より広い会場で歌とメッセージを届けるためのHilcrhyme流ヒップホップのマナー
Hilcrhyme | 2013.10.22
「New Day, New World」という、7月にリリースされたニューシングルのタイトルがそのまま付けられた、Hilcrhymeの東名阪ツアー。東京の会場はNHKホールという、彼らのツアーとしてはこれまでで最大級の会場で、約3,800人のファンが集まり、熱気に溢れている。
TOCとDJ KATSU、そして彼らのライブではすっかりおなじみになった、ダンサー・チームのCLOPとTHUGHOMEYというメンバーで、エネルギッシュなパフォーマンスが展開されていく。「Hilcrhymeのこれまでの総決算のツアーです」とTOCが語るように、『MESSAGE』『RISING』といった過去のアルバムからの楽曲や、2011年8月に、地元新潟で初めて行なったワンマンライブで披露した楽曲など、思い出深いナンバーが次々とパフォームされていく。しかしどの曲も、ただ懐かしいだけではなく、ボーカルやアレンジなどはさらに進化しており、ちゃんと“現在”のHilcrhymeとして表現されている。そんなところからも、彼らの成長ぶりが伝わってくる。
実はラップというパフォーマンスは、会場が大きくなるにしたがって、そのメッセージを観客に伝えるのが難しくなっていく。音が会場内に反響してリリックが伝わりにくくなるし、細かな言葉のニュアンスなども届きにくくなってしまうのだ。だがTOCのラップは、NHKホールという広い会場にもかかわらず、その一言一言、歌詞の1フレーズ1フレーズが、とてもていねいに歌われるため、しっかりと聴き手にまで伝わってくる。これは抑揚や滑舌なども含めた、TOCのラッパーとしてのスキルの高さと、メッセージを伝えたいという思いが、しっかりとそのラップに乗っているからだろう。あらためて彼のラッパーとしての素晴らしさを実感させるパフォーマンスだ。そしてDJ KATSUのサウンド・メイクのセンスの良さも、彼らのメッセージを伝えるのには重要な要素だ。クラブ系のDJの中には、ただビートばかりを強調して、「上げればOK」みたいなプレイする人もいるが、DJ KATSUは、楽曲のメロディを、そして“歌”や“歌詞”を、とても大切にしている。彼のトラックやプレイはとてもメロディアスだし、どうやったらボーカルを最大限に活かすことができるのか、歌に込められたメッセージを伝えられるのか、ということを常に考えて、トラックメイクやプレイをしているのだと思う。だからこそ、Hilcrhymeの楽曲は、多くのファンから支持されるのだろうし、その姿勢や魅力は、NHKホールの3,800人を前にしても変わらない。
また、緻密に練り上げられた、凝ったビジュアルも彼らのコンサートの魅力のひとつだが、今回は会場が大きくなったこともあり、大型スクリーンに加え、まるで額縁のようにステージを囲むスクリーン、さらにステージを横切る帯状のスクリーンも設置され、それぞれの楽曲からイメージされる歌詞や曲の構成と同期した様々な美しい映像が映し出されていく。そしてそれに色鮮やかな照明や、レーザービームも加わって、圧巻のビジュアルを作り出していた。このあたりのこだわりも、彼らならではだろう。音楽だけではなく、総合的な演出によって、歌の世界観を表現しているのだ。ボーカルとDJという二人のユニットとして、コンサートでどのように楽曲を見せるか、ということを考え抜き、実践している彼らの姿勢は素晴らしいと思う。
さらに、スペシャル・ゲストのLUVや、TOCがYouTubeで見つけたというヒューマン・ビート・ボックスのHIKAKINと共演するなど、新しい要素も盛り込んで、しっかりと未来も見据えた内容になっていたのも、彼ららしいアプローチだ。また“小休止”と題して、TOCとダンサーたちがステージに腰を下ろして、世間話をしたり、ファンからの質問に答えたりするコーナーを設けるなど、緻密に作り上げられた楽曲のパフォーマンスと、その“ゆるい”MCの対比も楽しかった。
後半は、彼らのヒット曲やライブの定番曲なども次々と披露され、NHKホールも大いに盛り上がっていった。そして最後に、来年春のツアーが発表され、この日のステージは幕を閉じた。
全体的に、Hilcrhymeのこれまでの総決算と、そしてそれらを大切にしながらも、新しい領域へと突き進もうとしている彼らの意欲が伝わってくる、意義深いコンサートだった。「New Day, New World」というタイトルに込められた彼らの思いは、きっと会場のファンのみんなにも伝わったと思う。
【取材・文:熊谷美広】
【撮影:駒井夕香】
リリース情報
お知らせ
Hilcrhyme TOUR 2014
2014/04/06(日)埼玉・戸田市文化会館
2014/04/12(土)静岡・静岡市民文化会館 中ホール
2014/04/13(日)栃木・栃木県総合文化センター
2014/04/19(土)京都・KBSホール
2014/04/25(金)長野・ホクト文化ホール・中ホール(長野県県民文化会館)
2014/04/26(土)愛知・日本特殊陶業市民会館・フォレストホール(名古屋市民会館)
2014/04/29(火・祝)宮城・仙台電力ホール
2014/05/03(土・祝)福岡・Zepp Fukuoka
2014/05/05(月・祝)広島・CLUB QUATTRO
2014/05/06(火・祝)岡山・岡山市民会館
2014/05/09(金)東京・TOKYO DOME CITY HALL
2014/05/18(日)北海道・Zepp Sapporo
2014/05/24(土)大阪・オリックス劇場
2014/05/27(火)新潟・新潟県民会館
※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。
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