前へ

次へ

エレカシ、高揚感と緊張感に溢れたツアー初日

エレファントカシマシ | 2014.09.30

 日比谷野外音楽堂での復活ライヴからほぼ1年となった9月12日、2年3ヶ月ぶりの全国ツアー初日をエレファントカシマシは迎えた。もちろん、1月のさいたまでのスーパーアリーナデビュー25周年記念公演や,夏フェスやイベントなどで健在ぶりを示して来たけれど、やはりワンマンでの全国ツアーは格別だ。ライヴに専念する長い旅の幕開けは、旅立ちの高揚感と緊張感溢れるドラマチックなものだった。

 白いシャツ姿の宮本浩次は控えめな照明の中で、高ぶる気持ちを抑えるように歌い始め、その気持ちを開放するように徐々に声を張って行く。生きている事を確かめるようなその歌詞は、ツアーを再開することができた喜びを歌っているようでもあった。宮本にとってメンバー3人とともにステージに立つ事は、何ものにも替え難いものなのは想像に難くない。3人も宮本とこうしてツアーをスタートできて,何よりも嬉しい事に違いない。それは控えめなサポート・ギタリストのヒラマミキオも同様だろう。そんな喜びと緊張を感じさせたオープニング・ナンバーはウォーミング・アップとばかりに、5人は一気に爆発した。

 自らもギターを弾きアグレッシヴに叫ぶ宮本を、4人は凝視しながら演奏を合わせて行く。そんな中を「ギター、俺!」とソロを弾き、他のメンバーを煽っていく宮本は絶好調だ。細かく紹介出来ないが、この日のセットリストは絶妙だった。シングルは3作続けて出ているが、アルバムではないのからか自由な選曲で、代表曲を程よく挟みながら”ここでこんな曲をやってくれるのか!”と思うような流れで惹き付ける。前半はライヴで演奏するのは久々と思われる曲もあり、オーディエンスも演奏に食いつき盛り上がり、ちょっとしたカオスが生まれていた。その空気が更にバンドを熱くしていたのではなかろうか。

 「今日はこんなに来てくれてありがとう。いっぱい曲があるんで、最後まで自由に盛り上がって」と言った後で彼等の転機となった曲を力強く歌ったと思うと、次の曲では歌いながらステージ狭しと動き回る。そしてアコギを抱えて「思い出って何であんなに美しいんだろう」と呟いてバラードを歌い、続いてはドラムの冨永義之が叩くカウベルを「もっと早く!」と煽って勢いのある曲に突入する。ブランコが揺れながら高く上がるように、起伏に富んだ流れで曲が進むほどにステージもフロアも熱を帯びて行く。自分の書いたアグレッシヴな曲を「変な歌。一昨日これ見つけて自分で笑っちゃった」と言った後で、自分を鼓舞するように「やってやるぞ1」と呟き、高緑成治のベースが唸る攻撃的な曲へと突入した。長髪が板について来た石森敏行が、大きく足を開いて腰の入ったソロを弾くと、宮本も負けじと歌い上げ、ギターを合わせて行く。バンドの沸点は何処まで上がるのだろうと思わせるようなジャム・セッションにオーディエンスも巻き込んで、場内の熱気は中盤でピークを迎えた。

 メンバー紹介で一息入れての後半は、演奏の熱に加わり宮本の歌が存在感を増していき、「蔦谷くんやサニー、プロの人が弾いている恐れおおい」と説明した赤いピアノを弾きながら歌ったバラードあたりから、歌が染みる曲が続いた。その中で新鮮な息吹を感じさせたのは、「気に入ってる、丁寧に丁寧に歌った曲。聴いてください」と言って本当に丁寧に歌った「あなたへ」。石森がノイジーなギターを響かせた「ズレてる方がいい」の実りある力強さ、そして最新シングルである「Destiny」と、新曲も惜しまず披露した終盤は、このツアーは25周年を経てなお新たな力を感じさせる、エレファントカシマシの底力を見せる場面だった。最後に宮本が言った。

 「今日はどうもありがとう。あんまり喋ると緊張感が無くなると思って突っ走りました。すごくいいライヴになったと思います」

 黒のシャツに着替えてアンコールに応えた宮本は、初日の興奮を押さえきれなかったのかシャツが破れるほどの熱演を見せた。これはいいツアーになるに違いない。その先には恒例の日比谷野外音楽堂、そして来年の日本武道館2Daysも待っている。

【取材・文:今井智子】

tag一覧 ライブ 男性ボーカル エレファントカシマシ

関連記事

リリース情報

Destiny (初回限定盤) [CD+DVD]

Destiny (初回限定盤) [CD+DVD]

2014年06月11日

ユニバーサル・シグマ

[CD]
1.Destiny
2.明日を行け
3.Destiny (Instrumental)
4.明日を行け (Instrumental)

[DVD]
Destiny Music Video
Destiny Music Video Making
明日を行け レコーディングドキュメント

このアルバムを購入

お知らせ

■ライブ情報

エレファントカシマシCONCERT TOUR 2014
2014/10/04(土) 広島CLUB QUATTRO
2014/10/05(日) 高松オリーブホール
2014/10/12(日) Zepp Namba
2014/10/13(月・祝) Zepp Namba

エレファントカシマシ 日比谷野外大音楽堂 2014
2014/10/19(日)日比谷野外大音楽堂

エレファントカシマシ 新春ライブ 2015
2015/01/03(土) 日本武道館
2015/01/04(日) 日本武道館

※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

トップに戻る