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KREVA、ファンと共に作り上げた全国ツアー“K10”最終公演!

KREVA | 2014.07.17

 黒色の幕が左右に分かれて開き、眩しいライトに照らし出されたステージ。スモークが立ち込める中、岡雄三(B)、熊井吾郎(MPC & DJ)、菱山正太(Key)、白根佳尚(Dr)……生演奏とDJスタイルが融合した通称「半生バンド」の姿が浮かび上がり、その真ん中にKREVAが堂々と直立していた。「Let’s go!」、彼の合図でスタートした1曲目は「トランキライザー」。シャープなビート、夢のように心地よいベースラインが鳴り響き、そこにKREVAがラップで熱いエネルギーを注入する。極上のサウンドでみるみる内に満たされた会場内は、早くも興奮した人々の歓声と手拍子で激しく震え始めた。そして、2曲目「挑め」の時点で誰も彼もが完全に汗だく。『KREVA ライブハウスツアー 2014 「K10」』の最終日となる10公演目。エネルギッシュ極まりないオープニングであった。

 「挑め」の演奏の幕切れのタイミングに合わせてかけていたサングラスを素早く外し、不敵な眼差しを観客に送ったKREVA。黄色い歓声が上がった中、彼は呼びかけた。「ここから30メートル離れても15メートル離れても俺はカッコいいから大丈夫。盛り上がってくれるのは嬉しいけど、その調子だと持たないよ。女子も、俺はどこから観てもカッコいいから一回下がってみろよ(笑)。最後までいい感じでやりたいじゃないですか」、観客の体力に配慮した言葉を届けつつも、ウィットに富んだ表現で和ませるMCが実に粋であった。そして、「記念すべきライブの最後ですよ。今日のライブ、今日が“K10”の“K点”。この10年の俺の基準を見せてやるぜ!」と言い、「基準」がスタート。雄々しいイントロが鳴り響き、観客が腕を掲げて身体を揺らす。踊る人々で満杯のフロアへ向けて放たれるラップの切れ味が半端ではなかった。マイクを握り締め、言葉を次々と溢れ返らせるKREVAの姿が、まるで格闘家のように見える。ビートを巧みに乗りこなしながら放つ高速ラップは、命懸けのアクロバット級のスリル。彼がキャリアの中で磨き抜いてきたスキルとセンスをとことん噛み締めた瞬間であった。

 「ストロングスタイル」と「成功」でさらに盛り上げた後、再びインターバル。「暑いね。男増えたなあ~! 脱いでいいですか?」と、着ていたカラフルなモザイク柄のジャケットを脱いだKREVA。そして、次に披露する曲の説明を始めた。「敢えて人間やめてもいいですか? 人間やめて鬼になってもいいですか? ラップの鬼になってもいいですか? ベストアルバム、すごいボリュームじゃないですか? 全部やるのは無理。だったらここはラップの魅力で乗り切れるんじゃないかと。ラップはメロディがないから、ひたすら1つのトラックでいろんなラップを乗せられる。それプラス、それが1つのストーリーになってたら面白いんじゃないですか? 何が言いたいかというと、俺は教えたい。俺がどうこの10年、PROPSを上げてきたかを」という言葉を添えてスタートしたのは「PROPS KREVA Blend Mix」。この曲は彼の言葉通り、10年間の軌跡を高密度で表現していた。「PROPS」を歌いつつ、合間に「THE SHOW」「国民的行事」「I REP」「ひとりじゃないのよ」「Shock」……様々な曲のフレーズを挟みこんで披露した姿は、まさしくラップの鬼。マイクロフォン、ビート、言葉というシンプルな組み合わせによって無限の世界を表現してしまえる「ラップ」の面白さ、奥深さをとことん示したこの曲は、本当にとんでもなかった。あの場にいた全ての人が震えたはずだ。そして、余韻も冷めやらぬ中、再びKREVAのMC。「そんな俺の歩み。1つの歌にしたようなものがある。この曲はみんながいないと成り立たない。俺の10年、こんな感じかな?」と言い、「BESHI」へ。パンチの利いたラップが放たれ、観客の間からは「♪ウォーウォーウォー」という勇ましい歌声が起こる。この10年間で育まれたKREVAと観客の固い絆も感じられる曲となっていた。

 「“怖い……。あの人、さっきからずっとラップしてる”って思ってる人がいるかもしれないけど、そんな人いないから。俺ってめちゃめちゃセンチメンタルなやつなんですけど(笑)。だからセンチメンタルなところも見せてこうかなと。今度は“DJ的な面白さ”をお見せしたい。次の曲のイントロが混じってきて、重なったまま次の曲に“ドン!”とか。あるいは繋がないで“ドン!”。または戻ったり。それを我が半生バンドでやろうかと」と主旨を説明した後、まず披露されたのは「王者の休日」。メロウなサウンドがじっくり展開し、観客は恍惚の表情を浮かべて身体を揺らす。そして、エンディングを迎えるや否や「からの~!」という一言を挟み、「ビコーズ」へ突入。その後、「今夜はブギーバック」へと繋げ、再び「ビコーズ」に戻り、「I WannaKnow You」へ……という目まぐるしい展開を辿り、最終的には「I WannaKnow You」を基調としながら「王者の休日」「ビコーズ」「今夜はブギーバック」の一節が次々現れてエンディングを迎えた。仰天! こんなラップ、聴いたことがない……。先程の「PROPS KREVA Blend Mix」に続き、この日、もう1つ飛び出した超絶パフォーマンス。前代未聞のチャレンジ、一種の実験でありつつ、一級品のエンタテインメントであるところもすごい。こういう試みが頻繁に導入されるのも、KREVAのライブの堪らない魅力だ。

 「俺のライブは曲を連発して届けることが多いけど、今日は1曲ずつ説明してやろうと思います。ベスト盤を出して、たくさん取材を受けました。必ず質問されたのが“10年を振り返ってみて”ということ、あと“ターニングポイントは?”。グループやってたのがソロになったんだから、それが一番のターニングポイントなんだけど(笑)。でも、よく考えるとあの作品がターニングポイントになったのかなと。そこからお届けします。歌詞が自分に歌いかけるような。そういう曲です。歌詞をじっくり聴いて楽しんで。あと、鼻で息をしてリラックスして聴いて欲しい」と言い、ミニアルバム『OASYS』の収録曲「かも」がスタート。“かも”という2文字に含まれる様々な可能性、光と翳を映し出し、KREVAの人生観も浮き彫りにするリリックが胸に沁みる。観客は固唾を呑んで耳を傾けていた。

 「リラックスできた? オアシス感じた? でも、気をつけて。何で俺がオアシスをくれるのか? うまい話には裏があるということ(笑)。ここから“ガッ!”って行きたいわけですよ。でも、分かる。急には無理。起きてすぐに牛タンは無理。どうするか? “俺が上がる”です。そういう曲を2曲やりたいと思います。まずやりたいのは、各地のフェスやイベントで腕組みをしてる人との闘いの10年。その後期に“これがあれば大概勝てた”という曲です。そしてその次はこの10年、世界、日本ででかい出来事があったよね? その時、俺は1回音楽から離れそうになったけど、この曲を作って戻ってこられた。俺が頑張ってる姿をひたすら見せようとして作った曲。この2曲をやれば“ガッ!”って行けると思う。みんなでできるように練習しましょう」。そして、「♪ナーナーナー」という一節を軽く練習してから「Na Na Na」がスタート。観客と歌声を何度も交わし合うにつれて、温かい幸福感の輪が会場全体に広がっていく。続いて披露されたのは「KILA KILA」。神々しいサウンドに包まれながらラップするKREVAの姿が眩しい。「“アー!”でも“オー!”でもいいから」と彼が曲の終盤で呼びかけ、観客の間でますます高まった歓声。圧倒的な一体感が生まれていた。

 「いい感じ。ラストスパートをかけたいと思うんだけど。行けるのは分かってるけど不安もある。だからコール&レスポンスでチェックしてみたいと思います。この中で1stアルバムからチェックしてるって人? 嘘だ(笑)」、先程からバックに流れていたレゲエ調のトラックに合わせて1stアルバム『新人クレバ』のボーナストラック「Baby Dancer」を突然歌い出したKREVA。しかし、観客の歌声は著しく自信なさげで正確さを欠く……抜き打ちテストのようなやり取りで観客をリラックスさせた後、「今回のツアー、“ストレートなライブをしたい”って言ってたけど、結構いろいろやってる。でも、“ストレート”って“ど真ん中”ってことだけじゃないよね。いろんな俺なりのストレートを投げたつもりです。例えばKANさんのライブに行ったら「愛は勝つ」聴きたいじゃん? だから俺はストレートな選曲をしたつもり。季節を先取りした選曲。それでみんなの声を聴かせて欲しいです」と言い、曲中のコール&レスポンスの練習を経て、まず届けられた「OH YEAH」。さらには「イッサイガッサイ」と「Have a nice day!」……とっておきのサマーチューンが一気に3曲披露された。

 「ありがとう! みなさんがみなさんに拍手! いいラストスパートがかかりました。あと数曲。ここからは“もっと行こうぜ!”じゃないようにしたい。いつもと違う感じにしたい。タテに“ガッ!”と上がる感じ」、思い描くライブの流れを手の複雑な動きで表現したKREVA。「みんなと一緒に熱くなれたらいいなと。ここにいるみんなとならできると思う。ラストのブロックの始まりは、キャリアの始まりの曲で始めるのがいいんじゃないかと。この曲はスペシャル過ぎて、意外とライブで歌ってないのかも」。そして披露されたのはソロ第1作、インディーズで限定リリースされた「希望の炎」。オートチューンで彩った歌声が、会場いっぱいに響き渡る。10年の日々を経て、さらに未知の何かを求めて進もうとする意思が伝わってくる曲だった。歌い終えると、深々と一礼。そんな彼に向けて大きな拍手が送られる。続いて「アグレッシ部」。観客の間から湧き起った大合唱がものすごい。そして、本編ラストを飾ったのはメジャー1stシングル「音色」。音楽へのラブソングとも言うべき内容のリリックが、彼の活動の足跡と鮮やかに重なった。

 観客の間から起こった激しい手拍子、「Dr. K!」という声に応えて再び開いた幕。そこには半生バンドのメンバーたち、KREVA、そしてなんと三浦大知も立っていた! スタートしたのはもちろんあの曲「全速力feat.三浦大知」。飛び跳ねながら歌い、ラップする2人の表情が実に活き活きしている。歌声のみならず、ステップを踏みながらステージ上を巡るコンビネーションも抜群。最高のパートナーと共にステージに立つ喜びを露わにしながら、昂ぶった声を何度も上げるKREVAに刺激され、観客も一層熱く踊った。曲を披露した後、握手とハグを固く交わした2人を、興奮した観客の拍手と歓声が包む。そして、「ツアーの初日、札幌、そして今日も来てきれました!」とKREVAが大知を誇らしげに紹介。「3回出させてもらってますけど、毎回みなさんが羨ましくて。ぜひその角度(観客のいるフロア)から観たいです。本編の最高のステージがあって、ここで出てくるのが幸せです」、大知も心底嬉しそう。「大ちゃんは『908 FESTIVAL 2014』の大阪にも出てくれるの。そろそろグループ名考えようか? “鹿と亀”みたいな(笑)」というユニークな提案もKREVAから飛び出し、観客の笑いを誘っていた。

 「このツアー、どこ行っても“最高!”とか“楽しい!”って言ってばかり。周りの人に感謝を伝えられてない。スタッフ、照明さん、PAさん、物販のみんな、レコード会社のチーム、家族、そしてみなさん、ありがとう! みんなの顔を見て、声を聴いてやる気が出ました。すぐにフェスとか908フェスがあるので、力を溜め込んで迎えたいと思います。908フェス、(出演ラインナップを)発表したらチビるんじゃねえぞ(笑)。じゃあ、これが俺からの最後のメッセージ。Let’s go!」。そして届けられた「Revolution」。繰り返される《後はそれをどう楽しめるか》というフレーズが大きな意味を持って迫ってきた。一筋縄ではいかない日々にとことん悩み苦しみつつも、「あとはそれをどう楽しめるか?」という気持ちにいつでも立ち還れたら本当に素晴らしい。KREVAの曲にも様々な作風があるが、人生観や哲学が窺われるものの魅力は実に深い。そういう味わいを、この曲が改めて噛み締めさせてくれた。アンコールのラストにふさわしい選曲だったと思う。「俺はこのツアーを存分に楽しんだぜ! どうもありがとうございました!」という言葉と共に迎えたエンディング。半生バンドのメンバーたちと繋ぎ合った手を掲げ、彼らの名前を改めて紹介。「そして俺がDr. K。KREVAでした!」と言ってステージから去った時、ステージに向ってものすごい音量の拍手と歓声が届けられた。終演後も会場内に暫くの間漂っていた只ならぬ昂揚感……あらゆる観客にとって忘れられないライブになったに違いない。

【取材・文:田中 大】

tag一覧 ライブ 男性ボーカル KREVA

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リリース情報

KX[通常盤]

KX[通常盤]

2014年06月18日

ポニーキャニオン

[CD-1]
1. 全速力 feat.三浦大知
2. トランキライザー
3. BESHI
4. 王者の休日
5. Na Na Na
6. OH YEAH
7. 基準
8. KILA KILA
9. C’mon, Let’s go
10. 挑め
11. かも
12. 瞬間speechless
13. 生まれてきてありがとう feat.さかいゆう
14. I Wanna Know You
15. 成功

[CD-2]
1. ストロングスタイル
2. ビコーズ
3. くればいいのに feat.草野マサムネ from SPITZ
4. アグレッシ部
5. THE SHOW
6. Have a nice day!
7. It’s for you
8. 国民的行事
9. スタート
10. イッサイガッサイ
11. ファンキーグラマラス feat.Mummy-D
12. ひとりじゃないのよ feat.SONOMI
13. 音色
14. 希望の炎
15. Revolution

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セットリスト

KREVAライブハウスツアー2014「K10」
2014.7.9@Zepp Diver City Tokyo

  1. トランキライザー
  2. 挑め
  3. 基準
  4. ストロングスタイル
  5. 成功
  6. PROPS KREVA Blend Mix
  7. BESHI
  8. 王者の休日
  9. ビコーズ~今夜はブギーバック~ビコーズ
  10. I Wanna Know You
  11. かも
  12. Na Na Na
  13. KILA KILA
  14. OH YEAH
  15. イッサイガッサイ
  16. Have a nice day!
  17. 希望の炎
  18. アグレッシ部
  19. 音色
Encore
  1. 全速力 feat.三浦大知
  2. Revolution

お知らせ

■ライブ情報

908 FESTIVAL 2014
2014/08/28(木)大阪フェスティバルホール
2014/09/07(日)日本武道館
2014/09/08(月)日本武道館

※詳細、そのほかのライブ情報はオフィシャルサイトをご覧ください。

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