バンドとファンをつなぐもの――愛と信頼に満ちたDragon Ashのリリース・ライブ
Dragon Ash | 2013.12.20
シングル「Lily」のリリース・パーティ“Lily’s Party”は、衝撃のライブだった。大きな悲しみと苦闘しながらバンドとしての正念場を見事に乗り切ったDragon Ashの、2013年を締めくくるにふさわしいごっついライブだった。それはリリース・パーティという枠をぶち破って、Dragon Ashとその支持者たちを結びつけるものの正体をむき出しにする内容だった。
11月30日にオープンした東京・EX THEATER ROPPONGIは、オープニングシリーズ・ライブの真っ最中。“Lily’s Party” はそのひとつという位置付けにある。集まったオーディエンスは、新しいライブハウスに初めて来る興奮も手伝って、開演前からザワザワしている。そして始まったのは、キラキラした真新しいエントランスの華麗さを忘れさせるほど、光り輝くライブだった。
ステージ前にセットされたスクリーンに百合の紋章のブローチが映し出される。そこに、ダンサーのDRI-VとATSUSHIのシルエットが浮かぶ。オープニングSEは「Rio de Emocion Intro」だ。Kj、ドラムス桜井誠、ギターHIROKI、DJのBOTS、サポート・ベース のKenKenが揃って、注目の1曲目はなんと「Fantasista」だ。2002年にリリースされたこのシングルはこのところ、ライブの後半や最後の曲として演奏されてきた。だからこのパーティのオープニングを飾ることを、誰が予想しただろうか。観客の誰もが驚きと歓びに包まれて、いきなり大合唱とダイブが起こる。応えて、Kjも「飛び跳ねろ」と叫ぶ。メンバーもパニックに近いオーディエンスたちのはしゃぎようを、楽しそうに見渡しながらプレイする。
ここから3曲は、「Lily」に入っているDragon Ash初のライブ音源どおりの曲順だ。IKUZONEのラスト・レコーディングとなった「Run to the sun」でKjがギターを持つと、オーディエンスは曲の頭から歌い出す。ATSUSHIとKenKenは一緒にヘッドバンギングして、ニッコリ笑い合う。この2人、メンバーの中でも今日は特に楽しそうだ。
「Dragon Ashです。よろしくお願いします」と短く挨拶して、「Los Lobos」。これも2005年発売のアルバム『Rio de Emocion』の懐かしくて、なおかつ新鮮な曲。特別なセットリストのお陰で、バンドとフロアの距離がいつも以上のスピードでぐんぐん近づいていくのが体感できる。このライブハウスならではの感じ、悪くない。6人での活動を決意したシングル「Here I Am」 の後、「Still Goin’ On」ではYalla Familyの3人が加わる。今度はKjが楽しそうに笑う番だ。
「新しいアルバムで、オレと賢輔(KenKen)で作った曲がひとつあります。これぞミクスチャーって曲です」。演奏したのはニューアルバム『THE FACES』に収録予定の新曲「The Live」。ベースのいちばん太い弦が奏でるいちばん低い音をキーにしたリフを持つ、最高にエキサイティングな曲だ。つまり、初めてベースやギターを手にしたヤツでも弾きたくなる、シンプルかつワイルドなロックチューンだ。Kjの言う「これぞミクスチャー!」という言葉の意図はここにある。もちろんKenKenは持てるテクニックを駆使して盛り上げるが、この曲の出発点を忘れない。思いにまかせてバーンと弦を思い切り弾(はじ)くだけだ。この潔い1曲を聴くだけで、『THE FACES』への期待が高まる。
前作アルバム『MIXTURE』から「AMBITIOUS」を歌った後、Kjが再び口を開く。「ライブハウスの火を絶やさないように、ロックンロールの火を絶やさないように、オレたちとお前らで守っていこうぜ」とこのパーティのひとつの意味を語ると、会場から大きな拍手が起こる。「そのキーワードは」と言うと、ステージに山嵐のSATOSHIとGNz-WORDのKO-JI ZERO THREEが現われて、『MIXTURE』の中核をなすナンバー「ROCK BAND」が始まった。そのエッジーな演奏の後だからこそ、この日の“主役”「Lily」の美しいメロディが心に沁みる。Kjが「歌おうぜ」とうながすと、オーディエンスのシンガロングが始まる。「いろんなバンドがいるけど、リリースしたばっかの曲を歌えるのは、お前らだけだと思うよ。ありがと」。バンドとファンがお互いを強く信頼しているからこそのシーンだった。
アンコールで登場した7人の中で、なぜかKenKenだけが土下座する(笑)。
「すげーいい曲だと思って『Lily』を作って、それを待ってた人の前で最初に演奏できて嬉しかったです」とKj。「実はこのライブ、やるかどうか迷ってました。アルバムを全力で作った後、疲弊した状態でライブをやれるのかなと思って」。オーディエンスがざわめく。「でもやってよかったです」とKjが告白を続けると、歓声が上がった。「セットリストはサク(桜井)とATSUSHIが頑張って作ってくれました」。さらに大きな歓声が上がる。
桜井が続ける。「せっかくシングルを買ってまで来てくれる人がいるんだから、 普通のフェスと同じようなセットリストじゃ申し訳ないと思ったからさ。ちなみに1曲目はKenKenのアイデアです」。Dragon AshのファンでもあるKenKenは、ファンとバンドをつなぐ役割もあるようだ。 グッジョブ!ナイス・サポート!KenKen!! この日のDragon Ashがいつもとちょっと違う理由が、少しだけわかった気がした。
そうして「百合の咲く場所で」のイントロが始まると、みんな大騒ぎ。Kjは最前列の観客と拳を合わせる。 「身を削って新しいアルバムを作りました。そのアルバムの最後の曲をやって終わります」。最後の最後は、『THE FACES』のラストチューン「Curtain Call」だった。激情と感謝の入り混じったロッカバラードで、桜井はタムタムをDragon Ashならではのグルーヴで叩き、DRI-VとATSUSHIはスピリチュアルに舞う。エンディングのHIROKIのドラマティックなギター・ソロを、BOTSもKenKenもプレイしながら聴き入っている。Dragon Ashの今とキャリアが交差する、素晴らしいパーティになった。
【取材・文:平山雄一】
【撮影:Kentaro Kambe】
関連記事
-
Dragon Ash
Dragon Ash、再現された美しい夕景の中で奏でる20th Anniversary Single「Beside You」のミュージックビデオを公開!
-
Dragon Ash
「俺たちはおまえたちが大好きだ!」――結成20周年を記念したワンマンライブ“MIX IT UP”で見せたDragon Ashのあらたな決意。
-
Dragon Ash
Dragon Ash 本日J-WAVE「BEAT PLANET」にてニューシングル「Beside You」独占先行オンエア決定!さらに完全限定盤の豪華メモリアル・パッケージを公開!
-
Dragon Ash
Dragon Ash、20周年の記念日となる2月21日に行われた、20th Anniversary Live Show 「MIX IT UP」大盛況で終了!
-
Dragon Ash
Dragon Ash、30ヶ所にも及ぶ全国ツアーの開催が決定! 本日配信開始となる配信限定シングル 「Mix It Up」のミュージックビデオ公開!
-
Dragon Ash
-
Dragon Ash
-
Dragon Ash
3年ぶりのリリースとなる、 ニューシングル「光りの街」の トレーラー映像を公開! そして、AbemaTVでスペシャルプログラム 「Dragon Ash Special生番組」の配信が決定!
-
Dragon Ash
前作までのDragon Ashには終止符を打ち、フレッシュな気持ちで制作されたニューシングル。KenKen(B)が初めて制作段階から参加、彼らのニューフェイズがここから始まる。
-
Dragon Ash
リリース情報
THE FACES【初回限定盤】 [CD+DVD]
2014年01月15日
ビクターエンタテインメント
2. The Show Must Go On
3. Trigger
4. Run to the Sun
5. Neverland
6. Today’s the Day
7. Here I Am
8. Blow Your Mind
9. Still Goin’ On feat.50Caliber,Haku the Anubiz,WEZ from YALLA FAMILY
10. Golden Life
11. Walk with Dreams
12. The Live feat.KenKen
13. Lily
14. Curtain Call
このアルバムを購入
リリース情報
セットリスト
Lily’s Party
2013.12.4@EX THEATER ROPPONGI
Rio de Emocion Intro
- Fantasista
- Run to the sun
- Trigger
- For divers area
- Los Lobos
- Ivory
- few lights till night
- Velvet Touch
- Here I Am
- Still Goin’ On
- The Live
- AMBITIOUS
- ROCK BAND
- Lily
- TIME OF YOUR LIFE
- 百合の咲く場所で
- Curtain Call