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スガ シカオ「FUNK FIRE 2014」ノンストップスタイルに磨きがかかったステージ

スガ シカオ | 2014.07.18

 MCがほとんどないにも関わらず、スガ シカオとオーディエンスがたっぷりコミュニケーションを交わしたという印象が強烈に残るライブだった。
 このところ、スガのライブは、曲と曲とを間髪入れずに繋ぐ “ノンストップ”形式で進行される。これは彼の愛する“ファンク・ミュージック”の基本スタイルで、一つのテーマを曲ごとにベクトルを変えながら伝えていくやり方だ。だが、それを実行するには、ケタ外れのスタミナと構成力が必要。スガは一度、メジャーレーベルを離れた後、ライブをメインにした活動に打ち込んだ。先日、メジャー復帰を果たしたが、それまでのライブの積み重ねがスガの“ノンストップ・スタイル”に磨きをかけ、この日を迎えたように思う。だからこのツアー・ファイナルは、インディーズ期間のファイナルでもあり、彼の音楽に賭ける思いが結実した内容になった。

 ステージの背後には“FUNK FIRE”と大書きされたボードが掲げられている。4人のバック・メンバーがステージに出てきただけで、オーディエンスは大騒ぎ。スガは黒いレスポールを抱えて登場し、中央のステップに上がって耳に手を当て、客席に さらなる大騒ぎを要求する。もちろんフロアはそれに応えてヒートアップ。ちょっと重めのファンクナンバー「赤い実」から、ライブはスタートした。
「グダグダしゃべってる時間はないさ。グルーヴの渦に巻き込まれて、最高に幸せな夜にしようぜ!」とスガ。早くも一体となったZepp TOKYOを牽引するようにドラムが鳴り響いて、次の「見る前に跳べ.com」へ。ベースの坂本竜太がコンガを叩いて、セクシーなR&Bのグルーヴに色を添える。バンドの阿吽の呼吸は、さすがにファイナルだ。そして「ストーリー」。ガッチガチのファンク・ビートがたまらない。スガはアコギを弾きながら、ぴょんと中央のステップに飛び乗る。その身軽な仕草が、スガの心の好調さを物語っている。それを感じて、オーディエンスも大合唱になる。歌もいいが、この日のスガはギターも快調で、「Festival」ではカッコいいソロを決めたのだった。

 ここまではファンク一点張りで押し、5曲目の「LIFE」は少し趣きを変えてJ-POP寄りの曲。メロディの良さが際立っていて、止まったミラーボールを効果的に使った照明が、それをさらに増幅する。

「みんなと一緒に最高の夜にするね。ここからは“FUNK FIRE”メドレー。はい、よいこのみなさん、ワシントン・ゴーゴーの説明をしますね。今、流れているゆるーいリズムに乗って、DJのように曲を繋いでいきます。いろんな曲をどんどんパクって、いや、リスペクトして(笑)、みなさん、何曲知ってるかな。全部で35分。譜面の長さは6メートル…全部、頭の中に入ってます。じゃ、ゴーゴーの旅に出かけようぜ!」。10曲ぶっ続けのメドレーが始まった。「サヨナラホームラン」があったかと思うと、アニメ「ウッドペッカー」のテーマソングがはさみ込まれたり。ダンサブルなリズムに乗って、ラブソングもコミカルな皮肉ソングも歌われる。中で光っていたのは「愛について」だった。愛にまつわる様々な真実を、真っ直ぐに描くこの歌が、今のスガにはよく似合っている。
 途中、メンバー紹介も織り込まれる。ベースの坂本をはじめ、ドラムの岸田容男、キーボードの林田“pochi”裕一、ギターの田中義人が、息の合ったバンドぶりを発揮する。ジョーク混じりのスガのトークが、このツアーの成功を物語っていて、楽しくてスピード感あふれるメドレーになった。

「あまい果実」は、先のファンク・メドレーとは対照的に、ハードロック・テイストで演奏される。この振り幅も、今回のツアーの特徴だろう。かつてギタリストにジミ・ヘンドリックスを擁した“アイズレー・ブラザーズ”というバンドがあったが、そのバンドもファンクとハードロックの両方のテイストを持っていた。スガがこのアイズレー・ブラザーズを意識しているかどうかは分からないが、ツアーの果てに行き着いた境地としては、とても興味深かった。

 終盤は渾身の盛り上がり。ついにライブはピークを迎えるのだが、僕がいちばんヤラれたのは、最新シングル「アストライド」だった。
 エネルギッシュなダンスナンバーの直後に放り込まれたこの曲は、本音を吐露するトーキング・ブルース。♪何度だって やり直せばいい♪とは、スガの生き方そのものを歌ったフレーズだが、Zeppに集まったオーディエンスはそんなスガの姿勢に強い共感を持つ人間ばかりだ。だからこそ、ステージとフロアの熱烈な交歓のど真ん中にこの曲が歌われると、凄まじいリアリティが生じる。スガはオーディエンスにとって、ある種のカリスマでありながら、同時に仲間でもある。その関係は、ライブにおいて最強のものだ。カリスマだけでは大きな間違いが起こるし、仲間だけなら何も起こらない。これから何かを起こそうとするスガとファンの関係は、きっとこれから音楽を通じて生命をまっとうするために進化していくことだろう。

 アンコールは、底抜けに明るかった。本編の「はじまりの日」でゲスト参加したRHYMESTERのMummy-Dが、再び登場して「俺たちファンクファイヤー」で大騒ぎ。ダブル・アンコールで、スガはピンクのシャツにピンクのギターで現われて、「これじゃ、ただのおかしい人だね」と自ら苦笑。しかし、コンセプトのしっかりした歌は、スガのメッセージを満員のフロアにきっちりと伝えていた。
 過渡期でありながら、ステージにもフロアにも充分達成感のある、素晴らしいツアー・ファイナルとなった。

【取材・文:平山雄一】
【撮影:古賀恒雄】

tag一覧 ライブ 男性ボーカル スガ シカオ

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アストライド/LIFE

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2014年05月21日

ビクターエンタテインメント

1. アストライド
2. LIFE
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■ライブ情報

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2014/09/13(土)、14(日)、15(月・祝)インテックス大阪5号館
※スガ シカオ出演日は未定です。

※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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