くるりの15周年お祝い“餅投げ”ツアー、たくさんの笑顔があふれた幸せな空間
くるり | 2013.12.18
餅投げは、上棟式などのお祝い事の際に行なわれる日本の伝統行事。15周年を迎えたくるりは、その嬉しい気持ちを表わすように、日本中にお餅を盛大にバラまくツアーを敢行。欧米で生まれたロックに“和の魂”を注入することをテーマのひとつに掲げるくるりらしく、日本民謡のリズムを取り入れた「東京レレレのレ」からライブはスタートしたのだった。
ビー トの裏を刻むファンファンのトランペットが爽快だ。ギター&ボーカルの岸田繁は、アフロヘア。ベースの佐藤征史はド金髪でお祝いのステージに立つ。メンバー3人に加えて、長い髪を後ろで束ねたサポート・ドラムは、くるりと相性のいいボボだ。くるり史上最強のカルテットが、お祝いライブに顔を揃える。ギタートリオ+トランペットという編成は、日本のロックシーンでは非常に珍しい。それだけに、ファンファンの活躍にも注目しながら、ライブを楽しんだ。
2曲目は初期の代表曲「ワンダーフォーゲル」。いかにもアニバーサリー・ツアーにふさわしい“ベスト・セットリスト”に、会場は沸きに沸く。美しいメロディをメンバー3人がハモると、そこにくるりならではのボーカル・サウンドが立ち現れる。
かと思うと3曲目は「コンバットダンス」で、アグレッシヴ なジャズ・ファンクのグルーヴが会場を揺らす。空気を切り裂くようなファンファンのトランペットのリフが閃光を放つ。この曲ではボボもコーラスに参加して、さらに厚みのあるボーカルワールドが現出する。
「こんばんは、くるりです。今日はツアー最終日。気合い、入ってます。早速、ゲストを紹介します」と岸田が言って、ギターの山本幹宗とペダルスティール他の高田漣を呼び込んだ。
ウイーン録音の傑作「ブレーメン」では、ファンファンが金管楽器特有の音色でメロディをトレースすると、弦の数が多い高田のペダルスティールがオーケストラの和音のパートを担当する。それは荘厳な教会のパイプオルガンの代わりに、エレキピアノで神に祈りを捧げるゴスペルにも似て、形よりも心を大切にして演奏してきたくるりの歴史を彷彿とさせて感動を呼んだ。
「くるりには、いろいろな曲があります。体力が衰えても、ロックンロールをやります。ヘビメタで育ったんで、ヘビメタもやります。次はそうした“ギリギリ感”を歌った曲で、ギリギリのリルレロ」とちょっと面白おかしいMCを挟んで「リルレロ」へ。真っ赤な照明が、ちっとも衰えを見せないくるりのロック・スピリットを照らし出す。
「温泉」が終わると、佐藤が「今日はご来場ありがとうございます。6本しかないツアーで、物足りない気持ちを払しょくするために、モチを投げます。ミュージシャンでモチを投げるのは、ここにいる人だけですよ」と笑いながら言って、6人全員でモチを観客に投げる。そのとき、オーディエンスからこぼれ落ちた笑顔を、岸田が嬉しそうに見回していたのが印象的だった。
みんなが知っている曲、マニアックな曲をちりばめたセットリストに、会場はいつも以上にリラックスして身を委ねる。本編ラストの「Loveless」、「虹」、「街」では内面に秘めた激情を爆発させ、「くるりは日本のローリングストーンズですよ。みなさん、よい年末を! 来年はいい年にしましょうよ。くるりは16周年です」とコメントして始まった「ロックンロール」は大音量で名曲を堪能させてくれたのだった。
アンコールの「ロックンロールハネムーン」で岸田はギター を置いてハンドマイクを持ち、もう一方の手にタンバリンを持って、いつになくステージを駆けまわる。
「これまでのツアーでは、毎日、曲目を変えながらやってきた んだけど、今回のツアーはずっと同じセットリストでやるのが楽しかった。でも今日だけは、この曲をやります」と岸田が言って、「奇跡」をアコギの弾き語りで歌い出した。やがて他の楽器が加わる。特にトランペットが入って来た瞬間が素晴らしく、このワンアンドオンリーの編成の妙を痛感した。
そんなファイナルのスペシャル・プレゼントに酔っていた ら、ダブル・アンコールにはさらなる“贈り物”が待っていた。
ステージに現われたボボが、エレキギターを手に取ると、マイクの前に立って「ボボボボボ」とマイクチェック(笑)。岸田はアンプの前を通り過ぎて、ドラムの椅子に座る。と、ボボがおもむろに「東京」のギターのイントロを掻き鳴らし始めたではないか。岸田のドラムをはじめとして、他のメンバーもボボのギターに合わせて演奏し始める。場内からは、笑いと恐る恐るの歓声が上がる。♪お台場の街に 出て来ませんでした♪と、ボボがひと節歌って、終了。大爆笑が起こる。
「余興にお付き合いくださいまして、ありがとうございます」 と岸田がひと言。ラストナンバーはデビュー・シングル「東京」だった。
この15年 間、くるりは音楽的冒険心を発揮し続けてきた。“流行”にかたよりがちなこの国の音楽シーンに、貴重な一石を何個も投じてくれた。そんな体力も胆力も揃ったくるりに、まだまだ期待したいことは山ほどある。明るいアニバーサリー・ライブだったと思う。音楽的笑顔をもっとたくさんくださいと、願をかけたくなる楽しいライブだった。
12月にはくるり初のクリスマスソング「最後のメリークリスマス」がリリースされる。
【取材・文:平山雄一】
リリース情報
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2013/12/28(土)幕張メッセ国際展示場1〜8ホール
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2013/12/29(日)インテックス大阪
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2014/2/22(土)幕張メッセ国際展示場
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2014/5/3(土)さいたまスーパーアリーナ
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