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三浦大知、最高を超える!自ら“エンターテイナー”と称した圧巻のライブ

三浦大知 | 2014.06.12

 昨年11月にリリースしたアルバム『The Entertainer』について三浦大知は「今だからこそ付けられるタイトル、そして今の時代に必要なこと」と、インタビューで話してくれた。その発言を裏打ちして余りある“エンタテインメントの現場”が、この日のツアー・ファイナルには溢れていた。

 暗転とともにスクリーンに投影されたのはこちらに歩いてくる彼の足元。そこから変幻自在な動きで“DAICHI MIURA”というツアー・タイトルのロゴが織りなすクールな映像が興奮を増長させる。と、同時にグリーンのメタリックな光彩を放つスーツに身を包んだ大知、大きなフラッグやドラムのスネアを携えたダンサーたちがステージのみならず客席から登場して、マーチングなビートが鼓舞する「Blow You Away!」でスタート。白いスーツで決めたバンドメンバーも強い存在感を放ち、生演奏のグルーヴがホール公演という空間の贅沢さも堪能させてくれる。続く「GO FOR IT」ではステージ上のスロープに仕込まれた照明が大知のダンスやアクションとシンクロするように光り、ダンスを立体的に見せる。

 「Illusion Show」ではタイトルよろしく大知が空間移動するイリュ?ジョンまで披露。少し懐かしい「Who’s The Man」もベースが強めに出た今のバンドアレンジと驚異的なユニゾン・ダンスで新生。1曲1曲が完結した物語のように進行していくステージは、踊りたい欲望とすべてを見逃したくない欲望の両方を刺激する。

 アッパーに畳みかけた後はセクシーなミドルチューン「Chocolate」で艶やかなボーカルを披露。ファンの歓声もヒートアップする。続いては新作1曲目の「Can You See Our Flag Wavin’ In The Sky?」。ダブステップ的なビート感に単に裏打ちだけじゃないハンズクラップが起こった時はファンの曲に対する思い入れを痛感。ステージ上が1曲ごとに物語を提示するのと同様に、ファンも曲ごとに自分の好きなノリで呼応しているのだ。大知が言う、「ありがとうございます!」というごく普通の感謝の言葉も、この場ではお決まりの文句じゃないのだと思う。ステージから見た客席は、おそらくひとつの生命体のようなグルーヴが起きていたのだろう。だからこそ発された感謝の言葉。パフォーマンスと歌唱に集中する彼は、決して口数は多くない。

 再びひとりで歌う、スケールの大きなロックナンバー「Gotta Be You」、そしてピアノが印象的なバラード「Two Hearts」へ。この配置もいい。特にどこか中性的な透明感を放つ彼の声質とせつなくも前向きな「Two Hearts」での歌唱は、かけがえのない個性と人柄を感じさせるものだった。

 「DAICHI MIURA The Entertainer、ファイナル!国際フォーラムにようこそ!」と感謝を伝えながら「今回のツアータイトルは“ジ・エンタテイナー”です!自分で自分をエンターテイナーと言う人がいますか? ここにいいるんですよ」と笑いを誘いながら、「自分で言うことによってハードルが上がってることでしょう(笑)。今夜、そのハードルを越えていきます! 三浦大知のエンタテインメントはまだ探している最中なんですが、ひとつ間違いないのはみんなで一緒に作るっていうことです。だから皆さんもエンタテイナーになっていただいて最高のエンタテインメントを作る、そこまで持って行けたらと思います!」という意思表明に大歓声が起こる。前半の締めは音源よりヘヴィネスが前面に出た「Baby Just Time」。エレクトロサウンドでこんなアンセミックな表情を出せるのはやはり彼の有機的なパフォーマンスによるものだろう。

 ダンサーをフィーチャーしたブロックを挟んで、ドラマティックなイントロに絶叫が起こる「Right Now」はダンサーおのおのの見せ場も多かった。続く、超絶的な展開を見せる「I’m On Fire」とアッパーなEDMナンバーの連続にわきに湧く会場。特に「I’m On Fire」では大知のHooooooooooot!の絶唱と片手での側転(!)、さらに複雑かつ振り切れたダンサーの動きに会場全体のドーパミンは多量分泌。歌詞のひとつひとつのフレーズに反応し、踊り、ジャンプして参加するファンの熱気もピークに達して、暗転した。

 熱しきった会場をクールダウンするようにスクリーンには夜風にあたりながら街を歩く大知の姿が。ヘッドフォンをし、手を伸ばした先にはピアノの鍵盤、それが現実のステージにつながる演出で「Listen To My Heartbeat」の弾き語りをじっくり聴かせる。静謐なムードのまま、ストリングスにのせて新曲「Anchor」を披露してくれた。

 「後半飛ばして行きましょう!」というMCとともに、強靭なファンクネスをスムーズさを醸す「Spellbound」。この時、ふと見るとステージ前方のスロープはまるで平均台のように細い幅であることに気づき驚愕。ここを駆け上がってたのか?と。そしてニューシングルからクールなエレクトロナンバー「Good Sign」をバンドメンバーのソロ回しも盛り込みながら展開。ムービーシューティングとニコ生用に入った夥しい数のカメラはステージ上でダンサーの手でも操られるる。これってワンカメ/ワンシーンのMVとリンクしてるってことでは?と、細部に渡って発見のある演出にほくそ笑んでしまう。

 立て続けに「Elevator」で心拍が上昇。スロープのライトが駆け上るのと同じ速さで大知もダンサーも移動する様はスリリングだ。そしてデジタルハードコアなロックテイストの「SHOUT IT」ではエンディングにフロアを使ったパフォーマンスも披露してくれた。「次は最後の曲!」の一声に落胆の「ええーっ!?」と声が上がるなか、「皆さん、自分の顔は見えないでしょうけど、素晴らしい顔してます!もう皆さんがエンタテイナーです」と客席を湧かせる。ラストナンバー「Get Up」はコーラスの《Get Up!》をみんなで練習。「もっと心の底から!」と渾身の声を出し、大きなシングアロングとジャンプで天井を揺らすと、金テープの破片がひらひら舞い落ちる。ショーの大団円を会場全体で盛り上げて、本編が終了した。

 会場からは女性に混じって男性からも大知コールが起こり、ツアーTシャツに着替えた大知とダンサーが再登場。今回のツアーのアンコールでは“本当のアンコール”と題して、この日のメニューからもう1度見たい楽曲を、大知が選んだお客さんの中から3人に、それぞれ1曲ずつ答えてもらった。この日は「I’m On Fire」「Chocolate」「Right Now」。そして、その中から全員の拍手で反応の大きかった「I’m On Fire」がアンコールの1曲に決定。本編以上の自由度で展開したこの曲、何度見ても視覚、聴覚を刺激されるパフォーマンスだ。

 そして「今回のツアーは“三浦大知のエンタテイメントとはなにか?”に向き合ってきましたが、皆さんがいないと作れないんだなってことを感じています。僕はよく”三浦大知の音楽をよろしくお願いします“と言葉を使うんですけど、そこには勝手ですが皆さんも含まれています」とファンを讃え、「こうして最高をまた更新できたっていうことはまだまだ可能性があるということです。これからもよろしくお願いします」と強い意志を言葉にした。

 この日の本当の締めくくりはアルバムのラスト同様、さまざまな意思が収束していく「all converge on “the one”」。淡々と、次第にエモーショナルに歌いあげていく《誠実に生きていたいだけ》という歌詞が心の内側で響いた。

   ホールという特性を活かしきった全20曲。三浦大知のエンタテインメントが更新される理由、それは常に彼の根源にある誠実さによるものなのかもしれない。

【取材・文:石角友香】

tag一覧 ライブ 男性ボーカル 三浦大知

リリース情報

The Entertainer(CD+DVD)

The Entertainer(CD+DVD)

2013年11月20日

avex trax

[CD]
1. Can You See Our Flag Wavin’ In The Sky?
2. I’m On Fire
3. Elevator
4. Spellbound
5. Baby Just Time
6. Chocolate
7. GO FOR IT
8. Gotta Be You
9. Two Hearts
10. Blow You Away!
11. Right Now
12. interlude
13. Listen To My Heartbeat
14. all converge on “the one”

[DVD]
・Two Hearts
・Right Now
・GO FOR IT
・I’m On Fire
・Listen To My Heartbeat
・Can You See Our Flag Wavin’ In The Sky?
[BONUS]
・I’m On Fire -CHOREO VIDEO-
・Right Now -SCENE OF THE PAIR DANCE-

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セットリスト

DAICHI MIURA LIVE TOUR 2014
THE ENTERTAINER
2014.5.23@東京国際フォーラムホールA

  1. Blow You Away!
  2. GO FOR IT
  3. Illusion Show
  4. Who’s The Man
  5. Chocolate
  6. Can You See Our Flag Wavin’ In The Sky?
  7. Gotta Be You
  8. Two Hearts
  9. Baby Just Time
  10. Right Now
  11. I’m On Fire
  12. Listen To My Heartbeat
  13. Anchor
  14. Spellbound
  15. Good Sign
  16. Elevator
  17. SHOUT IT
  18. Get Up
Encore
  1. I’m On Fire
  2. all converge on "the one"

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