back number、1音1音に想いをのせたツアーファイナル「渋谷ラブストーリー」
back number | 2014.08.08
SEが流れ、開いた幕。清水依与吏(Vo・G)、小島和也(B・Cho)、栗原寿(Dr)、3人のサポートプレイヤーの姿がライトで照らし出され、待ちわびた観客の間から歓声が上がった。バンドが一丸となって放つ躍動感溢れるサウンドが、会場の隅々にまで響き渡っていく。美しいメロディの快感、踊らずにはいられない熱いビートを感じながら観客は手拍子。ステージ上のメンバーたちも、客席の人々も活き活きとした表情を浮かべたオープニングであった。
最初のインターバル。「幸せもんだな、こりゃあ既に。いつもなら“楽しくしようね!”とか言うけど、もう楽しいから言いません(笑)。一生懸命やるので、一生懸命受け取ってもらえると嬉しいです」、満杯の会場内を感慨深げに見渡し、観客に呼びかけた清水。そして、「繋いだ手から」がスタート。クリーントーンのアルペジオに彩られながら甘酸っぱいメロディが広がる。その後、瑞々しいサウンドのナンバーがさらに続いた。曲の演奏が終わる毎に、客席から起こる大きな拍手。各曲を人々が心から噛み締めているのが伝わってきた。
「今日はファイナルだから、いろんなところから来てるの? えっ? 茨城? そんなに遠くじゃないね。一番遠くから来たと思う人?」、清水が問いかけると客席から再び返ってきた「茨城!」という自信満々の声。「アメリカ!」という声が上がると、「えっ! アメリカ!? 俺たち、全米デビューまだじゃん(笑)」と清水も負けずにとぼけたことを言う。そんな温かいコミュニケーションが交わされたMCタイム。そして、「どこに住んでても、みんな同じようなことで泣いたり笑ったりするんだよね。だから自分の歌だと思って楽しんでいってください」という言葉を添えて「わたがし」がスタート。何処かノスタルジーを誘うメロディが、夏祭りを舞台にした淡い恋模様をじっくりと描き上げる。梅雨も明けて、いよいよ夏本番となったこの時期に聴くこの曲は、一際心地よかった。
アップテンポの曲で観客の熱い手拍子を誘った後、再びインターバル。「こんばんは! 初めての東京でのワンマンは、SHIBUYA BOXXでした。今日はNHKホールです。ありがとうございます。この間、友だちと“109って行ったことないよね?”ということになり、行ってみたんですが、まあ場違いだった(笑)。キラキラした服の人ばかり。滞在時間3分でした!」と、渋谷に関するエピソードを語った小島。「このツアー中にメンバー3人が1つずつ年を食って。僕は昨日、29歳になったんですが、母親からメールが来たんです。“人生の1/3が終わりましたね”と……。ウチの母親は僕が87歳で人生が終わるように腹から出したのかと(笑)。でも、母親がいなかったらこのステージには立ててない。だから今度帰ったら一緒に美味しいものを食べようと思います。でも、いつも何か用意してくれてるんです」、栗原は母親との微笑ましいエピソードを紹介した。2人の素朴なキャラクターが際立つMCを経て、ライブはいよいよ後半戦へ。「花束」と「君がドアを閉めた後」によって、爽やかな感動に包まれた客席。続いて、清水がギターをストロークしながら歌い始めた「世田谷ラブストーリー」。やがて他のメンバーたちのパートも合流し、サウンドがドラマチックに高鳴っていく。そして、「fish」も素晴らしかった。切ないメロディが壮大に響き渡り、たくさんの観客の瞳を潤ませていた。楽曲が圧倒的に良いのは勿論だが、情感に満ちた歌声と演奏もback numberのかけがえのない魅力。そういう一面を存分に体感させられたひと時であった。
3階席、2階席、1階席、それぞれのエリアに語りかけ、感謝の気持ちを伝えた清水。「俺たちのこと見つけてくれてありがとね。見つけにくいバンドなのに(笑)。ここに来たことを後悔させないバンドになるので、これからもよろしくね。じゃあ、最後は笑って終わりたいから、元気良くいこうかな」と言い、スタートした「聖者の行進」。腕を掲げながら大合唱する観客の声が力強い。その熱気のまま突入した「青い春」は、人々が激しく手拍子をしながら飛び跳ね、NHKホール全体を揺さぶった。そして、本編を締め括ったのは「スーパースターになったら」。全力投球で歌声を響かせる清水の気迫が半端ではない。観客も汗をかきながら歌い踊る。実に清々しい昂揚感が漂う中、演奏はエンディングへと雪崩れ込んで行った。
アンコールのためにステージに戻ってきたメンバーたち。「頬を濡らす雨のように」を演奏した後、清水がサポートプレイヤーたちを紹介した。小島と栗原も改めて自己紹介。「29歳の初ライブ、今日で良かった!」と、栗原が心底嬉しそうに笑顔を輝かせていたのが印象的であった。「ありがたいことに、今日を含めたツアーの全会場がソールドアウト。本当にありがとうございます。俺らが凄いんじゃない。この繋がりが凄いわけで。見つけるのが大変な俺らをちゃんと見つけてここまで来てくれてありがとうございます」、清水が感謝の気持ちを伝えると、客席から起こった大きな拍手。「追加公演の話をします。9月14日、15日が横浜アリーナ。9月23日が大阪城ホールです。都合が合う人はぜひ。いくら大きなところでやるようになっても、一番大事な部分は多分変わらないから。小さなことを歌うけど、1音1音を大事に作って、またみんなに会いに来るから。これからもよろしく!」、清水が想いを語った後、再び演奏へ。「恋」の穏やかなメロディに耳を傾け、観客は恍惚の表情を浮かべる。そして、ラストを飾ったのは「海岸通り」。「もう1曲付き合ってよ! 踊れるか渋谷? 最後に1つになろう!」と清水が呼びかけてスタートすると、みるみる内に客席全体で湧き起った力強い手拍子とタテノリのダンス。ステージ上のメンバーたちも、激しく身体を揺さぶりながらサウンドを響かせる。イヤモニを外し、喉が張り裂けんばかりの勢いで歌う清水の姿に刺激され、観客もエネルギッシュな歌声をステージへと届ける。アウトロに差しかかるとギターを床に置き、ステージの両サイドに駆け出して行って観客を激しく煽った清水。彼がジャンプをしたのを合図に、演奏は幕切れを迎えた。
ステージの前方に横一列で並んだバンドメンバーたち。清水と小島が掴み合いを始めるふりをして、それを笑顔でなだめる栗原……3人の仲の良さが窺われるやりとりが突然展開し、観客の間から和やかな笑い声が起きる。サポートプレイヤーも含めた6人が繋ぎ合った手を掲げ、響かせた「ありがとう!」という声。清水は全員を代表して「いろいろ締まらないバンドで悪いね(笑)。続きは横浜アリーナで!」と挨拶。そして、観客の心のこもった拍手と歓声を浴びながら彼らは去って行った。
【取材・文:田中 大】
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リリース情報
お知らせ
love stories tour 2014(追加アリーナ公演)
2014/09/14(日)横浜アリーナ
2014/09/15(祝月)横浜アリーナ
2014/09/23(祝火)大阪城ホール
※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。