いよいよツアーも中盤に差しかかり、ユニコーンが東京に戻ってきた。開演前のBGMには、パンチの効いたロカビリーが流れている。まるでライブの雰囲気を予言するように聴こえてくるのが面白い。
　さて、ユニコーンは若者バンドに負けない成長力を発揮しているのか、注目のライブが始まった。
　だだっ広い東京国際フォーラムのステージに、シンプルなセットがよく似合う。まず最初に飛び出した先制パンチは、“ニセン14（カズシ）”こと、EBIの小ネタだ。ツカミはオッケーで、波に乗ったEBIは、オーディエンスにシンガロングを強要（笑）したりしながら、いきなり絶好調でライブを進行させる。アルバムのレコーディングでも大いに活躍した勢いを、完全にライブに持ち込んでいる。ある種の責任感を漂わせるEBIは、これまでとはひと味違うキャラクターになったようだ。

　序盤でかっこよかったのは、「Keep On Rock’n Roll」だった。正統派ロックを、5人が堂々と歌い、演奏する。途中、全員が右の上腕二頭筋（いわゆる力瘤）を誇らしげに見せつけるシーンは、今回のツアーのホットポイントだ。かっこいいんだか、笑っていいんだか。

　MCの口火を切ったのは、“コンド55号”こと、川西幸一。「ハロー、トキオ！元気かい、トキオ」と、ちょっと外人が入ってる。「イーガジャケジョロに、ようこそ!!……」。その後を何も考えていない川西のMCを、OTが繋ぐ。このあたりの連携の凄さは、ワールドカップ・チームの本田＝香川レベルだ（笑）。
　「フォーラムの入口で調べたら、今日の客は9割がテッシーファンらしいよ」。会場がどよめく。“IT社長”こと、テッシーは、まんざらでもない様子。この“いい気分の社長”が、のちのちいい仕事をすることになる。グッジョブ！OT!!

　前回見たさいたまより、ぐっとグレードアップしていたのは、メンバーそれぞれのコーナーの部分。OT以外は、しっかり“ワンマンショー”をやり切る。OTは特別なコーナーがないのだが、その分、いつも以上にリードボーカル曲が多いように感じる構成だ。
　EBIは、ユニコーンの名前を“東京エビスプレス・オーケストラ”と、勝手に変えて紹介するワンマンぶり。ハンドマイクに添えた真っ赤なバラを、無理やりお客さんにプレゼントする。「今日のトーキョー・ベイべーはシャイだから、なかなか受け取ってくれなくて」とナルシスなボケをかます。
　活動を再開したときから、テッシーは必要なときにはキーボードを弾いてきたが、ついに今回はピアノ弾き語りに挑戦。最初は心配そうに聞いていたオーディエンスが、終わった途端、大拍手をテッシーに贈る。社長の“隠し芸”ワンマンショーは大成功だ。
　ABEDONは改名後も、切れっ切れのMC大王だ。オーディエンスもメンバーも、会場にいる自分以外の人間をイジリ倒す。かと思えば、センターマイクで歌うとき、フライングVというカッコいいギターを持つのだが、１曲歌うたびにわざわざ色違いのフライングVに持ち替えて笑わせる。意味があるようでいて、何も意味を持たせないユニコーンの音楽姿勢を、そのままステージングとして表現しているのはアッパレだ。
　川西は、自分たちが育ってきたドリフや吉本新喜劇の持つ“アホアホ・パワー”を全開にして、会場を沸かせる。その天然さは、最強。アルバム『イーガジャケジョロ』最大の問題作「俺のタクシー」がどこに行ったかについては、ぜひ自分で見に行って確かめてください。
　そして、そんな川西の歌う「あなたが太陽」が、さいたまに続いて感動的だった。さいたまでは5人の歌うシーンが良かったのだが、この日は川西の独特の“歌心”が感じられて、バンドの進化を感じた。

「ツアーも始まってからだいぶ経ちまして。でも１週間空いたから」（OT）
「だいぶ忘れてますね」（テッシー）
「だから、今日は出来にムラがある。特にコンド55号は」（OT）
「そんなにわかりやすい？」（川西）
「とはいえ、台本どおり何の狂いもなく、順調に進んでます。気付いたら終わってますので、みなさん、気を付けてください」（OT）

　この飄々としたMCは、ユニコーンにしかできないだろう。
　よく、中堅のバンドが「ライブはその日その日の自分たちが出る」とライブ観を語ったりする。それはそれで実感なのだろうが、ユニコーンのムラがありまくり、不確定要素だらけのライブを観ていると、その発言が「まだまだ若い」と思えてしまう。おっさんの力瘤と、“ムラがある発言”を聞いていて、ふとそんなことを思った。

　終演後、喫煙スペースにやってきたOTに、最初のMCを「グッジョブ！」と誉めると、「あれはね、今日観に来てたYO-KINGが入口からメールくれたのよ。それをそのまま言ってみただけ」とOT。この瞬発力、やっぱりワールドカップ・クラスだぜ。ツアーはまだまだ続く。次の“ユニコーン・インサイド・レポート”を待て！

【取材・文：平山雄一】
【撮影：山本倫子】