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“怪物バンド”へと成長を遂げた赤い公園のツアー最終公演をレポート!!

赤い公園 | 2013.12.06

 展開が激しく、演劇的な曲の多い赤い公園には、ノスタル ジックな香りの漂う“東京キネマ倶楽部”がよく似合うだろうと思っていた。そして11月23日、東京キネマ倶楽部に行ってみたら、それどころの騒ぎではなかった。そこで観た赤い公園は、予想を遥かに超える怪物バンドになっていた。

 登場したメンバーの衣装は、いつも通り全員白。ただし津野米咲(g,pf,cho)は髪を短く切りそろえ、色は完璧なゴールドで、大胆に変身していた。
 佐藤千明(vo,ky)が大声で、「キネマ―!」と叫んでライブが始まる。1曲目はファーストフルアルバム『公園デビュー』のオープニングと同じく、「今更」だ。いきなりリズムの切れを感じる。歌川菜穂(dr,cho)と藤本ひかり(b)の リズムセクションの成長は、8月にリリースした『公園デビュー』でわかっていたつもりだったが、全国ツアーを経てファイナルを迎えた2人は、アルバム・レコーディング時よりますます進化していた。

 2曲目「のぞき穴」が終わると、津野が合掌してお辞儀する。そんな謙虚な姿勢も束の間、佐藤が「かかってこいやぁ!」とシャウトして「娘」になだれ込む。藤本はステージ左側に設置された階段を駆け上がって、オーディエンスをアオる。佐藤が♪アイコンタクトが始まるよ♪と歌っては、「お前らと始まるんだよ!」と客席にプレッシャーをかけると、それを受けて観客がモッシュで応える。緊張と歓びと爆発と一体感。全部がないまぜになって、若いバンドならではのハラハラヒリヒリする空気が、フロアを満たす。

 最低限のMCで、 快調にライブが進む。“ミニ・プログレ”と呼びたくなる変幻自在の曲は、多彩な要素が1曲に短くまとめられているので“耳もたれ”しない。たとえば「ずっと」という曲は、タイトルとは裏腹に、たった2分間のインスト。佐藤がドラムの前に置かれたキーボードを弾く。そのフレーズに他の3人が絡んで、バンドの力を発揮する。

 次の「透明」では、佐藤がボーカリストとしての成長を見せつけた。赤い公園の演奏陣は、歌のサポートに徹するわけではない。歌もアンサンブルのひとつになって、音楽を構成していくのだ。佐藤はその困難な課題を果たして余りある活躍を見せた。また彼女の不思議なアクションは、楽曲のイメージを何倍にも膨らませていて、身体表現にも進化を見せたのだった。

 新趣向は、いったん藤本と歌川がハケて、佐藤と津野のふたりのユニット“デカイほうですいません”による「つぶ」のアコースティック・バージョンだった。津野がエレピを弾いたのだが、ギターを弾くときより嬉しそうな顔をしていたので、終演後、突っ込むと「ピアノのほうが楽ですから。でも、そんなに顔が違いましたか? マズい!」 と苦笑。元々、ピアノが得意なのだが、バンドではギターをメインに演奏してきた津野は、だからこそ個性的なギタリストになった。しかし、やはりピアノを弾くほうが楽しいらしい。ただし、津野はピアノを弾くとき、少し内股になっていた。ギターを弾くときは、両足を思い切り踏ん張っているのになぁ(笑)。 つまり赤い公園は、このツアーで“最強のキーボード・プレイヤー”を得たのだ。この事実は、今後の赤い公園にとって、とても重要なファクターになるだろう。

 もちろんユニット“デカイほうですいません”の出来は素晴らしく、バンドの幅をグッと広げていた。また未発表の「MAT BLUE」は、「みなさんの反響があれば、発表できるので」と“反響”をオーディエンスにお願いするシーンもあって、笑ってしまった。

 そして藤本と歌川が戻って、再び4人で演奏した「塊」が凄かった。♪かもめ、かもめ、♪というシュールなサビとダイナマイトな演奏が、バンドのパワーを極限まで引き出す。このスケールの大きな曲は、ともするとライブで空回りすることがあったが、この日はバンドの地力がアップしたことを如実に告げていて見事だった。まさに怪物バンドと言いたくなるほどだった。

 その流れを引き継いだ「カウンター」からの終盤は、おそらくツアー最高の出来ではなかったのか。それこそメンバー間でのアイコンタクトが、オーディエンスにまで広がって、キネマ倶楽部にハッピーな赤い公園ワールドが出現。中でも津野が、ニコニコしながら“ギター”を弾いていたのが印象的だった。

 アンコールでは全員、白のジャケットにパンツ姿で登場。♪トトトツーツーツートトト♪というツアータイトルの元になった「交信」を歌う。オルタナにあるまじきポップなコード進行のこの曲が、ファイナルの大成功を自ら祝っているようで、感動的だった。

 すべてが終わって、4人はステージ脇の階段を上がって、カーテンを割って去っていった。その後ろ姿が妙に“宝塚”っぽくて、近未来のスターを見る思いがしたのだった。

 来年2月にはニューシングル「風が知ってる/ひつじ屋さん」をリリースし、3月 には自主企画イベントを開催することが決定。能力全開の赤い公園の2014年が、ますます楽しみになった。

【取材・文:平山雄一】
【撮影:福本和洋】

tag一覧 ライブ 女性ボーカル 赤い公園

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リリース情報

赤い公園「風が知ってる/ひつじ屋さん」(初回限定盤)[CD+DVD]

赤い公園「風が知ってる/ひつじ屋さん」(初回限定盤)[CD+DVD]

2014年02月12日

EMI Records Japan

CD
1.風が知ってる
2.ひつじ屋さん
3.POP STAR
4.風が知ってる(Instrumental)
5.ひつじ屋さん(Instrumental)
6.POP STAR(Instrumental)

DVD
「風が知ってる」MUSIC VIDEO+ドキュメンタリー映像「情熱公園」

このアルバムを購入

セットリスト

赤い公園ワンマンツアー2013「いざ、公園デビュー〜トトトツーツーツートトト〜」
2013.11.23@東京キネマ倶楽部

  1. 今更
  2. のぞき穴
  3. 世紀末
  4. ナンバーシックス
  5. よなよな
  6. ずっと
  7. 透明
  8. 副流煙
  9. つぶ
  10. 体温計
  11. MAT BLUE
  12. もんだな
  13. 急げ
  14. はてな
  15. カウンター
  16. 贅沢
  17. ランドリー
  18. くい
  19. ふやける
Encore
  1. 交信

お知らせ

■ライブ情報

COUNTDOWN JAPAN 13/14
2013/12/31(火)幕張メッセ国際展示場1~8ホール、イベントホール

DUM-DUM presents「Telepathy/ Overdrive 」
2014/01/10(金)恵比寿LIQUIDROOM

GO LIVE VOL.1
2014/01/24(金)EX THEATER ROPPONGI

赤い公園 自主企画イベント
2014/03/27(木)恵比寿リキッドルーム

※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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