WHITE ASH、自身のロックミュージックを貫く!満員の渋谷AXファイナル公演
WHITE ASH | 2014.03.28
2013年12月にリリースされた2ndフルアルバム「Ciao, Fake Kings」を中心にした全国ワンマンツアー「Lilium」のファイナル、SHIBUYA-AX公演。この日のステージでWHITE ASHは、4つ打ちのダンスチューンが蔓延する現在のシーンとは完全に一線を画した、極めて個性的なロックミュージックを体現してみせた。
開演前のBGMはもちろん1991年のニルヴァーナの名盤『Nevermind』(←よくわからないという人は『Nevermind』『Ciao, Fake Kings』のCDジャケットをいますぐチェックしてみましょう)。リアルタイムで聴いていた私は「Smells Like Teen Spirit」でテンションが上がってしまうわけだが、「のび太にとってはどんなアルバムなんだろな?」とボンヤリ考えているうちに会場の照明が落とされ、オープニングSEの「White Ash」(the pillows)が響き渡る。
興奮するオーディエンスに向けて放たれた1曲目はなんと「White Ash」のカバー(この曲はthe pillowsのトリビュート盤『ROCK AND SYMPATHY -tribute to the pillows-』に収録)。the pillowsへのリスペクトが込められた幕開けにフロアの熱気はさらにアップ!さらにシングル曲「Crowds」、『Ciao, Fake Kings』の収録曲「Number Ninety Nine」というアッパーチューンが続けざまに披露される。山さん(G)のシャープなギターリフ、彩(B)のしなやかなベースライン、剛(Dr)の多彩なリズムがガッチリとひとつになったバンドサウンド、そして、“鋭利なポップネス”と形容したくなるメロディをまっすぐに描き出すのび太のボーカル。もともと演奏力の高いバンドだが、このツアーによってWHITE ASHのライブ・パフォーマンスはさらに向上したようだ。
「のび太!」という観客の声に「はーい!」と気軽に答えたり、「今日はツアーファイナル。長かったような、短かったような…。(山さんに向かって)どっち?」「短かった」「僕はちょっと長いなーと思ったよ」という何気ないやりとり――ダイナミックなステージングとのギャップがすごすぎる――もホンワカと楽しい。
今回のツアーのもっとも大きな見どころは、“ニューアルバムの楽曲がライブでどんなふうに響くか?”ということだったと思うが、その効果の大きさはこちらの予想を遥かに超えていた。「アルバムの曲を披露できるのがすごく嬉しい。音楽ってルールがないから、自由に楽しんで欲しくて。自由に感じて、自由に楽しんでください!」というのび太の言葉から始まったライブ中盤では、6曲続けて『Ciao, Fake Kings』の楽曲を演奏。「僕が思い切り楽しめる曲」(のび太)という「Zodiac Syndrome」ではヘビィ&サイケデリックな音像のなかでドラマティックな旋律が広がり、「Vain Promises」「Under The Lightless」ではさらに奥行きを増したバンド・グルーヴで心地よくオーディエンスの身体を揺さぶる。さらに山さんがギロを演奏した(←このときだけ“ギロさん”に変身するという設定)「Bacardi Avenue」ではエキゾティックな雰囲気を演出し、「ひと癖ある曲なので、ついてきてくださいね!」(のび太)というMCに導かれた「Delayed」では、ダンスロックの進化型とも言えるサウンドでフロアに新鮮な衝撃を与える。そして、ポップに振り切った「(Y)our Song」では開放的なメロディによって会場全体に幸福な一体感を生み出す――この6曲からは現在の彼らの充実ぶりがしっかりと感じられた。アークティック・モンキーズをはじめとする00年代以降の洋楽ロックの影響からスタートしたWHITE ASHはいま、揺るぎのないオリジナリティを獲得しつつあるようだ。
「昨日はホワイトデーだったんで、僕らからのお返しです」(のび太)という愛らしいコメントともに披露された「Would You Be My Valentine?」、切なくも美しい歌を中心とした「Long Time No See」も強く心に残った。スタンダード・ナンバー的なムードを持った楽曲をライブという場所で描けるのも、このバンドの大きな魅力。高いソングライティング能力と幅広い表現力がひとつになった、きわめて印象的なシーンだったと思う。
ラストは「Paranoia」「Velocity」「Jails」「Casablanca」というライブ・アンセム4連発。ラウドかつシャープなバンドサウンド、ハイトーンを効果的に交えたメロディがこれでもかと炸裂させ、オーディエンスの熱狂を煽っていく。観客を盛り上げるという機能を高めつつも、斬新なアイデアに溢れたアレンジやフレーズを組み込んだ楽曲(ちなみに「Casablanca」は3拍子。こういうリズムの曲でモッシュが起きるとか、他のバンドでは見たことない)によって、会場全体のテンションを極限まで高めてみせた。
アンコールでも幅広い音楽性を体感できる場面が続く。「Xmas Present For My Sweetheart」では11人編成の“Lilium聖歌隊”が加わり、神聖な手触りのハーモニーとともにロマンティックなサウンドを響かせる(雪を降らせる演出も素敵!)。さらに「このまま終わるのも寂しいんで。もうちょっとやっていいですか?」(のび太)と代表曲「Kiddie」「Stranger」を披露し、凄まじい歓声と熱気のなかでライブは終了した。
最後は「去年の9月で本格始動5周年になって。これからもずっとカッコいい音楽を作っていきたい」(のび太)と宣言。“シンプルかつカッコいい”という真っ当なスタンスを貫き、独自のポジションを得つつあるWHITE ASHはこれから、さらに大きなフィールドへ進んでいくことになりそうだ。
【取材・文:森朋之】
【撮影:柴田恵理】
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リリース情報
セットリスト
WHITE ASH One Man Tour Lilium
2014.3.15@渋谷AX
- White Ash
- Crowds
- Number Ninety Nine
- Extreme
- Ray
- Thundrous
- Zodiac Syndrome
- Vain Promises
- Under The Lightless
- Bacardi Avenue
- Delayed
- (Y)our Song
- Would You Be My Valentine?
- Long Time No See
- Paranoia
- Velocity
- Jails
- Casablanca
- Xmas Present For My Sweetheart
- Kiddie
- Stranger
お知らせ
J-WAVE 「THE KINGS PLACE」 LIVE Vol.5
2014/04/05(土)新木場 STUDIO COAST
TOKYO METROPOLITAN ROCK FESTIVAL 2014
2014/05/24(土)新木場・若洲公園
MUSIC MONSTERS SPECIAL 2014 ?SAYONARA-AX?
2014/05/31(土)SHIBUYA-AX
the pillows 25th Anniversary NEVER ENDING STORY “ROCK AND SYMPATHY TOUR”
2014/07/13(日)広島CLUB QUATTRO
※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。