに歌を彩る。次も新曲で「偉くなりたくて生きて来た。そういう歌です」と「はてさてこの俺は」。弾き語りで始まり、次第にバンドと盛り上がる展開は、自嘲から解放されていくようで面白い。
ガラリとステージの雰囲気が変わったのは、既にエレカシの定番に加わったと言ってもいいユーミンの「翳りゆく部屋」。この曲を歌うたびに宮本は、より曲を理解しようとしているのではなかろうか。歌詞の一言一言、音のひとつひとつを繊細に発し、情感をコントロールし、ドラマチックに歌い上げた。その流れのままに、イントロは足並みが乱れてやり直したが却って気合いが入った「風に吹かれて」、「言いたいことあるけど歌います」と、曲に合った照明の中でしっとりと歌った「シグナル」、ファルセットで歌い出したバラード「なからん」(仮題)は4人だけのまだ荒削りな演奏が新鮮で、後半の絶唱が圧巻だった。「明日への記憶」を挟んで披露した、もう1曲の新曲「あなたへ」は「歌詞、丁寧に歌います」との言葉通り喉を開いた声で歌詞を丁寧に伝える歌が印象的だった。控えめな音の中で歌われる散文めいた物語性のある歌詞には彼のどんな想いが込められているのか。歌い終えて「曲作るのが好きで良かった」とぽつり。11月20日のリリースが待ち遠しい。
終盤は「人生は旅だ、って歌です」と力強く「旅」を歌い、「笑顔の未来へ」「ズレてる方がいい」「俺たちの明日」と畳み掛けた。「ギター、俺!」と叫んだりステージ前でオーディエンスを煽ったりと、お馴染みの傍若無人ぶりも炸裂して本編が終わったが、すぐにシャツを白から黒に着替えて宮本がメンバーと共にステージに戻り、お馴染みの「今宵の月のように」に次いで歌った「友達がいるのさ」は、レモン型の月が浮かんだ東京の夜空の下で《東京中の電気を消して》という歌詞が美しく響いた。「ガストロンジャー」では宮本もシャツの胸を開いて熱唱し、セイちゃんのベースを取って即興で強烈なソロを弾くと、オーディエンスも一気に沸騰した。そのまま「ファイティングマン」で完全燃焼かと思ったら、アンコールでは白いシャツをはおっただけで現われ、「本当に本当にどうもありがとうございました」と頭を下げた後、全力で「花男」に突入。荒々しいエネルギーに溢れた演奏は、25周年を迎えた今もこの曲を初演した時から変わらない。それを再び体現できる喜びを宮本は噛み締めているようにも見えた。必ず戻ってくる、と言った言葉通りに完全復活したエレカシが、次に向かうのは来年1月11日さいたまスーパーアリーナだ。
【取材・文:今井智子】
【撮影:三吉ツカサ】
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リリース情報
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セットリスト
エレカシ復活の野音
2013.9.14@日比谷野外音楽堂
- 優しい川
- ハロー人生!!
- 四月の風
- 悲しみの果て
- 東京からまんまで宇宙
- 大地のシンフォニー
- めんどくせえ(新曲)
- デーデ
- 星の砂
- 涙を流す
- はてさてこの俺は(新曲)
- 翳りゆく部屋
- 風に吹かれて
- シグナル
- なからん(仮題・新曲)
- 明日への記憶
- あなたへ(新曲)
- 旅
- 笑顔の未来へ
- ズレてる方がいい
- 俺たちの明日
- 今宵の月のように
- 友達がいるのさ
- so many people
- ガストロンジャー
- ファイティングマン
- 花男
お知らせ
エレファントカシマシ デビュー25周年記念
SPECIAL LIVE
2014/01/11(土)さいたまスーパーアリーナ
※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。